第一部☆土星の武器商人 第五章☆どこへ?
サーファイヤーが雑踏を歩いていると黒ずくめの男が一人前に立ちふさがった。
「あなた誰?」
「シタニといいます。ロカワ様からあなたをお守りしてご両親の元へ送り届けよとのご命令です」
「そんなのいらないわ。一人で帰れる」
「お待ちください。あなたの安全を第一にとのことです。それこそ傷一つつけないように、とのご命令です」
サーファイヤーは嫌な胸騒ぎがした。
「喉が乾いたわ」
「販売機を呼びましょうか?」
「いいえ。喫茶店に入りたい。本当はトイレが借りたいのよ」
二人は喫茶店に入った。
「ここで待ってて」
そう言い残して、サーファイヤーはトイレに行った。
シタニはしばらく所在無げに待っていたが、はっとなった。
「サーファイヤー様?」
声をかけても返事がない。女性のトイレにずかずかと入り込み、サーファイヤーが逃げたことを確認した。シタニはロカワ氏に連絡した。
「まあいい。しばらく自由にさせておく。いずれ私の思惑が叶う時は来る」
ロカワ氏はそう言った。
喫茶店の裏口から外へ出たサーファイヤーはとにかく無我夢中で走ったが、ロカワ氏の関係者がどこにでもいるようで心臓がばくばくいった。
カプセル状の個室になっている通信装置のボックスに飛び込むと、中からロックした。
通信装置に自分の身分証明をかざせばどこへでも繋げるはずだが、それはしないで、耳からイヤリングをはずして作動させた。
「サーファイヤー」
「お母様?今、ロカワ氏から逃げてきたのだけれど、そちらへ私が帰るのはとても危険な気がするの」
「なぜ?」
「ロカワ氏は人格交換器を持っていたわ。なにか嫌な予感がするの」
「そう。あなたの勘はよく当たるから念のため行き先を変えましょう」
「はい」
「一人で大丈夫?」
「・・・やってみます」
そう言ってみたものの、サーファイヤーは自信がなかった。
「そうね・・・昔のつてをたどりましょうか?星間貨物輸送船の船長でキオという人を捜してみて」
「キオ?」
サーファイヤーは今度は通信装置を使って検索して、呼び出しさせた。
「はい。・・・あっ」
「あなたがキオ?」
サーファイヤーは相手の映像を見て怪訝な顔をした。
「いいえ。キオは親父です。僕はリラシナ」
「「えっ?」」
イヤリングの映像のミリーとサーファイヤーの声がハモった。