テレビで見た限りでは、ネルトはまだいる様子は無い。
けど、それは"本当"か?
誰もが疑ってるはずだ。
ヤツらの特徴を俺は見てきた。
"頭を食べてその人物へと変貌"する。
"赤いヤツ"はそれだけじゃなく、特殊能力も持っている。
もう誰かが襲われていて、"人間の姿"で紛れているかもしれない。
⋯常に近くにいるかもしれないって事だ
動画で見ただけの人は詳しく知らない分、俺たちは少し対応しやすいだろう。
問題は"どこまでやれるか"ってところだ。
その後、シンヤが起きてきたのは5時間ほど経過後。
準備を済ませ、俺たちは今家を出ようとしている。
時刻はAM10時を回ろうとしていた。
「それじゃ、準備はいいな」
「おう!」
「うん」
タクシーは国会議事堂へと進み始めた。
宮下公園、渋谷ストリーム、スクランブルスクエア、スクランブル交差点、渋谷駅。
そして、あの謎の"赤ビル"。
過ぎ去る光景を見て、一つ気になった。
「人、少ないな」
人が昨日より明らかに減っていた。
いつもの10分の1か?
いや、それよりも少ないか?
原因はもちろんここにいる全員が分かっている。
「危険だから、外に出ない人が多いみたいね」
「まぁそうなっちまうよなぁ。アイツらに"いつどこで遭遇するか"、今じゃ分かんねえんだしよ」
「だけど⋯家も"完全に安全"ってわけじゃないのよね」
「そうなんだよなぁ。今はまだ安全っぽいけど、いつ来るか分かんねぇ。昨日100万貰って、みんな喜んではずなのになぁ」
楽しそうだった。
嬉しそうだった。
⋯昨日までは
「ねぇねぇ」
ユキが俺の手をぽんと叩いてきた。
「総理はなんで"2回"会見したのかな? 2回せずに1回だけして、隠して人間をやればいいのに」
「んー⋯今時そんな事やっても、すぐバレるだろうな。カメラやドローンも多いし、ネットだって早い。それだったら、あえて先に言って"現状の状態"にしようとしたとか」
「⋯つまりは、"あえて多くの人が家から出ないようにした"ってこと?」
「のはず、総理はこうなる事を予測してたはずだ」
家に固めておく方が都合がいい。
まさにAIが考えそうな効率的なやり方。
そうこうしているうちに、タクシーは国会議事堂近辺へと来ていた。
ここで予想と"一つ違っている部分"があった。
もっと"車とか人とか多いもの"だと思った。
リーク情報は広まってるし、総理に訴えかけたり何かしらしようとする人で溢れると予想していた。
が⋯なんだこれ?
全くと言っていいほどいない。
明らかに不自然だった。
「意外とガラガラね」
「どうするよ、ルイ? このまま一気に前まで行っちまうか?」
「いや、ここで止まろう」
嫌な予感がした俺は、一旦タクシーを止めて外に出た。
そして、国会議事堂が見える場所まで歩く。
すると、
「どうしたの?」
「なんかあったか!?」
― 目の前に見えるモノ
「⋯あれ⋯」
知っている"それ"では無かった。
真紅に染まった国会議事堂。
それだけじゃない。
"もっとヤバいの"が国会議事堂前にいる。
その"ヤバいの"はこっちに気付き、"背中に付いている2つの大砲?"から謎の巨大物体を発射した。
それは大きな放物線を描きながら、ゆっくりとこっち目掛けて飛んできているように見える。
いや、飛んできてる⋯!!
「⋯おいッ!! 全員早くタクシーに乗れッ!!!」
緊急モードへと切り替えると、途端にタクシーは激しい速度でバックした。
その瞬間、手前で落下する巨大物体2つ。
それらはまるで液体のように、溶けるようにして消えていった。
「んだよありゃぁ!?」
「ドラゴン⋯だったよね!? なんであんなのがいるの!? ってか今のなに!?」
「⋯俺が知りてぇって」
当たっていたらどうなったんだろうか?
死んでいた?
⋯だとしたらこれで分かった事がある
誰もいなかった原因。
⋯アイツのせいだ
近付こうとすると、アイツが邪魔してくる。
なんであんなのがこの世界にいるのか。
どうして総理の味方をしているのか。
この時俺には、"UnRuleと関係がある?"というくらいにしか分からなかった。
「あんなのいたら行けねえぞ!! どうすんだぁ!?」
「ここまで来たのに⋯」
「⋯」
⋯今更帰るわけにもいかない
ここで何か掴まないと、変わらず苦しいだけだ。
どうする。
もう一回行くのか?
⋯いや今見ただろ
あれから逃げれる保証が無い。
俺とシンヤの銃で、勝てる比じゃない。
上手くすり抜けて国会議事堂に入る方法⋯
考えていると、タクシーの窓をコンコンと叩く音がした。
「君たち! もう"あの場所"に行くのはやめなさい!」