第一部☆土星の武器商人 第四章☆ロカワ氏の心変わり
「これがお母様の肖像画?」
「ああそうだ」
サーファイヤーとロカワ氏は並んでミリー・グリーンの若い頃の肖像画を鑑賞した。
確かに、今のサーファイヤーの姿と瓜二つの絵だった。
「似てるけど、同じじゃないわ」
「・・・!」
ロカワ氏は何かに気づいてはっとなった。
「でも、どうして、今のお母様の姿は全く違うの?」
「・・・違うのは外見だけだ。正真正銘中身は彼女本人だ」
ロカワ氏はサーファイヤーに奇妙な機械を見せた。
「これは、人格交換器だ」
「!何でそんなものがあるの」
「昔、メイという金星人の女がいて、お前の母親と中身だけ入れ替わったんだ」
「じゃあ、今のお母様の黒髪と黒い瞳はそのメイという人の姿なの?」
「そうだ」
サーファイヤーは自宅に保管されている文書にミリー・グリーン逝去の記事があったのを思い出していた。
「私のお母様の身代わりに亡くなったのね・・・」
すると、ロカワ氏は目をギラギラさせてサーファイヤーを自分の方に向かせた。
「そんな簡単なことじゃない!確かに、あれは仕方がないことだったかもしれない。でも、外側の容れ物だけでも助けられたら話は違ったんだ!」
この時。
ロカワ氏の頭の中で様々な考えが凄まじい速さで巡った。
ロカワ氏が愛したのはミリー・グリーンの外見だけではなかったのだ。中身の生命力に満ち溢れた女性!唯一無二の存在!
そうだ!この手の中にまだ人格交換器があるじゃないか?
ミリーの心を、サーファイヤーの身体に宿すならどうだ⁉
ミリーはリラシナを愛しているが、リラシナさえ亡きものにできるなら、今度こそ本物を我が手にできるかもしれない‼
サーファイヤーの前で見せていた純朴な面は影を潜めた。
ロカワ氏の変貌ぶりに、サーファイヤーは逃げ出したかった。
「ロカワ。私は家へ帰りたい」
「良いだろう。私にはやることができた。送って行けないが、後からまた会いに行く」
やっとロカワ氏はサーファイヤーを掴んでいた手を離した。
サーファイヤーは一刻も早くここから出ていこうと駆け出した。