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第54話 プロの背中から学ぶべき事

〇東京都心 南口ゲート付近


バリケードの奥には数名のマジシャンとヒーラーが結界を生成する為に呪文を詠唱している、仮設の待機所には交代要員が休んでいるのだろう


ガーディアンが細かい指示をマジシャン、ヒーラーに指示をして結界に穴が出来ない様に配慮をする


「たっく・・・結界装置が機能しなくなってヒーラーとマジシャンが駆り出されて私らハンターもいい迷惑だよ」


そう横でつぶやく木津さん、五月と雫は理由を知ってるだけに何も言えない


「アンタらも学生で良かったじゃん、現役だったら駆り出されてこういうとこに缶詰だよ」


木津さんは冗談で言ってるのか真面目な話をしてるのか判断できない様な事を言うとガーディアンと打ち合わせしている岩城さんの元に合流した


「思ってたより大変な事になってるわね・・・」


「ええ、私らが日頃どんだけ結界の恩恵を受けて生活していたか・・・身に染みるわね」


そんな事を二人で話してると、二人の肩をポンポンと叩き二人の間から顔をニヤニヤした顔をのぞかせる橋本さん


「二人とも緊張してるの?大丈夫おれが魔物の気配をちゃんと探るしいざとなったら二人のナイトになっちゃうよぉ~」


軽薄な笑顔でウインクするが・・・


「お構いなく」「結構です」


二人は肩に置かれた橋本の手を払いのけ岩城達と合流する


「ちぇぇぇ」「橋本・・あんたまた木津にボコボコにされるよ?」


苦笑しながら口を尖らせた橋本の横で岩城と一緒に打ち合わせしてる木津を指さす坂野さん


「女将さん・・やめてくれよぉ~元カノだからってメスゴリラは勘弁だって」


「まぁそう言うことにしとくよ・・・ほらリーダーが呼んでる行くよ」




「坂野、橋本来たか・・作戦を簡単に説明する」


合流したメンバーに岩城が作戦を説明する


まずチームの戦場は舞浜にあるテーマパーク跡地になる、結界装置が機能していた時は大勢の人が訪れていた隣県にある日本屈指の大型テーマパークだった


しかし今は結界装置が機能しておらず、隣県の結界装置は舞浜は結界範囲外であり丁度ディボットスペースになっている


「私らがよく家族で行った場所が戦場になるのは・・なんか複雑よね・・・」


「五月・・目的を忘れないで、私らはここで力を付けていかないと」


「分かってる・・・私は止まらないって決めたんだから」


「ヒヨッコ共何を無駄話してる!フォーメーションが崩れてるぞ!遅れるな」


岩城の激が飛び慌てて歩みを早める


「ここから索敵を欠かすなよ橋本」


「あいよぉぉ親ッさん」


テーマパークの入り口に侵入するパーティーメンバー、前衛に岩城さん木津さん、中央に五月、左翼に雫、右翼に坂野さん、後方で背後を守るのは橋本さん


「親ッさん、そこのショップの中に魔物の反応・・3体」


先程の飄々とした雰囲気から一転し緊張感のある雰囲気を纏う橋本さん


「木津、お前は右から行け俺は左から回り込む」


木津さんは両手剣を構え、岩城さんは両刃の大きな斧を構えショップの入り口に左右から回り込む様に近づく


【パリンッ】窓ガラスを割り右の木津さんの方へ3匹のベイルウルフが飛び掛かる


「なめるなぁぁぁスマッシュ!」


大剣を横に振り抜いた木津さんは飛び掛かったベイルウルフ2体を同時に真っ二つに切り割いた、しかし木津さんの左を一体が突破し中央の五月めがけて突進する


「橋本ぉぉ」


岩城の掛け声と同時に橋本さんは大きく跳躍すると鋭い牙を見せ五月に飛び掛かる直前にベイルウルフの頭部を直上からナイフを下向き構えながら突き立てる、ベイルウルフは頭部をナイフで貫かれ地面に縫い合わされる


