〇熊井旅館 露天風呂
「ちょっと!!何触ってんのよ星奈!!」
「いいじゃん減るもんじゃないし~」
星奈と由利は貸し切り状態の露天風呂に二人で来ていた
「減るとか減らないとかじゃないんだって、あんっ・・・て、本気で怒るわよ!!」
部屋でお互いの気持ちを、ぶつけ合い友情を確かめあった二人は以前の関係に戻る事が出来た
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「フゥ―――——— ああぁぁいつ来ても良いお湯ね―――」
湯船に浸かり温泉のお湯でツルツルになった腕を撫でながら一息つく由利
チャポン
「なぁにぃ~由利ってば何かオバサンぽくなってない?」
身体を洗い終え、女性しか居ないのも有り遠慮なく裸で湯船に入って来る星奈は少し意地くそう由利を揶揄う
「はぁ?アンタだって同じ様なもんでしょうが」
星奈を睨み付けながら低い声で反論する由利
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「フフフフ」「アハハハ」
湯船の中でお互いの背中を合わせて満月の輝く星空を見上げ笑い合う二人・・・・
「そっか・・・星奈は進君の事吹っ切れたんだ・・・」
「・・・・・そういう由利はどうなの?」
「私は・・・・そうね、あの富士山の頂上での戦いを覚えているわけでは無いけど、この先 進君の進む道の険しさに着いて行く自信は・・・・無いかな」
お互いの顔を見る事無くそう見上げた夜空に向かって語り掛ける
「でも、女には男の帰る場所になるって選択肢もあるじゃない?疲れた男を優しく癒してあげるっていう居場所に」
「そうね・・・確かに普通の男ならそんな女も受け入れられると思うわ、でも進君は違う」
パシャ
由利は湯船のお湯をすくい星空に向かって撒いた・・・水滴は月の光を反射し夜空の星が降ってきたかの様に飛散する
「進君はきっと重い責任と使命を背負って進んで行く・・・そんな彼を癒してあげれるのは、その使命に寄り添い一緒に乗り越えていける女性(ひと)だけよ」
パシャ
星奈も由利に倣ってお湯をすくい空高く撒き水滴の星屑を降らす・・・・
「私達って本当に男運無いよね」
星奈はそう空に向かって呟く・・・・
「アハハハ、ホントにそれ」
由利も笑って星奈に同意する
「それにしても、五月と雫ってマジヤバいよ、ツンデレの申し子にヤンデレの権化って感じよ、話聞いて背筋が寒くなっちゃった」
「へぇ~少し興味あるかも?聞かせて」
「それがさぁ~あの子ら進の力になりたいってさぁ、討伐に参加してそこでネームドの魔物と遭遇したらしいのよね、それで・・・・」
星奈はレストランで聞かされた五月と雫の東京での拠点防衛ミッションについて由利に説明した
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「はぁ~進君だけじゃ無くてあの子らも、とんでも無い女の子だったって訳ね~そら勝てないわぁ~」
「でしょでしょ!驚くよね初めて出会った時は私らと同じBランクで場数踏んでない分、私らの方が強いかな?とさえ思っていたけど」
「まぁ今やったら先ず勝てないよね~」
「まぁここは年上のお姉さんらしく若い女の子の恋を応援しようじゃないの」
「ふふふ、そうね」
「あらあら、楽しそうね恋バナ?私も混ぜてくれる?」
「「!?」」
「ちょっとお母さん!?何で入ってきちゃうの!?」
星奈の見た先には、とても50歳手前とは思えない抜群のスタイルを惜しげも無く見せつける月奈が立っていた
「えぇ~私だって恋バナ聞きたい、聞きたい」
子供の様に駄々をこねながら、星奈と由利の浸かっている所までやってくる月奈
ギュ―――――――
「や、やだお母さん」「ちょっ!小母さん!?」
月奈は二人を一緒に抱きしめると、そっと二人の耳元で囁く・・・・・
「この世に無駄な恋なんて無いの・・貴方達は素敵な恋をしたのよもっと誇りなさい」
「お母さん・・・」「小母さん・・・」
「よく言うじゃない、「女は恋して綺麗になる」って、貴方達は私の眼から見ても十分に綺麗だし魅力的よ」
「だからもっと、もっと、女を磨いて、そして何時か進さんに見て貰った時に(あの時二人の手を取っていればよかった!)って思わせる様になりなさい」
「フフフ、この街で有名な美魔女の月奈さんに言わると自信が出てきます」
「あら、由利ちゃんお上手ねぇ~」
(五月、雫・・・・・進の事・・・・・よろしく頼んだわよ・・・)
月奈に抱きしめられたまま、もう一度星空を見上げた星奈の頬に一滴の涙が流れ湯船に落ちる・・・・
この夜、二人の女性の、一つの恋が終わり、夜空の星を映し出した湯船の中に 一粒の雫となり消えていった