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第42話 ヒロイン達の思惑

〇都内名門女子高 聖堂女学園


創立100年を誇る都内のみならず日本有数の名門女子高校、広大な敷地面積に最新鋭の設備、海外レベルの学習内容この高校に通うのは取り分け名家の子女ばかり、『あぁ~あぁ~乙女の憧れ聖堂女学園~♪』昔、女学園を卒業し有名な女優になった大御所が映画の中で口ずさんだこの鼻歌は50年以上経った今でも耳に馴染みのあるフレーズだ


そんな聖堂女学園 2年生の教室にて・・・・早朝


「はぁぁぁ!?何?翼だけ進にお別れの挨拶したっていうの!?」


「ねぇ・・・・翼さん?説明してもらえるよね?ねぇねぇ」


「あ、あわわわ・・先輩方・・ここは一旦落ち着きましょうね」


聖堂女学園 1年の羽生 翼は2年生の先輩で先日 緊急クエストにて命を助けて貰った恩人でもある五月と雫の教室に挨拶に来て余計な一言で二人の不興を買ってしまった


〇少し時間を遡る事10分前


「先輩ぃぃ進さんが昨日この町から出てってしまって私寂しくて・・・進さんの連絡先教えてくださいよ~」


「は?」「はぃ?」「え?」


3人はお互いを見つめて固まってしまった・・・


「何で翼が進が出てったことしってんの?」「私らに何で先に連絡してないの?」


二人の目からハイライトが消え深い闇が広がる・・翼は背筋が冷たくなる感触を覚えブルブルと身震いした


「え、え?いや・・・昨日の深夜に進さんが、あの・・町から出ていくところでギリギリ間に合って時間が無かったというか、慌ててたというか・・」


「へぇぇ時間が・・・」


二人の怒りは爆発寸前だった・・・


「あ、あのぉ~進さんの連絡先ぃ・・・・」


「そんな事より、何で翼は進が町から出ていくことを知ったの?」


翼は天井を見ながら顎に手をおいて少し考えるそぶりを見せる


「えっと、お母さんと心音が進さんに何か起きる予感がするって言うから私がスカウトのサーチスキルで進さんをサーチ(探知)したら町の出口に向ってそうだったから先回りして・・」


