「おかえり」
桃瀬さんがお手洗いに行っている間に、端末を使用して今の所持チップ枚数の順位を確認した。
俺達は三千人中五十二位に下がっていて、今の一位の所持チップは5800枚。
まだまだ一位との差はそこまでない。
この入学試験に合格するには、最終所持チップの枚数が20万枚。そして上位70%に入っていること。
でも、せっかくランキングが表示されているんだ。どうせなら一位を狙っても良いかな。
「紅羽さん! 私これ食べてみたいです!」
そう言って桃瀬さんはメニュー表を指さした。
「パンケーキ? 無料なんだし食べたい物食べたらいいんじゃないですか?」
それに、さっきの遊戯で勝利した自分へのご褒美にもなるしな。
「はい!」
桃瀬さんが注文したのは二段重ねのふわふわのパンケーキ。
パンケーキの横には生クリームが添えられている。
周りを見渡してみると、結構桃瀬さんと同じ物を注文している人が居る。
「あの、写真撮っても良いですか?」
「良いんじゃないかな? そこの人も撮ってるし」
そう言うと、桃瀬さんは早速色々な角度から何枚も写真を撮り始めた。
取る前にどう撮れるか見えるんだからそんなに撮らなくても良いのにと思ってしまう。
「いただきます」
そう言って桃瀬さんはゆっくりとパンケーキにナイフを入れ、口に運んだ。
すんなりと入っていくのを見ると、どれだけふわふわしているのか分かる。
「紅羽さんも食べますか?」
「いや、いいよ」
フォークを俺に向けて、桃瀬さんは首を傾げた。
「あまりお腹空いてないからな」
「そうですか」
俺は美味しそうにパンケーキを食べる桃瀬さんを見ながら、コーヒーを啜った。
☆
「紅羽さん! あの遊戯とかどうですか?」
カフェを出ると、桃瀬さんは直ぐ近くにある遊戯を指さした。
桃瀬さんの指さした場所に行くと正方形のテーブルが設置されていた。
テーブルの中央には小さな正方形が浅くくり抜かれている。
「遊戯の参加希望でしょうか?」
テーブルの前に立っていると、ディーラーがそう声をかけてきた。
「はい」
そうふたつ返事をすると。ディーラーは「それではルールについて説明させていただきます」と言って端末にルールの詳細を送り、読み上げた。
〇遊戯名『ダイスカードフィフティ―』
・二人組のペアで行い。参加人数の上限及び最低人数は四人。賭けチップ枚数は一人1000チップ。
・勝利ペアには賭けたチップの枚数の五倍のチップ、そしてスキルを一つを得る。ただし、負けたペアは賭けたチップを失う。
・遊戯の勝利条件は、相手プレイヤーよりも早く自身の持ち点を50以上にすること。さらに、自身のペア相手を除く二位のプレイヤーとの持ち点との差が10点以上ある状態で勝利した場合、勝利報酬の倍率が【点数の差-10点+五倍】になる。点数の差が15点なら倍率は10倍となり、勝利報酬は1万チップとなる。
〇遊戯ルール
・六面ダイスをテーブルの中央に二つ同時に振り、目がゾロ目なら点数を得ることができる。得点配分は以下の通りとする。
・1-1。2-2……5点。3-3。4-4……10点。5-5……15点。6-6……20点。
・ダイスの出目が1-2、2-3、3-4、5-6、6-1等の数列だった場合、特殊カードをランダムで得ることができる。特殊カードは、相手プレイヤー、又は相手ペアを妨害したりすることができる。特殊カードの効果は以下の通りとする。
・《スペード》自身のダイスの出目どちらかをプラスマイナス1まで変更することができる。
・《ハート》自分以外のダイスの出目が4以下のゾロ目だった場合、自身の得点にすることができる。
・《ダイヤ》自分以外のダイスの出目が5以上のゾロ目だった場合、自身の得点にすることができる。
・《クラブ》次の自身のターンで振れるダイスを一つ増やすことができる。但し、三つ同じ数字が出たとしても得られる点数は変わらない。
・《エース》相手の特殊カードの効果を無効化する事ができる。
・《ジョーカー》一回振って出た得点を二倍にすることができる。
・特殊カードは四十四枚まで用意されており、《スペード》《ハート》《ダイヤ》《クラブ》は四十四枚中、四十枚。《エース》は三枚。《ジョーカー》は一枚。
・スキルの使用上限は一人につき三つまで、一ターンに使えるスキルは一人二つまでとする。
・6-6の出目で持ち点が50以上に達した場合のみ、マイナス20点とする。
「以上でルールの説明を終了させていただきます。何か質問はございますか?」
「いえ、特にはないです」
ペアで行う遊戯か……。
「それでは相手ペアは既に待機されておりますので、正対してお座りください」
案内されたテーブルに、俺と桃瀬さんは座った。
「あ、初めまして。私桃瀬って言います」
既に座って待っていた二人の男子生徒に、桃瀬さんは自己紹介を始めた。
二人の男子生徒は桃瀬さんに一瞬見惚れたみたいだが、直ぐに表情を変えて話し始めた。
「俺は
「俺は紅羽だ、よろしくな」
自身の名前を言い終えると同時に、目の前に二つの何の変哲もないただの六面ダイスが表れた。
『それでは遊戯を開始します』