第二部☆天王星のジャグラー 第一章☆足止め
「困ったことになりました」
リラシナが沈痛な面持ちでサーファイヤーに言った。
「どうしたの?」
「宙港に停舶している宇宙船の移動が差し止められて、僕の船も動かせません」
サーファイヤーは両手を頬にあてて少ししかめると、息をふうっとはいた。
「街で起きている騒ぎもおさまるどころかますますひどくなっています。今、ここを動くよりじっとしているしかないように思います」
「わかったわ」
サーファイヤーはそう答えて、右手の親指の爪を噛んでじれったい気分だった。
情報収集してきたリラシナは、土星の政府がデモを鎮圧するまで、この衛星の外からも中からも出入り出来ないように管制をしいたと言った。
本当にそれだけのことなの?とサーファイヤーは疑問に思った。もっと裏に大きな力が働いているような気がして仕方がなかった。
「ロカワはきっと動くわね。あの人はただの男じゃなさそうだから」
そのただの男じゃなさそうなロカワ氏を相手にして立ちはだかったのは、一体誰なんだろう?とても狡猾な勢力でドンと一気に襲ってきた。
サーファイヤーはその人物を思って身震いした。
ロカワ氏は、拠点の一つにいた。
チェスに酷似した盤の上で駒を動かして勢力の指示を出していたが、相手がうわてらしく、ことごとく後手に回ってしまう。
土星の他の衛星からの援護を呼ぼうとしたら、宙港が閉鎖される。今手持ちの駒だけで戦わなければならない。
「なめてかかると痛い目に合いそうだな」
したなめずりして、状況をかえって楽しんでいる自分に気づいているのか、他の者が近寄りがたい雰囲気を漂わせていた。
天王星から『平和の使者』と呼ばれる団体が土星の衛星に渡って来たのは、わずか10時間前だった。それが、状況を激変させた。中心人物は素性を誰にも知られずに巧みに人々を操った。彼は自称『天王星のジャグラー』といった。