〇笹本リゾートホテル 1Fテナント コンビニ【ワーソン】
「鰐淵さん、こちらの棚出し終わりました」
「それじゃ表のゴミ箱のゴミ袋を替えておくれ~」
「わかりました―――」
俺は、決戦の翌日朝からコンビニのバイトに入っていた・・・我ながら天職かな?と思ってしまうほどシックリくる
鰐淵さんの指示通り表のフロアー通路に設置してあるゴミ箱の蓋を開け中の袋を取り出し口を縛ると新しい袋をセットする
「龍道さん手慣れてますね」
俺に声をかけて来たのは、先日よりバイトに入っている立花さん・・・・慎吾さんのお母さんだ
「あ、あはは、コンビニのバイトは長いんですよ」
仕事で褒めてもらう事があまりないので照れ方も良く分からない、その為愛想笑いも少しぎこちなかったかもしれない
「私はコンビニとかで働いた事無くて・・・ずっと工場でパートしてまして・・・その・・接客業に慣れなくて・・」
表の掃除をしていたのか、ほうきと塵取りを手にしてる立花さんは少し表情が曇ってる様に見える・・・
「進君、立花さん―――二人とも今お客少ない時間帯だから休憩入ってくれる――――?」
奥で真剣な表情でレジの集計をしてる鰐淵さんはタブレットをレジに繋いで何やら操作しながら俺たちに声を駆けてきた
「それじゃ立花さん休憩に入りましょうか?」
「・・・・はい」
俺と立花さんは店のスタッフルームに入り休憩をしようとしていたが・・・・
「・・・・やたら荷物が多いですね、これじゃ座る場所もない」
「あ、一昨日くらいから物資が大量に送られてきて・・・政府から物資を補充する様に店側に指示があったみたいですよ?」
成程・・・富士防衛戦が長期化する事も考えて犬飼会長達上層部が物資調達したんだな
思いのほか短期で終了したんで余ってる訳だ
「取りえず店の横にベンチがあったからそこで休憩しましょうか」
「ええ、そうですね」
おれはお店でブラックコーヒーを購入し、立花さんは自分で用意してきた水筒を持参で店の裏口にあるベンチに座って休憩に入る
「立花さん、先ほどから何か浮かない顔ですけど何かありました?」
「・・・・いえ・・私の接客のしかたが悪いだけなんで・・・」
俯いてさっきから尋ねてもそれしか言わない・・・お客と何かあったのだろうか?
そんな事を考えてると・・・・
「あれぇ~?奥さん~こんな所で若い男と仲良くサボりですか~いい身分ですねぇ~」
悪意の籠った言葉を投げかけて来たのは、中年の少し頭の薄い中年太りした男性だった・・・・男性は立花さんと俺を交互に見ながらヤラしい目で立花さん舐める様な視線を向ける
とてもじゃないが立花さんの友人とかでは無さそうだ・・・現に立花さんは顔を青くして俯きながら震えている様だ・・・
「嫌だなぁ~無視とか、ここの店員さんはお客に対しまともな応対も出来ないんですかぁ?」
「・・・・・ご・・後藤さん・・・い、いらっしゃい・・・ま、ませ・・・」
ふり絞る様に声を出す立花さん・・・普通じゃない・・・俺は立ち上がり立花さんと後藤と呼ばれた男性の間に割り込む様に立つ
「あぁ~ん、なんだぁ兄ぃちゃん俺になんか文句あんのかぁぁ?ああぁぁん?」
自分より背の高い俺の事を下から睨み付ける後藤さん
「あの、僕たち今休憩中なんです、コンビニに御用でしたら中に別の者が居ますので店内で対応させてもらいます」
「はっっこんなコンビニに用なんかねぇよ!!俺が用があんのは、そこの奥さんだ!!テメェは邪魔だそこを退けよ!!」
男性は俺の事を横に退けるつもりで腕を掴んで横に押し退けようとしてきた・・・・が
「!?・・テメェなんのつもりだ?・・・その手を退けろよ」
俺は男性の前に右手を伸ばして立花さんに近づくのを阻止する
「!?す、進君良いの・・これは私の・・私達の問題で・・・」
「立花さん・・・・でも・・・」
「兄ちゃんに教えてやったらどうだ?お前ら立花一家が俺に幾ら借金してるのか?なぁ奥さん」
「・・・ゴメン・・・進君・・そういう事だから後藤さんと少し話してくる・・・・」
立花さんはそう言うと水筒をベンチに置いて力なく立ち上がった・・・
「ギャハハハ、そういうこっちゃ兄ちゃん分かったらそこを退けよ」
そう言われ・・・仕方なく立花さんが通れる様に道を明ける・・・・
「!?」
後藤さんは立花さんの肩を抱くと立花さんの顔をヤラしい顔で覗き込む・・・・背中越しに見える立花さんの肩は小刻みに震えていた
「奥さんが、すこ~し、俺の相手をしてくれるだけで返済を待って上げようって言ってんだからぁキヒヒヒ・・タップリサービスしてくれよなぁ~」
「さぁ、奥さん俺の部屋でゆっくり・・・ねぇ」
後藤さんはそう言うと立花さんの肩に置いた手を背中に・・・・腰に・・・そして、おしりに・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
がしっ!
「!?あぁぁ何すんだぁぁテメェ、関係ねぇ奴は引っ込んでろ!!」
「いえ、関係はあります」
「あああ!!何だァァ!!」
俺に向って凄む後藤さんを無視して立花さんの手を取り・・・
「立花さん休憩時間は終わりです、業務に戻りますよ?」
「はぁぁぁ?てめぇぇふざけるな!!!」
グシャッ!!
俺は片手で空になったコーヒーの空き缶を潰して真っ平の鉄の円盤にする・・・
「ひっ!?なんだ!?てめぇ何者だ!?・・・空き缶が丸いコインみたいに・・・化け物か!?」
「後藤さん・・・でしたか?これ以上うちの店員の業務を邪魔をするのなら・・・・・」
俺が後藤さんの顔に向って手を伸ばすと
「ヒィィ・・・・お、覚えてろ!!!」
悪党のテンプレみたいなセリフを吐きながら不格好な走り方でフロントの方へ向かって走り去った・・・・
「・・・・・出過ぎた真似して申し訳ありません・・・もし良かったら事情を聞かせて貰えませんか?」