〇笹本リゾートホテル 最上階 スイートルーム
犬飼会長に呼ばれ、オロチと魔族との闘いの顛末を説明する前に紅の事を説明しようと話し出すと、犬飼会長は冒頭の話だけ聞いて待ったをかけ
傍聴人として、五月と雫の御両親に十文字さんを部屋に呼んだ・・・・・
犬飼会長の泊まってる部屋に集まる主要なメンバー達を前に俺はゆっくりと説明を始める
「まずは皆さんに、オロチとの闘いの顛末とその経緯、それと魔族の陰謀についてお話しさしてもらいます・・・」
「その前に・・・・彼女をご紹介させてもらいます」
俺は紅を皆に紹介する
「我はオロチの娘にして、竜皇 進様の妻の一人 赤龍の紅という」
ピンクの髪の和装美少女が、そう自己紹介をすると和やかムードの一同の表情が一瞬にして強張る
呆気に取られる皆の中で割と冷静な雪菜さんが前に進み出てきて、頬に手を置いて首を傾げながら紅の顔をマジマジと見る
「う――――ん、どっから見ても可愛いお嬢さんにしか見えないけど?」
どうやら雪菜さんは紅のあどけない姿に竜王の娘だという話を信じ切れてない様子だった・・・
「犬飼会長、少しだけ力を開放させますがご許可頂けますか?」
一応犬飼会長の許可を取る為、お伺いを立てた 犬飼会長は黙っ頷いて俺のする事に許可をする
「紅・・・姿を変えずに力を開放出来るか?」
紅は俺に向って深々と頭をさげると、その場の全員が見える位置に移動し・・・・
「はぁぁぁぁぁ!!」
拳を握り腰の位置で後ろに引きながら体全体に力を通わすと・・・・
「なっ!?頭に角が!?」
紅のピンクの髪の毛の隙間から鹿の様な細い黄金に輝く角が生えてくる
「なっ!?この力・・・あり得ない・・」
紅は視認できる程の熱を帯びた淡く赤いオーラを身に纏い周囲の空間がユラユラと揺らめく・・・
「紅、その辺んで良い」
「はい、旦那様」
俺が制止すると一瞬で赤いオーラは霧散し紅の角が頭の中に納まって行く
「十文字・・・・剣の柄から手を離せ・・・・」
「!?」
犬飼会長から指摘された十文字さんは、自分でも気づかない内に無意識で剣の柄を握り身構えていた様だ
指摘され、震える指を一本づつ開いていき剣の柄からようやく手を離した十文字さんの額には汗が滴る・・・
傑さんと小五郎さんも、無意識の内に美月さんと雪菜さんの前に出て壁になるように立って身構えていた
「進君・・・彼女は本当に・・・・」
「はい、彼女。。紅は間違いなく竜王オロチの娘です・・・そしてオロチは彼女を俺に託しました」
腕を組み静かに目を瞑る源蔵の言葉を、その場の皆が待っている
「彼女が人知を超えた存在で有ることは解った・・・・進君 君の見知った事・・・その全てを儂らに話してくれないだろうか?」
俺は犬飼会長に向って黙って頷くと、この一連の事件について皆に説明を始めた
「話は35年前の第一次富士防衛戦の前にまで遡ります・・・・」
俺はオロチが35年前に人類に対し突如侵攻を開始した経緯を皆に説明した
「つまり・・・オロチは自分の妻・・・魔族の女性だったかな・・と愛娘・・・そこの紅ちゃんを人間に攫われ妻を殺され娘を虐待された事に怒り人類に対し復讐をする為、怒りの行軍を始めたと言うのか・・・」
小五郎さんは親指の爪を噛みながら、眉間にしわを寄せそう呟く・・十文字さん以外は家族を持つ人達だ、オロチの感じた怒りの気持ちに共感する所も有ったのかもしれない・・
「しかし、この話には裏が有ります、オロチの怒りに任せた人類への進軍事態が綿密に練られた魔族の陰謀が大きく関与してました」
「オロチの妻である妻である魔族の女性・・・名をミレーネさんと言いますミレーネさんは数十年・・いや数百年に一度選ばれる竜族の妻となる資質を持つ「龍の巫女」に選ばれました」
「オロチは妻となったミレーネさんを深く愛し、程なく二人の間に女の子が生まれましたそれが・・・此方に居る紅です」
「紅が生まれてから暫くは家族3名の幸せな時間が経過して行きました・・・しかしある日ミレーネさんの元に一通の連絡が届きます」
「それは、日本から海を経た北にある大陸の半島にある魔都に住む家族から、孫、姪の誕生祝いをしたいから会わせて欲しいという物でした」
「ミレーネさんは、家族からの連絡に何の不安も無く幼い紅を連れ指定された場所に遭いに行きました・・・この事をオロチに相談しなかった事を恐らく後悔したとこでしょう」
俺が此処まで説明すると、傑さんの表情が曇る・・・
「まさか・・・それが・・・・」
「はい、それが魔族の・・・ミレーネさんの妹であるザビーネの仕組んだ罠だったのです、ザビーネは自分の傀儡として操った人間数十名をけしかけミレーネさんと紅を拘束しミレーネさんから幼い紅を奪い去りました」
「そ、そんな・・・そんな酷い事を・・・母親から子供のを奪うなんて・・しかも自分の姉に対して・・」
泣き崩れ雪菜さんの胸で泣き崩れる美月さん・・・雪菜さんの表情も悲痛な表情が見て取れる・・・
「ミレーネさんは当然、娘を奪い返す為に必死に抵抗しました・・・・しかし力及ばず人間達とザビーネにより害されてしまいます・・・」
「!?くっ・・血を分けた家族を・・姉妹が・・なんて非道な・・」
悔しそうに俯く十文字さん・・・左の腰に帯びた剣の柄を左手で強く握っている・・
「そして、ザビーネは拉致した紅に対し酷い拷問を行います・・・そして紅の身体から竜族の血液を大量に抜き取り瀕死状態に追い込みます」
「狂ってる・・・自分の姪だろ?何でそんな酷い事が出来る!?」
傑さんも雪菜さんの胸に寄りかかり泣いている美月さんの肩に手をおいて宥めながらも怒りの籠った表情で唇を噛む
「・・・・竜族の血です・・魔族が求めていたのは希少な竜族の血だったからです」
「竜族の血を得て魔族は何をしようとしている」
その場で唯一冷静に話を聞いていた犬飼会長が口を開く
「魔族は竜族の血を摂取する事で、爆発的な力を手に入れるつもりです・・・実際に富士山頂で戦ったザビ―ネは奪った紅の血を自ら接種する事で、オロチの捨て身の秘策、零龍化 ノア・ドラゲードすら凌駕する魔竜人 デモ・パンデモニウムに変身しオロチも俺たちも蹂躙しました・・・」
「あの竜王オロチが・・・・蹂躙・・・」
真理恵さんが青い顔で震えながら呟く・・・そんな真理恵さんの様子を見ていた犬飼会長が再び俺へ確認する様に尋ねる
「つまり、魔族は竜族すら手を出せない程の力を手に入れた・・・そういう事なのか?」
俺は静かに犬飼会長の質問に対し頷いた
「・・・・・これは・・・この地・・いやこの国だけでなく、全世界を巻き込む大きな深い闇の渦になるやも知れぬな・・・」