〇熊井旅館 進の宿泊してる部屋
進は星奈さんと由利さんにこの町で生活してみようと思ってる事を告げると、二人と途中で参加してきた月奈さんにお祝いされた
月奈さんからそっと渡された連絡先のメモを星奈さんに見つかり、ビリビリに破られ親子の修羅場を味わうというハプニングに白旗を上げ由利さんにアシストしてもらい、なんとか先に自分の部屋に戻ることが出来た
「ふふっ陰キャでゲームしかして来なかった、コミュ症の俺がこんなに人に囲まれて日々を過ごせてるのは何んか不思議だな」
忙しい日常に辛い事も有ったけど、今を大事に生きていく・・
「もう一人の進とすすむんにガッカリされないように前を向かないとな・・・ん?」
ふとテーブルの上に置いていたスマホのランプが点滅してる・・着信?メッセージ?
恐る恐るスマホの画面をみると幾つもの着信とメッセージの履歴が届いていた
「ヒエェェ―――全部五月と雫からだぁ・・・」
進は恐る恐るメッセージを開く・・・・
時間を少し遡り・・・
〇鳥居スタッフサービス 本社 第一応接室
「報告内容は確かに確認しました、岩城パーティーの拠点防衛クエストクリアおめでとう御座います」
出向してきてる協会支部の職員がクエストの報告書を受け取り内容を再確認してる
「ところで報酬で御座いますが、このネームド 個体名「ベルセルク」はコボルドキングの変異種と言う事でよろしいですか?」
職員の質問に坂野と木津は岩城の方を見る、岩城は神妙な顔をして少し考えてる様だ・・・ちなみに橋本は昏睡がら目が覚めておらず命に支障は無いが脳へのダメージがまだ完全に癒えて無いらしい
同席している傑は何か思い詰めてる岩城に声をかける
「言いにくい事でもあるのですか?」
岩城は職員と傑の顔を見渡すと深く深呼吸して重い口を開く・・・
「まず、協会の方で確認してほしいが以前支部を強襲したというウエアウルフが何か重要な物を持ち出していたと言う事はないか?」
協会の職員は首を捻りながら黙って首を振る
「そうか・・・ではアレはどういう意味だったんだ・・・」
「申し訳ない岩城さん解る様に説明してほしい」
「そう・・だな・・まず今回のクエスト中、魔族の女と接触した」
「「!?」」
「あの時、魔族が戦闘に加わっていたら一瞬で俺たちは灰になっていただろう・・でもそうはならなかった」
「つまり、接触はしたが戦闘には至らなかったと?」
「ああ、奴は言っていた、この町の支部に送り込んだペットの忘れ物を取りに来たついでだと・・思うにペットというのは先日支部を急襲したウエアウルフの事だと思う」
「・・・気になりますね・・私は協会に確認してまいります・・」
それだけ言うと職員は電話をしながら部屋を出て行った
職員が居なくなった事を確認した岩城は傑を見て告げる
「あと、傑お前に言っておくことがある・・あのネームドの化け物はコボルドキングに魔族の女が手を加えて変身したものだ」
「!?本当ですか?魔族の力はいまだ謎が多くて我等人類には魔法の威力が人類のそれより遥かに強力だと言う事だけ・・まさか魔物を変身させる力があるとは・・・」
「まぁあれはあの女の魔族特有の力かもしれない・・だが警戒はしておくべきだ・・もしお前の言う通り魔族に魔物を強力に変身させる力があるとすれば・・・」
「今の下級魔物も・・手に負えなくなる・・・と言う事ですね」
「ああ、あれは中級だったコボルドキングが明らかに上級に匹敵する力を得ていた・・・ただこの事を口外すれば・・」
「町は・・・いや国全体が大混乱だな・・」
「まぁこの件はお前に預ける、協会に報告するも秘匿するもお前が決めろ」
傑は考え込みながらも首を振る
「全く・・面倒な事に巻き込んでくれまね・・分かりましたこの件は私が預かります」
「ああ、助かる・・それと此れはお前にとっても嬉しい事じゃないかな?」
「ん?嬉しい事?」
「ああ、あの戦闘においてベルセルクを討伐したのは俺たちでは無い・・・お前の娘と蜂須賀の娘の二人だ」
「なぁ!?冗談でしょ!?あの二人は学生でまだBランクですよ?あり得ないでしょ」
「まぁそうなるよな・・・だがこれは事実だ・・ここに居る俺を含め3人は戦闘不能になり、まさにに瀕死の状態だった・・・気づいた時には戦闘は終了しており倒れてるベルセルクの前で疲れて眠る二人の姿があった」
「・・・それは・・・この件も私に任せて貰えませんか?後で二人に話を聞きます」
「ああ、そうしてやってくれ・・それと・・・助けてくれてありがとうと・・そう伝えてくれ」
そういうと岩城たちは席を立ち部屋を出ようとしていた
