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閑話8  立花家の裏事情③

〇笹本リゾートホテル  1Fテナント コンビニ【ワーソン】



今日は夕方から祝賀会が開かれる予定だ、その為バイトは鰐淵さんにお願いして3時までで上がらせて貰う様に話をしている


「それにしても、鰐淵さん野暮用が出来たからって昼前に出かけてから戻って来ないな・・・どうしたんだろ?」


棚の整理もひと段落して客足も途絶えた所で店内の時計を確認すると時刻はもうじき14時になろうとしていた


「進さん、ここからは私一人で大丈夫です・・・この後、宴会場で祝賀会があるのでしょ?第二次富士防衛戦でのご活躍娘に聞きました、本当に進さんは凄いです」


「いえ・・・色んな人の助けあっての勝利です・・・僕一人では勝てなかったでしょう」


立花さんの表情は昨日の事が嘘の様に穏やかな表情だ・・・


「そういえば、借金の件は?」


そう話をすると、すこし複雑な表情をして


「今旦那がお休みをもらって後藤さんの所に返金しに行ってると思います・・・・その・・進さん・・・あの後、家族で話し合いました」


「え?」


「やはり、あのお金は頂けません・・・」


「!?しかし!!」


立花さんは少し疲れた様な・・・いや・・吹っ切れた様な笑顔で首を振る


「いえ、あのお金はやはり頂けません・・・ですのでお借りさせて下さい・・・ここでお金を頂いては私達は前に進めません・・こればかりは・・私達家族で返すべきお金なんです・・・慎吾と一緒に・・・」


そう言いながら俺に頭を下げる・・・・


立花さんの家族は慎吾さんの働いていたこの笹本ホテルで、家族で働く事で慎吾さんと一緒に借金を返し前に進もうとしているのか・・・・だとしたら俺の答えは決まってる


「解りました・・・では無利子無期限でお貸しします・・・」



テレレ♪テレレ♪テレレ♪


店の自動ドアが開く音が聞こえ


「「いらっしゃいませ~」」「!?」


店内に入って来たのは・・・・・


「ご、後藤さん・・・」


後藤さんの姿を見た瞬間、立花さんの表情がこわばり小刻みに震えだす・・・


俺は自然と体が動き立花さんと後藤さんの間に体を入れ少し身構える


「あぁ~早とちりするなよ、進君」


後藤さんの後ろから現れたのは鰐淵さんだった


「わ、鰐淵さん!?一体どうして!?・・いやそれよりも何処に行ってたんですか?」


「ん?ああ――――ちょっとコイツの所にねぇ」


そう言いながら後藤さんの肩に手を置くと後藤さんがビクッと身体を硬直させる


「あ、立花さん、コイツが貴方に渡したい物と言いたい事が有るというんで聞いてやってくれ」


ガタガタと震える後藤さんの背中をドン!と強めに押すと後藤さんはヨロヨロと前に歩み出て俺と立花さんの前で膝から崩れ・・・・


「この度は誠に申し訳御座いませんでしたぁぁ!!」


盛大に地面に頭をこすりつけ土下座してきた


「!?え?」


驚く立花さんと俺・・・・ふと鰐淵さんに目線を向けると俺に向って悪戯ぽくウインクしていた


「こ、こちら・・・借用書と・・・過払い金の780万です!!」


土下座しながら一枚の用紙と厚めの茶封筒を差し出した


「ご、後藤さん、これは一体・・・・」


「あぁ~私から説明するよ」


鰐淵さんが後藤さんの横に立って差し出した借用書と茶封筒を奪い取り茶封筒の中身を確認しながら話出す


「コイツ・・・後藤金融ってしょっぱい金貸ししてんだけど、どうやら裏で黒原家と繋がってたみたいで黒原家から締め付けられた家を狙い撃ちで法外な金利で金を貸して暴利を貪っていた小悪党なんだよ」


「黒原家が幅を利かせていた時は、誰も文句言えなかったけど今の黒原家は時夜が居なくなってお家騒動の真っ最中、こんな小悪党に関わってる暇は無いって事でちょっと私の実家の力を借りてね・・・フフフ」


鰐淵さんがしゃべる都度ビクビクと肩を震わせている後藤さん・・・・茶封筒の中身を見終わった鰐淵さんの表情は険しくなり・・


ドガッ!!


後藤さんのお尻に向って蹴りを見舞う


「おい・・・迷惑料は?」


「ヒィィ払います払います!!」


後藤さんは上着のポケットから財布を取り出し・・・・・ヒョイ・・・と思ったら財布ごと鰐淵さんに取られ・・・・


「まぁこれだけで許してやるよ」


そう言うと財布に入っていた札束全部抜き取り空になった財布を後藤さんに放り投げ返却する・・・抜き取った札束は茶封筒に仕舞い・・・


「ほれ・・これは立花さんの物だ・・・」


立花さんに手渡しすると、後藤さんの目の前に立ち、「借用書」と書かれた紙を見えるように真ん中から真っ二つに破るとビリビリにして空中に撒き散らす


(さっき掃除したばかりなのに・・・)


「今後は立花家に一切関わるな」


「は、はい勿論です!!」


後藤さんは鰐淵さんに向っても土下座する


「それと、金輪際、鰐淵組のシマで金貸しする事は許さない・・そう親父が言っていたぞ?破れば・・・わかるよな?」


底冷えする様な冷たい鰐淵さんの言葉に何度も何度も頭を床にぶつける後藤さん


「わかったなら、私の気が変わらない内に目の前から消えろ」


「ヒィィィ!!!」


後藤さんは正に這う這うの体でコンビニから逃げる様に出て行った


店内に残った立花さんと俺は唖然としたまま立ち尽くし鰐淵さんを見つめている・・・・






「あぁ―――――まぁこれで万事解決って事で、仕事しよう!!!」


「「イヤイヤ、色々と説明足りないでしょ!!」」





「アハハハハ・・・・やっぱり?」








後日、俺の自宅に麻美さんが預けておいた通帳と印鑑を手に尋ねて来て、無事全額俺に返金してくれたのは、また別のお話・・・



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