新装開店した洋食屋に行った。食事は可もなく不可もなく。
ナフキンで口を拭い、友人とそろそろ席を立とうとしていた時、友人がいきなり歓声をあげた。
「どうしたんだ?」
「壁を見てみろよ!」
白い大理石の壁。友人が指さす箇所に茶色いカニの断面模様が。
「カニの化石だよ!博物館に持っていかなくちゃ!」
「ダメです!」
店の人が血相変えて飛んできた。
「工事費用こちらが持ちますよ!」
友人はどうしてもこの壁の大理石が欲しい様子だった。
「いくら言われてもお譲りできません!」
断られたが、友人は諦めきれない様子だった。
「裕二くん来てない?」
友人の彼女から電話がきた。
「いや、ここしばらく会ってないけど」
「私も。ぱったり連絡が取れなくなっちゃって……」
「この前、新装開店した洋食屋に行ったら、壁の大理石にカニの化石が入ってるのを見てすごく興味を持ってたようだけど」
「そのお店教えて」
待ち合わせして行ってみると、洋食屋は休業中だった。
店の裏に回って、勝手口をノックすると、店の人が姿を見せた。すごくやつれていて、顔色が悪い。
「すみません、中を見せてください」
「困ります」
「友人が行方不明なんです」
店の人を押しのけて、友人の彼女と2人で店の中に入った。
「こっちの壁に……」
薄暗い店内を進むと、ツルハシが落ちていて、壁が半分くらい壊されていた。
「きゃー」
友人の彼女が悲鳴を上げた。
壁の奥に白骨死体が埋まっていた。ツルハシの下にはおびただしい血痕の跡。
「裕二くんをどうしたの!」
友人の彼女が店員に詰め寄った。
「壁の奥を見られたくなかったのに、あの人が力ずくで壊したんです!自業自得です!」
店員はツルハシを拾い上げ、俺たちに肉薄した。
「やめて!」
友人の彼女が断末魔をあげた。
次は俺の番だった。