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第77話 守りたいもの

〇笹本リゾートホテル 従業員部屋 101号室(進の部屋)



ピロロ・・・ピロロ・・・


「・・・・ん・・・何だろ・・・」


従業員寮の部屋に備え付けの内線電話が鳴り響く


「・・・はい・・龍道ですが・・・・」


「進さん、お休みの所大変申し訳無いのですが至急ロビーにいらしてもらえますか?進さんへのお客様がお見えです」


電話を掛けて来たのはフロントの受付で働いてるコンシェルジュの女性の方だった


「??僕にですか??」


五月と雫なら俺に直接電話してくるはずだし、星奈さんや由利さんも同様だ・・・誰だろう?


そんな事を考えながらもお客さんを待たす訳にいかないので、手早く服を着替え顔を洗い歯磨きをしてロビーに向かうと


「あ、進さん彼方にお待ちです」


コンシェルジュの女性が少し緊張した様子でロビーの奥にあるソファーへ案内する、ソファーから覗く後頭部が白髪なので年配の方の様だ・・・


「龍道 進です・・・私に御用が・・・って・・・貴方は!?」


座ったまま振り返ると其処に座っていたのは、犬飼 源蔵 総支部長だった


「犬飼会長!?」


源蔵さんは、軽く頷くと俺に目の前の席に座るように促したので、頭を下げ恐る恐る腰を下ろす


「何を驚いている、2、3日中に此方に来ると伝えておいたはずだが?」


杖を支えにして俺の方を見る眼力がとんでも無い圧力だ・・・確かにたた者では無い


「ん?ああそうかこうして面と向かって話をするのは初めてか・・・まぁ儂の方は君の事をある程度調べておって知った気になっていた・・」


「儂はハンター協会の総支部長にして会長を務めておる、犬飼 源蔵だ、君には孫の真理恵の危機を何度も救ってくれた事、本当に感謝しておる」


そういうと小さく頭を下げてくれた


「い、いえ・・僕も・・私も真理恵さんには何度も助けて頂いてますので、こちらがお礼を言いたい位です」


俺は負けじとより深く頭を下げる


「まぁお互いの自己紹介はこの辺にして、前に電話聞いた君の話・・・詳しく聞こうじゃないか・・」


俺は源蔵にこれまでの事を詳しく説明する


「僕は、前の世界では冴えないコンビニ店員で本当になんの取り柄もないアラサーのオッサンでした、趣味と言えばドラゴンロードというRPGゲームしか無くそんな生活を15年近く続けていました」


「そんなある日、僕はゲームの中ですすむんと名付けたキャラクターのレベル・・・言ってしまうとキャラの強さですが・・・それを限界まで上げました・・15年目の事です、それが最高到達点でそれ以上の成長は見込めないと思いゲームの話を進める事にしました、その中でゲームに登場するヒロインを決める事になり僕はさつき、しずくと、名付けゲームを開始しました」


「しかし初めて直ぐに強制的な戦闘に突入してすすむんはヤラれて死んでしまいます・・・普通は街の教会で復活するんですが何故かゲームが壊れてしまって操作が出来なくなり僕は失意の中諦めてコンビニのバイトに向いました、そこで一緒にバイトしていた五月と雫が暴漢に襲われている所に遭遇し、なんとか助けようとしたんですがナイフを手にした暴漢にお腹を刺され・・・・・気が付くと」


「この世界に来ていたという話だったな?」


「はい・・僕も最初ここが異世界とは気付きませんでした、それほどまで元の世界と何からなにまで同じでした・・・なにより病院で目覚めた僕も目の前には五月と雫が居て前の世界と俺への扱いが違い過ぎて夢だと思っても居ました」


「しかし二人と話をしていく内に彼女等は龍道 進に命を助けてもらったと語ってくれ、そこで僕は気づきました彼女等を救ったのはこの世界の龍道 進であって僕では無い事に」


「その事をなかなか言い出せない内に、角ハンターのパーティーに参加して羽生さんを救うクエストに参加しました・・・しかしそこで角さんともう一人の盗賊のハンターの方が犠牲になってしまい・・無我夢中で人狼と戦い何とか他の方々と街に戻る事が出来ました」


