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閑話10  戦勝祝賀会②

〇笹本リゾートホテル  1F祝賀会会場



岩城さん達との談笑中に、五月と雫に近づいて来た瘦せ型の如何にも軽薄そうな男の人が雫の肩に触ろうとして木津さんに全力の顔面パンチを喰らい失神した...


橋本と呼ばれた失神男は木津さんに襟を掴まれ引きずられる様に会場から出て行ったのを見て、岩城さんは苦笑いして呆れたように両手を上げ


「またな、進君」


と言い残し坂野さんを伴い他のハンター達の宴席へと消えて行った


「中々人間同士の付き合いと言うのは大変で御座いますね・・・・旦那様」


何処に身を潜めていたのか紅が俺の隣に立ち、ため息混じりに口に飲み物を口に運ぶ


「お、おい・・・それって酒じゃないだろうな?」


赤紫の色をした液体の入ったグラスを一気に飲み干し空になったグラスを掲げ首を傾げる紅


「さて?私めは日本酒以外のお酒の味は分かりかねますので」


「いや、子供は・・・って俺より年上だったか・・・紅は幼く見えるからつい未成年と勘違いしてしまうな・・」


「・・・・・・」


紅はジト目をすると無言で俺の手をとり・・・


「!?」


自分の胸元にある着物の併せの中へと突っ込む


「旦那様・・・紅は此れでも子供ですか?繁殖相手として不服ですか?」


「お、おい紅・・それは・・・」


紅はそのまま俺の手を取り会場の端まで引っ張り込むと・・・俺の胸に抱き付いてきた・・・


「旦那様・・紅は早く旦那様との倭子が欲しゅうございます・・・はぁはぁ・・旦那様の事を考えると・・ここが・・熱くて・・キュンキュンします・・」


紅は股付近を手で押さえながら呼吸を荒くして潤んだ瞳で俺を見上げる


「お、おい!紅!?」


紅の顔は赤く目の焦点があっていない...凛々しいはずのその表情が今はだらしなく涎を垂らして崩れていた


「紅、お前酔ってるのか!?」


「にゃにお・・いわれぇましゅ・・わらくし・・酒好きの竜王おろじのむしゅめにゃでしゅ・・・にゅんげんにょ・・おしゃけ・・にゃんかで・・」


だめだ紅が俺に抱き付いて足を俺の身体に絡ませてきた!?


「お、おい紅こんな所であんまり抱き付くと」


紅が俺の胸の中で身をよじるもので段々と胸の部分の着付けがズレて豊満な胸が俺の視界に露わになってくる・・・


「しゃぁぁだんにゃさまぁぁくれにゃいとぁ・・・子作りをぉぉいまからぁぁしましゅおぁ」


ダメだコイツ・・・オロチの娘の癖に酒にメッチャ弱い・・・しかも酒を飲むと性欲が増し乱れるタイプだ・・・ゴクリッ


竜族の力なのか紅の魅力なのか、紅の誘惑と発情した雌の匂いに俺の身体が反応してしまう・・・不味い不味い


何とか押しとどめようとするも逆効果で紅の胸や腰・・太ももを触ってしまい余計に紅をその気にさせてしまっている


「あ―――ん♡・・・旦那さまぁぁ早く寝所に―――」


「あ――――はいはいそこまでよ紅ちゃん」


「アンタねぇ雫よりたち悪いわよ!!」


背後を振り向くと五月と雫が般若の様なオーラを放ち立っていた・・・助かった!!・・いや助かってないのか?


「はいアンタは退場!!部屋で休むわよ!!」


「はいはい~私と言う第一夫人を差し置いてすすむんの童貞を奪おうとかぁ~・・・・死にたいの?」


「ひゃぁぁぁ旦那さまぁぁたしゅけてぇぇお姉様達がぁぁぁぁ」


紅は情けない悲鳴を上げながら五月と雫に引きずられる様に会場から運び出された・・・


(助かった・・・・でも・・・少し惜しかったな・・・オロチとの約束もあるし・・まぁ今度は相手を・・・って!!いかんいかん!!)


