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閑話3  富士山頂での戦いを語る ③

〇笹本リゾートホテル 最上階 スイートルーム



俺はその場に集まったメンバーに向って、この事件の顛末を知りうる限りの知識で説明した


その俺の話を聞いた犬飼会長の言葉・・・・・


全世界規模の事件に発展しかねないと言う発言に対し、一同の表情は其々複雑な思いを抱え反応は様々だった


額を押さえる者、天井を仰ぐ者、項垂れる者、静かに目を瞑り思考を巡らせる者・・・・


そんな中で犬飼会長が口を開く・・・・


「この件は私が上層に報告し、判断を仰ごう・・・」


「その前に進君、そこの紅殿が何故君に託されたのか?その説明を頼めるだろうか?」


俺は紅の方を見て、五月、雫にそれぞれ視線を向けると・・・・


「構わないわ・・・話して進」


五月の言葉に頷くと紅の肩に手を置いて皆に説明を始める・・・・


「当初、僕達とオロチは、魔族の陰謀に気付く事無くそれぞれの正義の名のもとにぶつかりました」


「そして、オロチと紅に対しなんとか勝利した時に、僕のドラゴンロードの特殊能力により竜王オロチをテイム・・・つまり従者として契約する事になりました」


「なっ!?オロチを従者に!?どうなってんだ!!」


十文字さんは驚き呆気に取られてる


「・・・・この件はオロチの意向もあり・・・いえ、結果として俺は従属契約を受け入れました」


「オロチと紅は、魔族に操られた笹本さんを救う為、俺たちに力を貸してくれました」


「そこでザビーネが自分の妻の妹であり、妻を害し娘を攫った真犯人だと解り俺たちに協力してくれ一緒に戦ってくれたんだ・・・」


「しかし、零竜化したオロチも手に負えない化け物と化した魔竜人となったザビーネに・・・・・」


言いにくそうにしてる俺の背中に雫が手を添え、それに気付いて振り返った俺に優しく微笑み頷いた


「魔竜人化したザビ―ネに、このままじゃ勝てないと悟った僕は・・・・ドラゴンロードの力を1段階だけ解放してもらい何とか退ける事に成功しました・・・」


「なっ!?龍道  お前の力はまだ上積みが出来るのか!?」


十文字さんが驚いた様に俺に尋ねる・・・・犬飼会長も何か考えてる様だ・・


「申し訳ありません、こればかりは僕にも上手く説明出来なくて・・・自分の事なのに良く解らないんです・・・」


背中にもう一つ手が添えられ・・・・横を向くと五月が微笑んでくれた


「進君、君の力の謎は我々には測りえない・・・君から説明してくれる時まであえて聞く様な事はしないでおこう」


犬飼会長は他のメンツを牽制する様に俺の事を詮索しない様に、先に釘を刺してくれた


「くっ!」


悔しそうにソッポを向いた十文字さんは悔しそうだった


「ザビーネを後一歩まで追い詰めたんですが、何処からか邪魔が入り止めを刺すことが出来ないまま取り逃がしてしまって・・・」


悔しくて拳を握り噛んだ唇からは血が滲む・・・・それを見かねた紅がそっと俺の口元の血を拭い


「旦那様・・・此処からは私が自分で説明します」


「しかし・・・」


「良いのです、父もそうせよと言うはずです」


紅は俺の前に立つと静かに・・・冷静にその時のオロチの状況を語り出す


「我が父は旦那様の連れの女・・・由利とか言ったか・・・その女に埋め込まれたザビーネの死の肉腫の呪いに対抗する為に、竜の血の呪いを使ったのだ」


「しかし、自分が顕在だと、血の呪いが、魔族の肉腫だけでなく由利という女の人体にまで、影響を与えてしまう」


「そこで、人族の宝剣と宝珠の力で自らを封印する事で、竜の血の効果を拡散しない様にする事を提案しました」




「そして私には・・・・・竜族の繁栄の為、より強い竜の皇たる進様の元に嫁ぎ・・・幸せになれと・・・」


「まぁ」「あらあら」


恥じらいながら俯き加減に話す紅に対し、緊張した空気の中でほのぼのした美月と雪菜が嬉しそうに紅を見つめる


急に言葉に詰まる紅に変わって説明を続ける


「由利さんを救う為、オロチは俺に紅の事を託し 封印を甘んじて受け入れ、自ら岩となって富士山の山頂に静かに眠りについたんです」


「・・・・・そうか・・・」


犬飼会長は俺の話に対し短くそう答え・・・静かに目を瞑ると


「オロチの取った行動原理は儂も含め殆どの人間には理解できないだろう・・・オロチと人類の間に魔族という介入が有り取り返しのつかない行き違いが有ったとしても・・」


「それを、戦いによって死んでいった者、その友人、恋人、そして家族は受け入れる事は出来ないだろう・・・たとえ表面上はオロチを許すと言う者は居たとしても心の傷や空白は埋まらない」


犬飼会長は紅の方を見つめる・・・その瞳を激しい憎悪の籠った目で睨み返す紅・・・


「それに・・・それは人類側だけに留まらない、魔族に操られていたとは言えオロチの妻や娘を害したのは紛れも無く人間だ・・・それを無かった事には出来ん」


「し、しかしそれでは何時までたっても恨みの連鎖は断ち切れません!!」


俺の言葉にも首を振る


「進君・・・人は都合の良い生き物だよ・・・時が経てば恨みは薄れていき、寂しさは別の大切な人との時間で埋まって行く、しかしそれは人が100年に満たない短命な生き物だからだ」


「だが、魔族は?竜族は?彼等の様な長命な種族にとって、忘れる為、消し去る為にかかる時間は人類の尺度で決めていいものではない」


「だが少なくとも竜族は前に進もうとしてるのでは無いか?」


俺は犬飼会長の言葉にハッとなる


「うむ・・オロチは人類への恨みを一旦、自分の胸に仕舞い進君の願いを聞き遂げ人を一人救う為に自ら封印する道を選んだ、そしてそこの紅殿は人類への恨みよりも自身の幸せを父の望みを優先した」


「しかし、人類はまだオロチや紅殿程前には進めない・・・・儂も含めな・・・だから・・・」


「だから、今は進君 君達ちだけが竜王と竜の姫の事を信じ共に歩み・・・そしていつか・・・」



「はい、俺たちはその日を信じ、紅と共に歩み・・・何時かはオロチを・・・・」



その日夜、源蔵の元に集まりし、この国が誇る実力者達・・・龍道 進により語られた第一次、第二次富士防衛戦の真相を知り


様々な思いが其々に胸に宿る・・・・


そして龍道 進は何時か3種族が互いに恨みや遺恨を忘れ共存出来る世界が訪れる事を信じ次なる道へと進決意をする































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