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第44話 ささやかな日常を守れるなら


「う・・・う~ん・・・うっ!!頭痛いっ、っっっつ・・って・・あれ?」


俺はどうやら夕食の後で自分の部屋で寝てしまったらしい・・確か星奈さんと由利さんと一緒に夕食を頂いて・・・お酒を飲んで・・あれ?


「う―――ん~なぁにぃ?」


「朝から騒がしいわねぇぇ」


俺の左右から上半身裸でたわわな爆乳が丸見えの星奈さんと由利さんが布団の中から起き上がって来た


「ぎゃぁぁぁぁ!」


おれは慌てて布団から飛び起きると部屋の中のソファーの陰に隠れる


「ちょっとぉ~それって普通女の方の反応じゃない?普通に傷つくんだけどぉ~」


「やだぁぁ進さんたら昨日はあんなに積極的だったじゃない♡」


え?何どういう事?俺もしかして、昨晩人より遅い大人への階段を上ったの?


「あ、あの・・昨日俺・・もしかしてお二人の事・・・襲ったとか・・」


俺の言葉に悲しそうに泣き出す由利と星奈


「酷い!!昨日あんな恥ずかしい事をさせといて!」


「私もう進さんの所以外にお嫁に行けないぃぃ」




・・・・・・・・・・・


・・・・・・


「・・・・・て、事で本当は何も無かったの♪」


「つまり・・俺がお二人に布団に誘われた後、急に眠り出してそのまま布団に倒れ込んだと・・・」


「ええ、私達もビックリしちゃったけど不思議なことに私達もその後で急に眠くなっちゃって・・・」


「そうそう、まぁ星奈はお酒に弱いしね・・だけど私は自慢じゃないけどお酒で酔った事無いの・・こんなの初めて・・」


『こんなの初めて・・』って言った由利さんの浴衣が乱れた姿を事情を知らない他の人が見たら誤解は避けられないな・・


「きっと進さんは疲れてるのよ・・ほらここ最近色々ありすぎたから・・」


「だったら、折角だし、うちの旅館自慢の露天風呂でも行ってみたら?」


「いいわねぇ行って来たら?進さん、ここの地温泉は疲労回復滋養強壮に効能が有るって言うし♡」


『精力増強、子宝にも効能が有るって言うしね・・』『私進の赤ちゃん欲しいぃ!』


そんな二人の内緒話は一旦置いとくとして確かにここ最近、ていうかこの世界の龍道 進と融合してからというものの常に何か悩んだり悔んだり追い込まれたりしていたな


「そう・・・・そうですね・・それじゃお言葉に甘えて温泉を頂きますね・・」


「それじゃ上がったら朝食にしようね」「また後でね、進」俺達は解散し二人はそれぞれ自分たちの部屋に戻っていった




<八又の湯>


流石に観光シーズンでは無いから宿泊客はあまりいない、朝の露天風呂には俺以外にお客さんは入って無さそうだ


脱衣所で衣服を脱ぐと、備え付けのタオルを手に取り檜つくりの扉を開ける


「おお、温泉なんて学校の修学旅行で来た時以来だな・・・」


《龍道?そんな奴俺たちの班にいったっけw?》


《ぎゃあははは、ひっでえ~お前がジャンケン負けたから俺たちの班に組み込まれたじゃねぇかw》


《おっと~噂をすれば龍道君の登場だぁどうせ貧相な体・・・ってえ?》


《あいつ・・あの体ヤバくないか・・・》


そうだ・・・あの時修学旅行で俺の身体付きを見てから急にクラスの連中が俺をイジッたりしなくなったんだった・・まぁ居ない人として無視されたとも言えるけどな・・


その後の文化祭の時も俺だけ何も役を貰えなかった・・・体育祭でもなんの種目にも参加出来なかった・・・卒業写真にも俺の席は無かった・・・


だから・・・・当日は学校を休んだ・・でもその方がいい・・俺には他人は怖すぎる、壁が高すぎる、心が寒すぎる


困ってると思ったお婆さんの荷物を持って横断歩道を渡ったら、引ったくりと呼ばれた


痴漢されそうだった小学生を守ろうとしたら泣かれてしまい近所の人の通報され俺が警察に補導された


大学生になっても何も変わらない、講義中に俺の席の周りには誰も居ない


就職した会社では上司の課長にコミュニケーションが無いと叱責される・・・でも・・・


それでも俺は人を恨まない・・嫌いにならない・・例え避けられ遠ざけられてても


「一緒に探そう進」「すすむんは私らの大切な・・・」


それでも、こんな俺の事を見つけてくれてる優しい人達のささやかな日常を守れるなら・・・たとえ人では無くなったとしても・・


【お前は何者だ】


「はっ!?」


湯船に身を浸しながら柄にも無く物思いに更けていた俺の意識に急に耳にしたことの無い声が聞こえる


【お前は何者だと聞いてる】


「だっ誰だ!!」


俺は立ち上がり周囲を見渡す・・・人影は無い・・しかしこの気配・・何だ・・何処から


【人外が人の真似事か・・人に拒まれ疎まれ存在を否定されて尚、人を想うか】


何処だ・・・何処に居る・・敵か?・・魔物か?・・気配がデカすぎる・・強すぎる・・人狼の非じゃない









ヒタッ・ヒタッ・ヒタッ・ヒタッ






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