「はぁぁぁ!?何?翼だけ進にお別れの挨拶したっていうの!?」


「ねぇ・・・・翼さん?説明してもらえるよね?ねぇねぇ」


「あ、あわわわ・・先輩方・・ここは一旦落ち着きましょうね」


【キンコンカンコン♪】


「あ、ああ私教室に戻らなきゃ・・あはは先輩また後程ぉぉ」


盗賊らしく人の間を縫うよに駆け抜けあっという間に五月達の目の前から逃げていった


「ねぇ私、待ってるのは性に合わないのよねぇ・・欲しいものは自分で奪いに行かなきゃ・・五月は?」


「そんなの決まってるじゃない!!進には何で記憶が戻ったのに私達に何も言わなかったのか問いただしてやらなきゃ!!」


五月の言葉にニヤリと口角をあげ拳をにぎり五月の顔の前に突き出す,五月は覚悟を決めた強い目でその拳を自分の拳で軽く叩き大きく頷く


「私達から逃げられる訳無いのにねぇすすむんたら♡」「と、兎に角あの女狐達と進が一緒に居ると進の貞操の危機だわ!!」


「とりあえず今日の放課後に真理恵さんとコンタクト取りましょう」


その後、真理恵との話し合いの後で帰宅した二人


〇鳥居家本宅


都内の一等地に建っている豪邸、地方にも別宅がある


夕飯時


「な、なぁ五月?どうしたんだ?今日は口数が少ないな・・」


傑はすこしビクビクしながら娘に話を振った、娘は傑の方に目を向ける事無く不機嫌そうにご飯を食べてる


「ちょっと・・・五月、お父さんが話してるんだからチャンと答えなさい」


美月が態度の悪い娘を叱るが、そんな母親にも鋭い目で睨み返す


「私、進の事まだ許してないから」


傑と美月は顔を見合わせて気まずそうに苦笑いする


「ねぇ五月、進さんは私達の命の恩人でもあるの、だから絶対に不当な扱いはさせないし私達も全力でバックアップする」


「じゃ!なんで町から追放なんかさせたの!?二人が・・雪菜さんも反対してくれたら・・」


傑は首を軽く振る


「五月・・この件はそんな簡単ではない・・進君がウエアウルフを追い込んだ為に結界装置を破壊されたと聞いてる」


「でも!!」


「そう、多分進君が何もしなくても、遠からず結界装置は破壊され同じ状況に・・いや・・もっと悪い状況になっていたかもしれない・・」


「だったら何で進が責められるの!?おかしいじゃない、進が救ったのよ?お父さんもお母さんも・・いや町の人も!」


「そうだね、その通りだ・・でもそれを誰が信じる・・高崎の犯行は協会が公表すると言ってる、しかし進君の事は秘匿と言う事になった」


「何で!?進がウエアウルフを倒したって発表すれば!!」


「そこで彼の素性が暴かれて、彼がこの世界の住人では無く別の世界の人間だと世間に公表するのか?そうなればどうなる?」


「それは・・・・」


「おそらく彼は英雄になるのでは無く世間から奇異の目に晒されるだろう・・もしかしたら魔物の侵入すら彼の責任にする輩も出て来るかもしれない」


「・・・そんな事・・」


何も言えず俯く五月の肩に手を置いて優しく抱きしめる美月


「ねぇ五月?なにも一生逢えない訳じゃない、進さんの事を強く想っているならきっとまた遭えるはず、あっ、これは女の勘ね」


そんな母親の腕にそっと手を掛け強い意志を持った目で傑を見つめる


「私は待ってるのは性に合わないの私は私の意志で進を追うから」


鳥居夫婦は改めて娘の強い意志を目の当たりにするのだった




〇蜂須賀本家 本殿応接


都内の外れの山奥にある蜂須賀本家、山3個分の敷地面積に古風な和装建築の広大な屋敷


「御爺様・・・雫で御座います・・」


「入れ・・・」


いつもの胸元の空いた服装では無くキッチリと着物を着こなし礼儀正しく膝をついて襖を開け中に入ると深く頭を下げる


「久しいな雫・・協会での一件は聞いておる・・源蔵も思い切った判断をしたもんだ」


蜂須賀 総司(そうじ)伝説の賢者 代々続く治癒師の現党首にして重鎮、雫の母親、雪菜の父親である


過去に富士防衛戦を犬飼 源蔵と共に戦い抜き現地で幾人もの命を救い神医(かむい)と呼ばれ敬われる


しかし防衛戦にて救えなかった命も多く当時、前線の指揮系統を纏めていた源蔵と意見を衝突させる事も多かった


日本のハンター界で源蔵に物言える数少ない人物でもある


「その件につきまして、御爺様にお力添えをお願いしたく・・・」


流石に雫も緊張のあまり額から汗が滴る


「龍道 進とかいう男の事か・・」


「はい」


「聞いておる、何やら聞いたことに無いスキルで複数人を同時に治癒したと聞いたぞ」


「はい、竜の瞑想というスキルでした」


「聞いたことがないな・・・竜か・・・なるほどそれで源蔵は富士の樹海に送ったのか・・・」


「御爺様?」


「ああ、こっちの話だ気にするな、それで?儂の力を借りたいとは?」


「はい、私は龍道 進を生涯の伴侶と心に決めてます、私に彼の元に赴く許可を」


「ほう・・・」


総司の鋭い視線に対し、雫は必死に睨み返す


「なるほど・・・蜂須賀の女は自分の子宮で運命の相手を感知すると言う、儂の母も雪菜もそうだったらしい・・・お前がそういうなら儂も口添えしよう」


「有難う御座います」


「しかし、その龍道 進という男・・・源蔵の見立て通りの男であれば並々ならない運命を背負ってるやも知れぬ覚悟して嫁ぐが良い」


「はい・・・有難う御座います」


膝をついたまま頭を下げそのまま後ろに下がり後ろ手で襖を開け部屋から出ると再び総司に向って頭を下げる


総司はそんな雫に片手を挙げ少し待つように促す


「あぁ雫、わしもその龍道 進という男を一度見てみたい・・・近いうちに一度ここに連れて来なさい」


「畏まりました、必ず」


襖を閉めるとフッーと溜息をつく(これで外堀を埋めたわね・・・もうパパにもママにも文句は言わせないわ・・フフ)





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