第四部☆異なる時空で 第一章☆ボードゲーム
ミリーは「早く次の一手を」と言われて我に返った。
ミリーの他に好戦的な男の子と、か弱い男の子がいて、その三人で赤・青・緑の駒を動かして対戦するボードゲームの真っ最中だった。
「ああ、これならすぐできる」
ほんの数手で他の二人に勝った。
好戦的な男の子はか弱い男の子には勝ったものの、ミリーに負けたのが悔しくて何度もゲームを挑んできた。
「三人じゃなくて、二人対戦のゲームにしましょう」
ミリーの提案に二人の男の子は同意した。
まず男の子同志で戦うと、好戦的な少年の方がか弱い男の子をこれでもかとばかりに叩きのめした。
ミリーは好戦的な男の子と戦って、決して勝ちを譲らなかった。
ミリーとか弱い男の子の対戦の番になった。ミリーはわざと有利な順番の時に駒を動かさず、結果、か弱い男の子が初の勝利を納めた。
「ぼく、勝った!」
か弱い男の子の笑顔に、ミリーは満足だった。
「わざと負けたね?」
「ええ」
「戦況を我が手中に収めて、そこで余裕が生まれる。そしてゲームを自分の意志で調整する。・・・それが我々の基本的なスタンス」
「つまり、私たちより一段上で物事を見てるのね?」
「しかしどうしても、情が言うことをきかない」
「強い生命に対して厳しくなり、か弱い生命に対してやさしくしてしまう」
地球派生型の人類は強さと弱さを併せ持つ。では、どう扱うのが良いのだろう?
「普通に接したら?」
「普通に?」
ミリーの言葉に、「彼」は考えあぐねている。
「ゲームは必ずしも勝たなければならないとは限らない」
「良い言葉だね」
二人はクスクス笑った。