第三部☆メッシーナ渓谷での死闘 第三章☆襲撃
バギーが止まった。
「えっ?」
サーファイヤーがはっとして顔を上げると、バギーを操縦していた「平和の使者」の一員がさっきまでいた場所ごとすっぽり影も形も無くなっていた。
「サーファイヤー、頭を低くしてろ」
ロカノンがそう言って、持ってきたアタッシュケースみたいなカバンを開くと、中にずらりと並べた武器の類いから小型の銃を取り出した。
「ロカワ!いるんだろう?」
聞き覚えのある声が通信装置から聞こえてきた。
「シタニ」
チッとロカノンは舌打ちをした。
「待って!ロカワはここにはいないわ!」
サーファイヤーはそう言ってシタニの気を引こうとした。
「いいや、そいつがロカワ氏だ!土星の武器を持ってる」
「土星の別の衛星から来た人よ!ロカノンっていうのよ!」
サーファイヤーたちの乗ったバギーにもう一台のバギーが近づき、向こうには三人の男たちが乗っていた。シタニ以外の男たちは初めて見る顔ぶれだった。
「撃つなよ!人死にを出すな!」
シタニがロカノンに言った。
「もう遅い!お前たちが一人殺した」
「俺たちはロカワ氏とサーファイヤーを捜してる。ロカワ氏がいないのなら、サーファイヤーだけでも連れて行く。邪魔するな」
「うるさい!」
ロカノンは銃を撃った。
原子分解銃はバギーごとシタニたちを粉砕するはずだった。
しかし、銃から出た威力はバギーの周囲にかけられたバリアで逸らされてしまった。
「あいつら、俺の持ってる秘密の武器をいつのまにか複製してやがる」
ロカノンは苦虫を噛み潰したような表情で言った。
「ロカノン!こっちもバリア張れないの?」
「バリアは張ってあったんだ!それの解除方法を向こうが知ってたんだ」
「何てこと!」
サーファイヤーは息をのんだ。
「サーファイヤー。天王星のジャグラーがお前に用があるそうだ。大人しく投降しろ」
「わかったわ!でも、他の人に手を出さないで!」
「おい!サーファイヤー!」
ロカノンがあわてて止めようとした。しかしサーファイヤーはしっかりとした足どりでバギーから降りると、向こうへ歩き出した。
「後で必ず助けに行く」
そう言って、ロカノンはアタッシュケースを抱えて谷の傾斜から下へ飛び込んだ。サーファイヤーはびくりとしてそれを見た。
「何て無茶なことするの・・・」
泣きそうになった彼女をシタニたちが捕まえて、バギーを走らせた。行き先はサーファイヤーのまだ知らない場所だった。