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第六章☆デモと扇動

第一部☆土星の武器商人 第六章☆デモと扇動

「ロカワ様!市街地にデモ隊が現れました!」

またか・・・とロカワ氏は思った。

混乱の元が他所の遠く離れた場所で起こるのなら、余裕で武器を売り付けに出かけるところだが、足下で起こる騒ぎはちょっと厄介だ、と彼は舌打ちした。

「今度は何が原因なんだ?」

「天王星から『平和の使者』と呼ばれる団体が押し寄せて、デモを起こすように土星の市民に働きかけています」

「扇動しているのはその団体の中心人物か?」

「はい。どうもその・・・この前から不穏な動きがありましたが、今回は本格的で、鎮圧に手間取りそうです」

「俺を土星の武器商人ロカワ氏と知っての挑発なんだな?・・・面白い」

くっくっく・・・とロカワ氏は笑った。目に暗い炎がともった。

「ロカワ様、サーファイヤー様はいかがいたしましょうか?」

「護衛にいろいろ付けてある」

人的にも機械的にも何重にも手は打ってあった。強いて言えば、人格交換器を使う際に必要な科学者の到着を待って、すぐにでもサーファイヤーとミリーを確保する段取りがデモのせいでちょっと遅れるだけのことだった。

そう。今はデモの方が優先事項になっただけだ。

ロカワ氏は上衣に仕込んだ新しい武器の威力を試そうと考えて、自分のいくつかある秘密の拠点で戦略を練ることにした。



サーファイヤーはキオとマリラの一人息子のリラシナと再会した。

「仕事の依頼よ。私を天王星の第三衛星タイタニアまで運んでください」

「まさかこんな巡り合わせになるとは思ってもみませんでした。両親は今、離婚協議中で火星にいて、たまたま僕があなたの近くにいましたが、頼むのは本当に僕で良いですか?」

「・・・」

サーファイヤーは目をつむって深呼吸した。何か未来で起こる出来事のイメージが去来して、サーファイヤーの心を決めた。

「よろしく。お父様と同じ名前の人」

「・・・わかりました。全力を尽くして送ります」

「とりあえず、目下の課題は、デモの起きている騒ぎの中をあなたの宇宙船までどうやってたどり着くか、よね?」

「遠隔操作で操縦できる貨物輸送船ですから、タイミングを待ちましょう」

「わかった」

遠くで地響きがしていた。唸り声が轟いた。

考えているより厄介な事態が起こる予兆だった。


第一部☆完

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