第三部☆メッシーナ渓谷での死闘 第一章☆エメラルドの谷
天王星の衛星タイタニアに到着すると、「平和の使者」のメンバーが、サーファイヤーに「是非メッシーナ渓谷へお行きなさい」と声をかけた。
ロカワ氏は姿を見せなかったが、サーファイヤーのそばにずっと一緒にいるのだろう。たまにサーファイヤーにロカワ氏の声が聞こえて、いろいろ入れ知恵をされていた。
「メッシーナ渓谷って?」
「タイタニアの赤道付近にある巨大な谷だ」
「危なくないかしら?」
「危ないに決まってるだろ」
サーファイヤーは「平和の使者」のメンバーに、何故そこへ行くように勧めるのか尋ねてみた。
「様々な鉱物があるんですが、特にエメラルドの鉱脈が見ものなんですよ!一見の価値があります」
「他にも、渓谷が出来た時に圧力がかかって出来た金の鉱脈も有名です」
「そんなの初耳だぞ」
ロカワ氏の声に、サーファイヤーはクスッと笑った。
「サーファイヤー様の瞳のように美しいエメラルドを見たくありませんか?」
「そうね・・・」
そんなにすごい名勝があるとは知らなかった。「平和の使者」のメンバーが、安全なルートを案内すると申し出た。
居住区には生存可能な空気や水があったが、メッシーナ渓谷に行くにはバギーに乗って、宇宙服を着用していかなければならない。
「別名、死の谷、だな」
ロカワ氏は気が進まなそうだった。
「でも、お前が行きたいと思うなら止めないぞ」
「そうね・・・。せっかくこんなところまで来たんですもの、行ってみたいわ」
「恐いもの知らずだな」
「そうよ。知らなかった?」
ラルフ船長は薦めもしなかったが止めもしなかった。
「どうか無事に戻ってきてください」
ラルフはサーファイヤーが行きたいと思うところへどこへでも連れていってあげたいと言っていた。
「もし何かあったらすぐに宇宙船で駆けつけます」
「ありがとう」
サーファイヤーは素直に礼を言った。
「モテモテだな?」
「何が?」
「お前がだよ!」
「なんのことやら」
ロカワ氏は軽くヤキモチを焼いた。サーファイヤーはクスクス笑った。
「とにかく、気を許すなよ。『平和の使者』の連中は天王星のジャグラーの手先だからな」
「その手先は何故私をメッシーナ渓谷へ連れて行きたがるのかしら?」
「一悶着あるかもな」
サーファイヤーは肩をすくめて見せた。
ロカワ氏は光の加減で顔の輪郭を誤魔化す装置を使って別人に成り済ました。
サーファイヤーは「平和の使者」たちにロカワ氏の同行を頼み、一行はメッシーナ渓谷を目指した。