「しかしその後、協会支部に侵入した人狼によって五月と雫が瀕死の重傷を負ってるのを見て僕の中の何かが切れる音がしたと思ったら頭の中に声が聞こえそれに答えると、なぜか僕がドラゴンロードの中のキャラが特技で使用していたスキルをこの世界で使用できるようになっていました・・・その力も受け継いだ様であれだけ絶望していた人狼を完全い抑え込んでいました」


「なるほど・・・君の中の得体の知れないその力はこの世界でも君の住んでいた世界の物では無くゲーム中の力だと・・そういう事か・・」


「それともう一つ・・・人狼から得た情報なので信憑性の程は分かりませんがどうやら人狼の様な力の強い魔物は僕の居た世界の人間の負の感情・・・奴はカルマと言っていましたが・・強いカルマがこの世界の魔族により具現化した物だと言っていました」


「ふむ・・・それは興味深いし危険な情報だな・・・その情報を公表すると君の住んでいた世界そのものがこの世界の敵と認識されその世界の住人だった君自身にその悪意が向けられるかもしれないな・・」


確かに源蔵の言う通りだ・・・そこまで考えても見なかった・・・これからはこの話をする相手は慎重に選ぶ必要があるだろう・・


「して、君はどの世界の龍道 進なのだ?」


「・・・上手く説明出来ないのですが僕は元の世界の龍道 進でありこの世界の龍道 進でもあります、そのうえゲームの中のすすむんでもあるとこの間知りました」


「・・・・・確かにその話を理解するには、我らの知識が乏しすぎるな・・・君自身に我等への悪意が無いことは分かる・・今はそれで良しとするか」


「君の事は概ね理解した、それで魔物の氾濫の事とオロチの事を聞こうか・・・・」


「はい・・・まず俺の知りえた情報をお話します」


「ふむ・・・聞こう」


「犬飼会長が参加された富士防衛戦です・・・その際に人類に牙を剥いたオロチですが何故オロチがそのような行動に出ていたのか・・・それは人類がオロチの娘と奥さんを攫い奥さんを殺害し幼い娘さんに酷い拷問をして瀕死の重傷を負わせたからだったのです」


「!?・・・それは・・本当のことか?」


「・・・証拠は何もありませんが、事実だと思います・・・それとオロチの・・竜族の妻になるべき女性は龍の巫女と呼ばれ数百年に1人の周期で人類もしくは魔族の中に生まれるようです」


「・・・初めて聞く情報だ・・・竜の巫女か・・しかし我々が知らないと言う事は・・・そのオロチの妻というのは・・・」


「はい・・魔族から選ばれました」


「なるほど・・・・そのオロチの家族を我等人類が害した為オロチの怒りを買ったわけだ・・・」


「その通りです、しかしオロチの奥さんは殺害されたと思われていましたが、実は生きていたみたです」


「!?なに?」


「生きてはいましたが魔族としての力を失い山道で彷徨っていた所を、通りすがりの老夫婦に助けて貰ったと言う事です、そして体の傷が癒えた彼女は・・・・源蔵さん達と共に富士防衛戦に参加してます」


「!?なっ・・・それは・・・まさか!!?」


「はい・・・サクヤ隊の中の女性の一人です・・・」


「何という因果か・・・そのオロチが魔族の暴挙により再び人類に復讐を果たそうと言うわけか・・・いるか解らないがもし、神とやらが見たら人類こそが諸悪の元なのだろうな・・・」


源蔵さんは小さく微笑み溜息をもらす


「会長・・・違います・・・確かにオロチの娘さんや奥さんを攫った人たちは許されない事をしたと僕も思います・・・しかし今を生きる人にその罪を負えと言うのはあまりに理不尽」


「・・・・・・・・」


「僕はこの町に来てまだ日も浅いですが、色んな人に出会い・・・そして別れました・・俺は自分に何が出来るか・・いや・・出来る事は全力でやりたいんです・・」


「・・・・・・・・」


「そして今俺のやりたい事は、この町の人を・・家族を友人を・・皆の日常を守る事です」
















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