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第12話 停電

「んで、なんでお前大学にいたんだよ?」

「あぁ、これ見ろよ」


 ソファでくつろぎながら、シンヤはSNSの画面を俺のL.S.へと共有した。

 そこには、赤く光ってる建物内で"あの謎の機械に襲われた"という内容が幾つも表示されていた。

 見る限り、赤いところに"赤いヤツは1体以上いる"らしい。


「これ見てお前らのいる場所見たらよぉ、イヤな予感がするだろ?」

「⋯だな」

「わざわざ来て窓割ってくれたのね、危ないのに」

「まぁな。大事な親友のためなら何とやらってヤツだ、なぁルイ?」

「いや俺に振るなよ⋯あ、もう一つ聞きたい事がある。お前どうして"UnRuleを起動すればいい"って知ってたんだ?」

「それはな。まぁ、今やどこにでも情報が出てるたぁ思うが、俺の知り合いがよぉ、始めてみたら何か急に"剣"が出てな? それが"本物みたい"で、それでピンときたってわけだ。俺も始めたらこんなのが出てきたぜ」


 シンヤは格好つけるようにして、"赤色の細長い銃"を出現させた。


「お前のはこんなのが出てきたのか」

「へぇ~、みんな違うのね」


 ちなみにシンヤのL.S.を見ると、周りが付けているL.S.と変わらず、それは"事前予約当選者じゃない"事を表していた。


「二人のも見せてくれよ!」


 俺とユキも武器を出す。


「おい、これ!?」

「なんだ」

「ここ見てみろよ!」


 これらはどうやら普通の武器では無いらしい。

 端の方に"ELのマーク"が付いていると違うという。


 まだ詳しくは分からないらしいが、"威力が違ったり、特別な能力が付いていたりするんじゃないか?"という推測がされているそうだ。


 俺の銃は他と何が違うんだろう。

 威力がヤバい、とかそんくらいに見えるが。


 だけどコイツじゃ、唯一あの"赤いヤツ"は倒せなかった。

 まだアイツは大学内をうろうろしているんだろうか?


 銃からは"0"が浮き出ており、もうこれ以上何もできなさそうに見える。

 それと同時に、"さっきの出来事が本当だった"のを突き付けてくる。


「お前らL.S.の色も違うし、そうかとは思ったけどやっぱりだったかぁ~」


 シンヤは諦めるように上を向く。


「一緒に予約したのによぉ~、なんで俺だけ当たらねえんだぁ!?」

「別に、大きな違いなんてねぇだろ」

「いいや俺はあると思うね。"ELマークの武器"は絶対チートの強さだ」

「話してるところ悪いんだけど、ルイに一つ聞いていい?」

「ん?」

「あの4階での"隠しエレベーター"なんだけど⋯」

「あぁあれな。あれはL.S.から"原田先生の顔をホログラム表示"して認証させたんだよ」

「へぇ~、それでいけるんだ」

「あの場所だけカメラの性能がちょっと古いみたいで、あれでもいけるらしい」

「そうそう、俺とルイだけ研究室の人に特別に教えてもらったんだぜ? いいだろ?」

「ん~⋯いいかどうかは置いてといて、それで助かったってわけね」


 あれこれしていると、時刻はPM9:52。

 また武器の交換をしてみたりしたが、やっぱりダメだった。


 この質感や重量は何回触っても本物。

 これが未だに理解できない。


 どういう仕組みなんだ?

 考えながら、俺は"ある事"を思い出した。


「なぁ、そういや総理って"夜も会見する"って言ってたよな?」

「⋯もしかしてそろそろ始まる?」

「時間は特に言ってなかったしなぁ、"会える人は会いましょう"とか訳わかんねぇ事言ってたけどよぉ、つまりはあれか? "あの人型のアンドロイドに殺されなかったヤツは見れますよ"、的なヤツかぁ?」

「⋯今回の事からして、その可能性が高いだろうな」

「なんでこんなこと⋯」

「"国の借金が返せる可能性がある"だの何だの、意味不明な事言ったかと思えばよぉ、急に100万配り出してよぉ。国民を喜ばせるだけ喜ばせといて、その隙に一気に落とす寸法ってか? 犯罪国家日本だな、マジで」

「政府はこんな事して何の得があるの? 国会議員は誰も反対してないの?」


 シンヤとユキが感情を露にする。

 俺だってもっと言いたい、意味が分からないって。


 100万で一旦喜ばせといて、その間に殺して金を奪う⋯

 今日の昼前に見たSNSの情報が頭を過った。


 "人間を殺してその分を取り上げるんじゃないか?"


 やっぱりあの時の違和感は⋯

 次の瞬間、部屋の電気が突然消えた。


「ん!? なんだぁ!?」

「ルイ、電気切って無いよね?」

「俺じゃない」

「⋯停電ってこと⋯?」


 急な暗い静寂。

 立ち上がろうとすると、近くで小さい電子音がした。

 それは俺の部屋の自動ドアの前で止まった。


 停電のため、自動ドアは普通のドアに切り替えられている。

 "電子音が鳴るモノ"は、そのドアを開け、躊躇なく入って来た。


「うぉ!?」

「なに!?」


『ルイ様。ブレーカーが落ちていないにも関わらず、"どの場所も"電気が付きません。緊急事態のため、電力会社へご報告をしておきました』


「ありがとう。この辺りを照らしてくれ」


『分かりました』


「Piitaかよ、ビックリさせんなよなぁ~」

「ほんとよ⋯」


『ビックリさせてしまい、申し訳ありません』


 Piitaは"家庭用AIロボット"だ。

 これは2か月前くらいから販売開始され、今では小売価格に抑えられてとんでもなく人気がある。


 出た当初に買っちまった俺はめっちゃ損したわけだが、そう思わせないくらい多機能を有している。


 料理や洗濯等も出来るが、料理はたまに自分でするようにしている。

 特にユキといる時は、どっちがAIより美味いもの作れるかで競っていたりもする。


「おい⋯これ見てみろよ!! ここだけじゃねえ!! 東京全部が停電らしいぞ!?」

「は!? 東京だけ!?」


 即座にSNS等を見ると、


「ブレーカー付いてて電気付かない」「電力会社連絡しても繋がらない」「AI総理は経済政策よりこれを先に何とかしろ」とか色々書かれている。


 情報が散乱してはいるが、特に画像や動画を見る限りは、東京だけが停電のように見える。

 これ以上は今は分かりそうにない。

 何が起こってんだよここで⋯


 わずかな明かりを頼りに、窓から外を見てみると、どこも同様に暗闇だった。

 ただ例外なのが、"赤い発令の場所だけ"は赤く光り続けていた。


「あそこだけは、"例外"ってかぁ?」

「⋯光り続けてるわね」


 隣のユキが、急に俺の腕を引き寄せた。

 また少しの震えているようだった。


 ⋯ユキだけでも、もう怖い思いをさせないようにしないと

 さっき無理をさせたんだ、今はゆっくりさせてあげたい。

 それなのに、なんなんだよこれ⋯


 不気味な"赤いスカイツリー"を見続けていると、L.S.のホログラムがか突如勝手に展開された。


『皆様、こんばんは』

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