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第53話 ヒロイン達の初討伐ミッション

〇東京都内、鳥居SS(スタッフサービス)本社


5階にあるミーティングルームに五月と雫は魔術ローブとヒーラー用のローブを其々が身に纏い手には魔術発動速度を高める為のスタッフ(杖)が握られていた


本来なら人材を派遣する側の鳥居SS側が協会の支部に出向いて打ち合わせをするのだが、協会支部が今は修繕中という事もあってか、今は協会所属のハンター数名が鳥居ビルに訪れて一緒に打ち合わせに参加していた


「ですから、今は南口へ侵入しようとしてるベイルウルフ (角つきの狼)の群れを掃討するのが先決だと申してます、そちらに人員を5名ないし6名派遣いただきたい!」


50才の手前だろうか、顔中に古傷の痕が目立つ背は低いが筋肉質な歴戦のハンターが机を叩き集まってるメンバーを睨み付け怒鳴る


「待って下さい!南口にはもう一段階、防護壁を展開出来ると聞いてますやはり此処は万が一を想定し住民の非難ルート上である西口のモンスターを掃討する事に人員を割くべきです!」


深緑で使い古したローブを身に着けた、丸眼鏡で細身の長髪魔術師が筋肉質なハンターを真っ向から睨み返し反論する


五月は中央で腕を組み目を閉じて黙って様子を見守る傑を見つめる、五月と雫がこの場に居る理由は昨晩のやり取りまで遡る



就寝前にあった雫からの電話だった


『五月、ご両親とすすむんの事で何か話した?』


『したけど・・・いざとなったら進を全力で助けるとは言ってくれたけど具体的にはどうするとは何も言って無かったわ』


『そう・・・私の方はお爺様とお話しをさせてもらって支援をお約束下さったわ』


『本当に!?御大が私らを支援してくれるなら、協会の黒狼(源蔵)も迂闊に手を出せないわね!』


『ただ・・・』


『ただ?何か悩み事?』


『ええ、あの協会の一件で私らは正直何も出来ず皆の足を引っ張る事になった・・お爺様は仰ったの、すすむんは大きな運命を背負っていると・・・』


『そうね・・・それは私もそう感じる・・』


『そうして私らもそんな、すすむんと共に歩むならば覚悟して嫁ぐが良いと』


『へ?嫁ぐ!?・・・そんな・・まだ早・・』


『五月・・今はそこに動揺してる場合じゃない・・・言いたいのは私らが今のまま、すすむんの元に身を寄せてもきっとすすむんの負担になる・・ウエアウルフを前に何も出来なかった私らが傍に居たらきっとすすむんは・・・』


『・・・・だったら・・だったら私らが強くなるしか無いじゃない!足手まといじゃなく逆に進を守れる位に!』


『ふふ・・五月とは性格が全く違うのにこういう時は意見が合うのね・・私も全く同意見よ』


『そうと決まれば明日学校に課外活動申請を出して鳥居スタッフサービスでお手伝い出来る様にお父さんに話する!』


『ええ、お願いするわ、こと課外活動で討伐系のミッションの場合うちの病院では手を出しようが無いから』


『任せて!早速、明日の放課後からでも参加出来る様に頼んで来る!!』


そう電話を切り終え、五月と雫は渋る両親を蜂須賀 総司の名前を最大限利用して説得し今に至る


傑は年配のハンターをチラッと見る、腕を組んで目を瞑り自分の主張を一歩も譲らないと頑なになってる


その時入り口に近い部屋の角で立って話を聞いていた五月が手を上げる


「私と蜂須賀 雫が南口のミッションに参加します」


年配のハンターはその声の方をチラッと横目で確認する


(ほうぅ・・・・)