「あ、有難う・・御座います・・」


五月のお礼にも反応せずに橋本は木津さんに怒鳴る


「おいぃメスゴリラぁ何、外してんだぁぁちゃんと仕留めろやぁぁ」


橋本さんの罵声に木津さんも反論する


「ああぁん!2匹は仕留めたろうがぁぁお前こそ、ガキ相手に何いきってんだぁ?てめぇなんか相手にされるか!鏡見ろ!」


急に険悪になる二人に少し気まずくなる五月と雫の元に坂野さんが寄って来てそっと耳打ちする


「気にしないで、あの二人はあれで正常運転なの、少し前に別れたみたいだけど、ベッドの上ではラブラブなカップルらしかったみたいよ」


ウインクしてそう話してくれた、人は見かけによらないなと五月と雫は顔を見合わせて苦笑する


「お前らぁいい加減にしろ!まだ序盤だぞぉ早くフォーメーションを組め」


岩城さんが左右の分岐路の前で左右を確認しながら後方のメンバーを怒鳴りつける、「「ふんっ!」」お互いがそっぽを向き取り合えずその場は収まったが・・・



「チャラ男ぉぉ索敵が出来てねぇじゃねぇかぁ!」


「てめぇこそ壁なら壁の役割を果たせよぉぉぉ!」


奥に進につれ魔物のエンカウント頻度は上がっていく、その都度連携で切る抜けるが橋本さんと木津さんはお互いを罵りあうだけだ


「まぁ鳥居さんも蜂須賀さんも気にしなくていいんだよ、ああ見えてお互いの足りない所を補ってるのよ、喧嘩する程仲が良いっていうからね」


二人の掛け合いを見てると確かにお互いの出来る範囲を理解して行動してるように見える


「あれで橋本さんは木津さんの死角になる側の索敵は完璧にこなしてるわ・・あれじゃ確かに他まで索敵の範囲を広げられないわね」


「木津さんも橋本さんの攻撃範囲が届く距離の魔物以外は体当たりしてでも止めてる・・・もしあの体当たりでスタン出来てなきゃ橋本さんでも一人で仕留められなかったよ」


五月と雫は目の前で繰り広げられる歴戦のチームの戦い方に魅入っていた


「あれって・・これからの私らの戦い方のヒントにならないかしら?」


「雫もそう思う?私も同じこと考えていた」


最初の分岐を右に回り移動し中央のキャッスルに到着する、ここで雫と坂野さんで手分けして治療を行う


「へぇ流石、Bランクヒーラーね見事としか言えないわ」


坂野さんから純粋に賞賛されたが、雫の顔はすぐれない


「雫?どうかした?プロのハンターのヒーラーに褒められたんだからもっと喜んでも」


「違うわ・・坂野さんはCランクヒーラーだけど相手の傷の具合で治癒魔力を抑えたり強めたりしてる・・MPを無駄に消費しない様に・・」


「確かに・・・必要な所で必要な量を使う・・でなきゃ長期戦になった時にMP枯渇して足手まといになる・・私らはそれを知ってる」


ウエアウルフと初めて対峙した市街戦の事を思い出す、あの時も五月も雫も自分たちのポテンシャルを過信しMP枯渇して結局最後まで持たなかった


「ふふ・・このパーティーはアタリだわ・・学ぶことが多い・・私らは必ず強くなるわよ五月!」


「ええ、当たり前でしょう!」


二人は不敵な笑顔を浮かべ突き出した拳を突き合わせる、その時


「親ッさん!!!デカいのが隠れてるぅ!!」


「!?全員警戒ぃ!!フォーメーション!」


キャッスルの入り口が吹き飛び中から二足歩行で歩いてくる大型の魔物が現れる



「あれは!?まさか!!コボルドキング・・・・中級の魔物だ・・」


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