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閑話4  自らの罪を顧みる恋に破れし者①

〇熊井旅館  宿泊部屋


由利は、星奈の実家である熊井旅館に療養の為と理由付け宿泊しに来ていた


しかし実際には他の人たちと顔を合わせにくいから笹本ホテルから逃げて来たのだ


星奈はそんな由利を何も言わずに、母親である月奈に電話をして由利を暫く宿泊出来る様に話をつけてくれた


「由利ちゃん、ゆっくりしていってね」


さすが星奈さんの母親...月奈さんは理由を尋ねる様な無粋な真似はせずに昔と変わらず由利に接してくれた


「由利はわたしと一緒の部屋に泊まるからね」


「・・・・・」


俯き返事すらまともに出来ない由利の手を強引に掴んでズンズンと宿泊先の部屋に向う


「少ししたら、お風呂行こうか~今日はお客さんも少なくて露天風呂も貸し切りみたいだし」


「・・・・・・・・・・」


部屋の窓から見える景色に両手を上げて全身で伸びをし、由利に背中越しにそう話す・・・・


しかし由利は相変わらず・・・テーブルの前に正座して俯いたままだ・・・


「・・・・・ちっ!!」


星奈は景色を見ながら苦虫を潰した様に顔を顰め小さく舌打ちをすると


ガタッ!!!


乱暴にテーブルを足で蹴って退けると由利の胸ぐらを掴んで自分の目の前に顔を持ちあげる


星奈の怒りに満ちた表情に目を合わすことが出来ない由利は目を背ける・・・・その目元にはファンデーションが涙の跡となっていた


「アンタがそんな態度で居たら誰かが喜ぶとでも思ってんの!!!」


「誰かが納得するとでも思ってんの!!」


「なんなのアンタ、「私は落ち込んでます」「反省してます」「そっとしておいて下さい」そんなアピールウザいのよ!!」


星奈さんからの理不尽な罵声に由利さんの瞳に涙が溢れる


「あ、あんたなんかに・・・・アンタなんかに何が解んのよ!!」


パシッン!!!


由利さんの平手打ちが星奈さんの左頬を打ち部屋中に乾いた音が響く・・・・星奈さんも由利さんからの全力の平手打ちにより右に顔が振られる


「解らないわよ・・・・・」


「解らねぇ―――ってんのよ!!!」


パシッン!!


今度は星奈さんの平手打ちが由利さんの左頬を打ち部屋の中に先ほどと同じように乾いた音が響く・・・


由利さんは打たれた勢いで右側に倒れ込む・・・・・


「・・・私ね、進に付いて富士防衛線に挑む前に五月と雫とホテルのレストランで話をしたの」


「あの子達の話を聞いたら進への想いの強さに自信が無くなってね・・・二人に進の事は任せるってそう伝えた・・」


由利は頬を押え俯いたまま何も言わない


「でも、私は私なりに進の事、真剣だったし本気で恋してた・・・それは誰にも曲げられない」


「アンタも進に恋して・・・それでも家の事を優先して諦めて、そこで魔族の罠にかかって取り返しのつかない事に・・」


「言わないで!!!!」


由利さんは悲痛な叫び声を上げる


「分かってる!!私の仕出かした事が取り返しのつかない事だって、解ってる!!慎吾も・・・オロチも・・」


「・・・・・何で・・・何で私を生かしたの?あのまま時夜と同じように・・・」


パシッン!!


「甘ったれんじゃないよ!!アンタ今何を言うつもりだったの?!アンタのその命を救う為に犠牲になった人を裏切る様な事をいうんじゃないよ!!」


床に伏せて泣き出した由利さんを見下ろしながら怒鳴る星奈さん・・・その瞳にも大粒の涙が溢れていた


「私は・・・一体どうしたら・・・」


「そんなの私に解る訳ないでしょ!!アンタが償うとしたらその答えを探し続ける事でしょ!!」


「星奈・・・・・」


星奈の顔を見上げ泣きじゃくる由利さんを、強く抱きしめる星奈さん


「時夜ももう居ない...由利、私を置いて居なくなるなよ・・・馬鹿・・・馬鹿由利」


由利は震える星奈の背中にそっと手を添える


「星奈・・・私探すよ・・・何が出来るのか・・・失った物に見合うだけの何かを・・・一緒に探してくれる?」


「馬鹿ね・・・当たり前じゃない・・・私ら親友でしょ」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・



その様子を部屋の外で様子を伺っていた月奈は静かに微笑みその場を後にした...






















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