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第108話 眼には目を、歯には歯を、呪いには呪いを

〇富士山山頂  火口付近





由利さんの周りに展開していた聖域結界は雫によって既に解除されており、地面に突き刺さった布津御霊からの力場は停止している


「五月・・・由利さんの様子は?」


由利さんを抱き起している五月に声を掛ける・・・・


「・・・・進君・・・」


由利さんは力なく弱々しい声で俺の名を呼ぶ


「由利さん、無事ですか!?そ、その・・・・肉腫は・・・」


由利さんは俺の質問に対し無言で五月が被せていた上着をずらした・・・・


「そ、そんな・・・」


そこには元の小さな黒子程度の大きさにはなっていたが、未だにザビ―ネの残した肉腫は由利さんの乳房に残っている


「やはり、ザビーネを仕留めないと・・・」


俺はザビーネを取り逃がしてしまった事への悔しさで握った拳に爪が食い込む・・・


「うっっ・・・由利ぃぃぃ」


状況を察した星奈さんが、耐え切れずに両手で顔を覆い泣き崩れる


そんな星奈せんに向って優しく微笑む由利さん


「泣かないで星奈・・・これも運命なのよ・・時夜の所に嫁ぐと決めた時から私は人生を諦めたの・・それなのに皆に迷惑をかけてしまって・・」


「由利さん・・・・」


成す術が無く掛ける言葉も見当たらない俺たちは、唯々自分たちの無力さを痛感していた


「主様」


そこに紅との話が終わった、オロチが紅を伴ってやってきた


「貴方が・・・竜王オロチなのですね・・・」


由利さんは力なく上体を起こすとオロチに向って頭を下げる・・・・


「貴方にも色々と迷惑をお掛けしました・・・・そしてこれは私からのお願いなのですが・・・迷惑ついでに聞いて頂けますか?」


「・・・・伺いましょう」







「私に止めをお願いします」


「「「!?」」」「ちょっ!!由利なに言ってんの!!」


「・・・・・」


「由利さん!!そんな事は俺が許さない、オロチ俺からの命令だ!!」



「・・・・・そう・・オロチは今進君の従者だったんだよね・・・じゃそこの赤龍・・紅さんだったかしら・・・貴方にお願いしたいの」


「由利ぃ何でそんな事言うの!?」


由利さんの肩をゆすりながら必死に訴える星奈さん・・その肩に置かれた手に自分の手を重ねる由利さん


「星奈・・・このまま私が生きていたら又魔族に利用されて、私の大事な人たちを傷つけてしまうかもしれない・・・私にはそんなの耐えれない・・だったら」


由利さんは星奈さんに向け優しく微笑む


「でも・・・でも!!!」


「なんとか・・・・何か方法は無いのか・・・何か・・・・」





「何とかなるかも知れません」


その時オロチが口を開く


「!?」「オ、オロチ!!本当か!!何とかなるのか?!だったら頼む!!俺に出来る事なら何でもする!!由利さんを助けてくれ!!」


俺よりも更に大きいオロチの両腕を掴み必死に訴える


「この地に施された、人族のもたらした宝珠の力とそこに刺さってる宝剣の力・・・・それと私の竜族の呪いの力を使えばあるいは・・」


「の、呪い!?呪いなんか使って由利さんは大丈夫なのか!?」


「普通なら只では済まないでしょう・・・竜の呪いは血に宿る呪い・・血液中の金属・・人族で言えば鉄ですが、その鉄を腐らす呪いです」


「そ、そんな事したら由利が!!」


星奈さんは由利さんを庇う様に両手を拡げオロチを睨み付ける


「話を最後までお聞きください、竜の呪いは血に宿る・・つまりお嬢さんに埋め込まれた肉腫にも有効・・・そして魔族の肉体に宿る金属はマグネイト(魔鉱石)」


「つまり、そのマグネイトだけを腐らせて肉腫を無効化するってわけね」


雫の説明にオロチは黙って頷く


「ただ竜族の呪いは竜族に流れる金属の血よりランクの低い金属全てに効果を発揮してしまうので、マグネイトだけをピンポイントで狙うには呪い撃ち込んだ後に私の力を封じる必要が有ります」


「!?なっそれは!!」


「つまり、由利さんに呪いを掛けた後、この地に展開された晴明の宝珠と布津御霊の宝剣によって自らを封印すると・・・」


「そんな!!父上!!」


雫の話に動揺する紅の頭を優しく撫でオロチは俺に向って膝をつく


「主様・・・この先も貴方の旅にお供したかったのですが・・・これが私の使命の様です・・・お許しください」


「オロチ・・・・」


「由利と言ったか・・・竜族の呪いは強力だ放置すれば進行してやがては、人間の血にも伝染する・・・一年・・・いや半年・・もって半年だ」


オロチは俺に向き直ると


「主様、それまでに・・・」


「あぁ・・・解ってるそれまでに必ずあの魔族を・・・ザビーネを仕留める!!」


「・・・・それと主様先ほどご自分に出来る事は何でもと仰られていました・・是非ともお願いしたき義が御座います」


オロチは背後に控えていた紅の背中を押して俺の前に立たせると





「どうか娘を奥方様方の末席にお加えください」

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