第三部☆メッシーナ渓谷での死闘 第五章☆一人旅団
崖下に身を隠したロカワ氏は、お抱えの科学者と連絡をとった。
「武器の技術が漏れることは、絶対にあり得ません!」
科学者は頑として認めなかった。もし本当に技術が漏れたのであれば、この科学者のロカワ氏に対する忠誠心が無くなったということかもしれないが、絶対に、絶対にそれだけはあり得ないと彼は誓った。
「ならば、どういう状況が考えられる?」
「マジックです」
「マジック?」
「なんらかの種や仕掛けがあるはずです。一定時間集団で幻視をみたり、体験したりといったものでしょう」
その言葉に半信半疑ながら、ロカワ氏は壊れたはずの乗ってきたバギーの地点まで崖をはい上った。
「ロカノンさん!無事だったんですね!」
「平和の使者」の二人が彼を出迎えた。
操縦席ごと姿を消していたはずの男がちゃんと存在していた‼
「サーファイヤーたちを追ってくれ」
「サーファイヤー?誰ですか?」
「おい、何を言ってる?」
男たちの記憶に齟齬が生じていた。
「こいつは・・・」
ロカワ氏はラルフ船長に連絡をとった。
「サーファイヤーがさらわれたんだ。協力してくれ」
「なんですって!わかりました。小型宇宙艇であなたを拾ってからサーファイヤーのあとを追いましょう」
「助かる」
しかし・・・とロカワ氏は危惧した。もしまた、そのマジックとやらにはめられたらどうすればいい?俺は精鋭した武器を取り揃えて持っているが、正常な判断力が奪われたらこの一人旅団の戦力さえ無駄になってしまう。
心に隙を作らないことだな・・・とロカワ氏は気を引き締めた。
ラルフ船長はサーファイヤーが心配らしく、文字どおりすっ飛んできた。
ロカワ氏から話を詳しく聞くと、サーファイヤーたちの乗ったバギーのわだちのあとをトレースして、追跡を開始した。
「エメラルドの谷だ」
「そんなもん、本当にあったのか?」
ロカワ氏はスクリーンに映る谷の様子を見て絶句した。
エメラルドだけでできている谷があった。それは壮観で、サーファイヤーがいたらどんな反応をしただろうとロカワ氏は思った。
「サーファイヤーたちの乗ったバギーはここの奥まで走っています」
「降りられるか?」
「あまり接近できません。非常用の装置がありますが、行きますか?」
「わかった。俺は行く」
ロカワ氏は小型宇宙艇から谷へ降りた。
「くそジャグラーめ。目にもの見せてやる」
防御と攻撃の用意をして、いつでも闘える状態になったロカワ氏は、エメラルドの谷の奥深くわけいって行った。