「ま、待ってくださいまだ協会からの報酬の分配について話が・・」
「ふふ、俺らにその報酬を受け取る資格はないよ・・娘達にでも渡してやってくれ・・それじゃまた依頼する時は頼むぜ」
そう言いうと岩城達3人は部屋を出ていった
「・・・五月と雫君が・・・まさかな」
〇東京 都心高層マンション最上階 蜂須賀邸
五月と雫は蜂須賀メディカルクリニックで検査を受けたあと、雫の家にお泊りを兼ねて遊びに来ていた
「傑も協会支部があの状態だからって自分の会社内に分室を作るとは・・・ある意味商魂たくましいな」
「小五郎小父さん!感心してる場合じゃないわよお陰で母さんも会社にかんずめ状態であれじゃブラックよブラック!」
五月の目の前のソファーに腰を掛けてるのは、蜂須賀メディカルクリニックの医院長にして雫の父親である、蜂須賀 小五郎だ
蜂須賀 小五郎・・・(旧姓:竹中 小五郎)黒髪を短く切り揃え、知性を感じる眼鏡とその奥の優しさを感じる細目、身長は高めで進程ではないが180㎝近くある、が最近太って来ており、中年太りを本人は気にしてる
治癒師の名家の一人娘である、蜂須賀 雪菜に一目惚れされ猛烈で過激なアタックの末、交際、結婚、家の跡を継ぐため蜂須賀家に婿入りする
その実力は折り紙付きで、神医と呼ばれた総司の弟子にして、その神医の再来と呼ばれるほどの治癒師・・クラスは上級の賢者で同じく賢者の雪菜と夫婦賢者の偉名は治癒師の世界で知らない者は居ない
「ははは、ブラックか~まぁ傑と美月さんなら格安で治療してあげるよ」
【パシッ!】「ちょっと!パパは冗談のセンスが無いんだから黙ってて!」
「ふふ、小五郎さんも久しぶりに五月ちゃんが泊まりにきてくれて浮かれてるのよね~」
そう言いながら晩御飯の後片付けをしてる雪菜さんと雫を見ながら小五郎小父さんは肩をすくませ苦笑いをする
片付けが終わり4人はリビングで今日有った事を話していた
「そうか・・魔族とはな・・・それにしても岩城さんは流石だな実力は未知数だがネームドを初見で討伐するとは」
五月と雫はお互い顔を見合わせ頷いた
「パパその事なんだけど、実はベルセルクを討伐したのは私と五月なの・・公にしてないけど」
「!?それは本当なのかい?」
「ええ、ここだけの話にして欲しいんだけど・・・私と五月はクラスチェンジして賢者と呪術師に昇格したわ」
「なっ!?クラスチェンジィ!?お前らの歳でクラスチェンジなど・・聞いたことないぞ!?」
「ねぇ本当なの?だとしたら上級の治癒魔法を使えるのよね?」
「ええ、我求めるは神聖な癒しの風、聖櫃の光輝く壇上に、奇跡の柱を奉らん、エクスヒール」
雫が手をかざすと、雪菜の身体が光に包まれた
「驚いた・・・確かに上級のエクスヒールだ・・しかしどうしてだ?」
「実はこれだけじゃないの・・私らには専用のスキルがある・・・みてて」
雫は席を立つと目を閉じて両手をその豊満な胸に添える
「龍道 雫の息吹」
雫の足元が光り周囲に広がる・・そして五月・雪菜・小五郎を光が包む・・・
「こ・・これは・・範囲治癒魔法!?・・初めて見る・・それに・・雫の目が七色に光ってる・・」
「雫・・・これって龍道 進さんの竜の息吹となんか関係が?」
「パパ、ママ、私、すすむん・・龍道 進の事が好きなの・・・御爺様にもこの件は伝えて了解を貰ってる・・そして五月も同じく進の事を愛してる」
「雫・・・それは・・・龍道さんは・・もう」
「ママ、この力を授かった時に私と五月は龍道 進のヒロインだという声を聴いた・・そして私のスキルの名前、五月の雷魔法の詠唱に龍道姓が含まれてるのはきっと私らが進に必要だからだと思うの」
「そう、私らは進のヒロイン・・私らが望んで彼のヒロインになったの・・だから私らは進を追うわ、地の果てでも魔族の住む魔街でも」
その後リビングで進との馴れ初めや今まで起こった事を2人は両親に話した
〇雫の部屋
「ねぇこれ・・進からのメッセージ」
「私らの苦労も知らないで女狐達と仲良く観光とか・・・縛ってお仕置きかしら」
二人は雫の部屋の超キングサイズのベッドの上でスマホを確認して進に連絡や通話を試みるが・・・
「全く繋がらないし既読にもならない・・・」
「ふふ・・いい度胸じゃない、私らを無視して他の女と宜しくしようとか許さないだから・・」
「五月、一緒にメッセージを入れよう」「なんて入れるの?」
〇熊井旅館 進の宿泊してる部屋
進は言いしれぬ恐怖を感じながらメッセージを開く
『浮気したら・・・ちょん切る・・・龍道 雫 & 龍道 五月 より』