先程の妖艶な紅の様子にすっかり骨抜きにされた自分に克を入れる為テーブルにあった水を一気に飲み干す



「おおお、その貴重な山口県の名酒造の一品、獺祭だっさいを豪快に一気飲みとは、かなり行ける口だね進君」


俺の所にやってきたのは、雫のお父さんである蜂須賀 小五郎さんだった


「小五郎さん」


小五郎さんは俺の近くに置いてあった日本酒の瓶を手に取ると銘柄を眺め


「ほう―――【獺祭 磨き その先へ】か・・・中々手に入らない逸品だ」


そう言いながら自分の空いたグラスに注ぎ一口飲む


「うまい!!」


空いたグラスを見ながらそう呟く


「進君もどうだ?もう一杯」


小五郎さんは獺祭の瓶を手に俺に勧めて来た


「あ、で、では・・・」


小五郎さんの傾けた酒瓶に空のグラスを傾けると・・・ん?俺の横からもう一つグラスが差し出された


「俺も頂こう」


俺の横からグラスを差し出したのは十文字さんだった・・・小五郎さんは笑顔で俺と十文字さんのグラスに獺祭を注ぐ・・・


小五郎さんも自分のグラスに注いだ所で瓶が空になり近くを歩いていたスタッフのウェイターのお盆に返却すると俺達3人はグラスを中心に集まり


「ではこの国を救ってくれた英雄ドラゴンスレイヤーに」


「フフフ、心強い婿殿に」


「や、やめて下さいよ・・・じゃ僕は皆さんが勝ち取った勝利に」


「「「乾杯」」」


カーンと乾いたグラスのぶつかる音を耳に残し注がれた透明な清酒を口に運ぶ・・・先ほどは味わう間も無く飲み干してしまったが改めて味わうとフルーツ酒の様な芳醇な香りが鼻先をくすぐる


「美味しい・・・」


暫く無言で銘酒を楽しむ3人・・・・ほぼ同時に飲み終わり皆がテーブルにグラスを置く十文字さんがおもむろに俺に向って頭を下げる


「!?なんなんです?急に」


驚く俺に向って頭を下げたまま十文字さんは話し出す


「東京の支部で君の話をキチンと聞く事もせず、いきなり襲い掛かってしまった・・・自分の短慮を恥じるだけだ・・本当に申し訳ない」


「そして俺の元部下達のしでかした事・・・本当に申し訳ない!!」


「十文字さん・・・・頭を上げて下さい・・・あの支部での事・・実はあまり覚えて無くて、でも僕ももっと他に方法が有ったんでは無いかと・・」


「龍道君・・・」


俺の言葉に顔を上げ申し訳無さそうな表情をする十文字さん


「理由はどうあれ、僕は力を振るい4名の方の命を奪いました・・・・それは決して褒められる事ではありません」


「でもそれを責めるなら、私も傑達も同罪だよあの場で君があの連中を無力化してくれなければ、鳥居夫婦も妻の雪菜もそして娘達も命を落としていただろう・・」


そう言うと今度は小五郎さんが俺の方へ頭を軽く下げ


「一人の父親として、そして夫して妻と娘の命を救ってくれた事、本当に有難う・・・」


顔を上げた小五郎さんは俺に手を差し出し握手を求め


「たとえこの世の全ての人が君を批判しようと、僕たち蜂須賀の家族は君の味方だ」


俺は差し出された小五郎さんの手を取り握手をする・・・・


「俺も君の事を支持するよ」


十文字さんもその上に手を乗せ微笑んだ


「お二人とも・・・ありがとうございます・・・」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・


二人と雑談を交え今までの事や五月や雫との事を話してると・・・・


「ドラゴンロードか・・・どんな強いタレントなんだ?いや、単純に武人として一度手合わせ願いたいもんだ」


俺の話を聞いていた十文字さんは悪戯っぽく笑いながら俺の肩に手を置いてそんな事を言い出す


「や、やめて下さいよ――――」


「ふふふ、南斗は結構しつこいからな、進君も厄介な奴に気に入られたな」


小五郎さんに冷やかされながも、目を輝かせて前のめりでグイグイ来る十文字さんの質問攻めにタジタジになってしまった・・・


















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