何か思うところがあるのか、急に席を立つと


「ならメンバーは決まりだ、時間が惜しい直ぐに出発だ」


その言動に驚く傑


「ま、まて!五月!?分かってるのか!?これは遊びや練習ではない、実戦だぞ!?岩城さんも、もう少し話を」


岩城と呼ばれる年配のハンターは傑の方をちらっと見ると


「稀代の呪術師 鳥居 傑の娘と神医 蜂須賀 総司御大の孫か・・なるほど・・いや、儂に異論はないあの二人と儂らのパーティで南口の防衛に向かう」


「なっ!?っ・・・・分かりました・・・ではその様にお願いします・・・」


岩城は俯く傑を見下ろし小さく呟く


「虎の子は、獅子になるやも知れんぞ・・」


「娘達を・・・よろしくお願いします・・・・」


岩城は傑のお願いに対し返事をすることなく会議室のドアをあける、部屋から出る前に


「ヒヨッコ共いくぞモタモタするな」


五月と雫は少し緊張しながら自分たちのスタッフを強く握り、岩城の言葉に頷き後について行く




〇鳥居SS本社ビル前


岩城と共にビルの外にでると、そのタイミングで大型のワゴン車が玄関前に停車する


「リーダーその子達が鳥居スタッフからの派遣ハンターですか?随分若いですね?」


岩城を出迎え後部座席のスライドドアを開けた、上腕二頭筋が隆起していて如何にも火力タレント持ちの女性が尋ねる


「木津、このヒヨッコ共の面倒を見てやれ・・・学生だそうだ」


岩城はそう言い捨てるととっとと車に乗車する


「え?本気ですか!?鳥居スタッフは何考えてるんですか!?」


「黙れ・・・良いから早く出せ」


「・・・・・了解です・・・・アンタらも・・・早くのりな」


明らかにガッカリされた目で見られながらも大人しく後部座席に乗る


木津と呼ばれた女ハンターの運転で町の南口を目指す


「私は、聖堂女学院 2年 鳥居 五月 マジシャン Bランクです」


「私も 聖堂女学院 2年 蜂須賀 雫 ヒーラー Bランクです」


【ヒュー】前の席でダッシュボードに足をのせて態度の悪そうな男のハンターが口笛を吹く


五月も雫もすこし不快に感じたがあえて反応はしなかった


「そうですか、お名前から呪術師 鳥居 傑の娘さんと神医の親戚のようですね・・私はチーム岩城でヒーラーをしてます、坂野です、ランクはCです」


そう頭を軽くさげた女性の年配のハンターは温厚そうな笑顔で挨拶をしてくれた


「五月ちゃんと雫ちゃんねぇ~俺 橋本ぉ~27歳で独身の盗賊だよぉ~ランクはBねぇ絶賛婚活中だよぉ~」


先程口笛を吹いた男は細身のやせ形で口元をスカーフでかくしていて覗いてる目元は如何にも軽薄そうだった、後ろを振り向き五月と雫に小さく手を振っている


【ドガッ】「いでぇぇ何すんだメスゴリラぁぁ」


運転しながら左手で橋本の頬を殴りつける木津


「横で邪魔なんだよ・・・ヒヨッコとは言えBランクか・・・・私は木津 ファイターでAランクだ・・」


「メスゴリラぁてめぇAつったってつい先週にランクアップしたばかりだろうがぁ」


頬を押さえながら、木津に突っかかる橋本はもう一発ストレートを顔面に喰らい急に大人しくなった


「前の席でイチャつくな・・・おれはこのチームのリーダー岩城だ・・・ファイターでAランクだ、俺は学生だからと甘やかさないからな・・覚悟しとけ」


「・・・イチャついてないし・・・・て、リーダーもうすぐ南口です」


五月と雫が車窓から外をみると、所々建物が破損していて道路にはバリケードが設置されている


「木津適当な所で止めろ、お前ら各自油断するな!」


バリケードの手前で停車した車から降りると五月と雫に緊張が走る・・・盗賊ではないが大量の魔物の気配を感じる


「行くわよ五月・・この程度乗り越えられなきゃすすむんの横には立てないわ」


「分かってる!やってやるわよ」


進の知らない所で、ヒロインたちは初討伐ミッションに挑む








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