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閑話7  立花家の裏事情②

〇笹本リゾートホテル  1Fテナント コンビニ【ワーソン】



後藤さんの強引な誘いを何とか追い払ってから、本当に休憩時間も終わりだったので立花さんと一緒に仕事に戻った


「なぁ進君、立花さんと何かあったのか?」


鰐淵さんは立花さんの様子がおかしい事に途中で気付いて俺にコッソリと尋ねて来た・・・・


「いえ・・・僕は何も知りませんけど・・・」


「・・・・そうかい、まぁ何かあったら私に言いな、それなりに人脈もあるし力になるぞ」


パンパン!!


そう俺の背中を叩いて鰐淵さんは笑顔でスタッフルームへと入って行った


「・・・・・進君、バイト終わってから少し時間貰えるかしら・・・」


立花さんは、鰐淵さんの姿が見えなくなったのを確認してそっと俺の方へ寄って来て小さくそう言ったので俺は黙って頷いた



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・


「お待たせしました・・・」


従業員出口から出た所で立花さんは俯きながら立って待っていた


「此処では話しにくいので・・・ついて来て下さい・・・」


俺の顔を見る事も無く立花さんは俺の前を歩き出す・・・・俺は無言で立花さんの少し後ろをついて行った


立花さんはホテルの正面玄関を抜けホテル横のガーデニングされた庭園の奥へと進んで行く・・・俺は少し周囲を伺いながら歩いて行く


(確かに誰も居ないな・・・)


そんな事を考えながら歩いていると、目の前で立花さんが急に立ち止まり


「そこのベンチで少しお話を聞いていただけますか?」


俺は黙ってベンチに腰を掛けると立花さんは俺とは反対のベンチへ少し距離を取り腰を下ろした・・・


「昼間はお見苦しい所を見せてしまい申し訳ありません・・・」


立花さんは水筒を握りしめながら深々と頭を下げる


「いえ・・・あの後藤という人・・・立花さんとどういう御関係ですか?」


後藤さんの名前を出した途端少しだが立花さんの肩が震えた


「実は・・・私達は後藤さんの金融会社にお金を借りてまして・・・」


そんな予感はしていた・・・俺も前の世界で何回かそういう界隈の人に出会った事があるが後藤さんからは同じ人種の匂いがした


「聞いて良いのか分かりませんが・・・幾らくらい借りてるんですか?」


立花さんはスカートの裾を握りしめながら・・・唇を噛み俯き気味に絞り出す


「・・・・・・約1千万程・・・・」


「・・・・それは・・・かなりの大金ですね・・・やはり黒原さんの?」


俺の問いに、立花さんは黙って頷く・・・・


「最初は200万程でした・・・・それが利息で膨れ上がり・・・返済しても返済しても利息分しか返せなくて・・借金は膨れ上がる一方で」


「いくら利息だとしても200万の借り入れが返済金1000万になるとか有り得無いですよ!!誰かに相談しなかったんですか!?」


立花さんは俯いたまま横に力なく首を振る・・・


そんな時・・・


「お母さん!!」「母さん!!」


ホテルの方から、私服姿の麻美さん(亡くなった慎吾さんの妹)と清掃スタッフの作業着姿のお父さんが此方に向って走って来た


立花さんはベンチを立ち上がり、旦那さんの元へと駆け寄ると旦那さんの上着を掴んでその場で泣き崩れる・・・


「え?もしかして進さん?!」


様子を見ていた俺に気付いた麻美さんが驚いていた、麻美さんの声に気付いたお父さんは俺を見ながら立花さんの肩に手を置いたまま軽く俺に頭を下げる


「進さん・・・先日はわざわざ慎吾をお参りに来て頂いたのに失礼な態度を取ってしまい誠に申し訳御座いませんでした・・・」


「妻に何が有ったか聞かせて頂いても・・・?」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・



俺は昼間有った事を二人に説明した・・・俺の説明が終わると立花さんはさらに泣き崩れ地面に顔を覆って打つ伏せる


「くっ・・・済まない俺が不甲斐ないばかりに・・・俺が何とか知り合いに頼んでせめて利息分だけでも用意する・・・」


「わ、私も伝手を当たってみるよ!!」


「・・・・・・・皆さん・・・その返済金・・・僕に融通させて頂けませんか?」


「!?」


「そんな訳に行きません!!それでなくても進さんには娘と息子がご迷惑おかけしたと言うのに、さらにお金まで融通してもらってはあの世の慎吾に合わせる顔がありません!!」


俺は慎吾さんのお父さんの言葉に首を振る・・・・


「それは違いますよ・・・慎吾さんに救ってもらったのは俺の方です」


「慎吾さんには、ザビーネに飛ばされた時に瀕死になった俺の命を救ってもらいました」


「そして俺に何をすべきなのかその命で示してくれました・・・」


俺の言葉に立花さん家族は神妙な表情をしている


「だから此れは俺の慎吾さんに向けた恩返しです・・・あなた方の為ではありません・・・」


俺はそう言い、以前時夜さんに叩き返された貯金通帳と印鑑を懐から出して麻美さんに手渡す


「!?2000万!?こ、こんなにお借り出来ません!?」


通帳を拡げて金額を確認した麻美さんは驚き慌てて俺に通帳と印鑑を返そうとするが・・・・俺は手を拡げ首を横に振るとそれを断る


「お貸しするんでは有りません・・・差し上げるんです・・・僕が持っているよりあなた方に使って貰えた方がこのお金も意味が生まれると思います」


俺はそれだけ言うと3人をその場に残し、ホテルの中へと戻った





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・





「後藤ねぇ・・・・・成程・・・」




















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