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第38話 向かうは星奈と由利の故郷

「では・・・進さん名残惜しいですが・・ほら・・翼も進さんにお別れの挨拶しなきゃ・・」


「うっっ・・進さん・・私の事助けてくれて本当にありがとう御座いました・・これから沢山感謝の気持ちを伝えるつもりだったのに・・」


翼さんは海さんの胸で泣きじゃくる・・顔の半分以上が胸に埋まってる事は触れないでおこう・・・


「うっうん!!」由利さんにワザとらしい咳払いと白い目で睨まれる


「あ、あぁ、う、うん・・翼さんもこれで二度と会えない訳じゃないから落着いたら連絡するから」


「本当ぉ?グスッ・・」


「ああ、約束だ・・・」そう言うと小指を差し出す


「まぁ・・・進さんなんて情熱的な・・・こちらが照れてしまいます・・」


翼さんは俺の小指をジッと見つめると真っ赤な顔をして握りしめる「あれ?指切りじゃ?」


「指切り?これは貴方をいつか迎えに行きますって合図ですよ?」


「え?!」


『ちょっと・・進・・こんな子供を誑かして・・あんた本当に女を虜にするスキルでもあるんじゃない?』


「わぁぁここねも!ここねも!」


そういうと心音ちゃんも俺の小指を握りしめる・・・これは完全に犯罪者だな・・・




おれは別れを惜しむ3人の親子にお礼を言い街からのゲートを通過して行く、走り抜ける際、3人の姿が見えなくなるまで手を振っていた


暫く続く道を走るワゴン車に揺られる俺と角さんの奥さん二人


「あの・・星奈さん旦那さんの事は?」


俺の質問に笑顔で自分の唇に指を置き答える星奈さん


「あ、気になっちゃう?実は私と由利は糞旦那から籍を抜いたの、私が熊井 星奈に戻って、あっちは笹本 由利ね」


「あはぁ♡でも私は龍道 由利でもいいんだぞぉ♪」


冗談を言えるほど気持ちも整理出来た様だ、それとも俺に気を使ってくれてるのか・・


「お二人とも、有難う御座います・・俺みたいな行くあての無い宿無しニートにこんなに良くして頂いて・・」


『ねぇ・・由利・・進って鈍感通り越して朴念仁って感じだけど・・・』『これは手ごわいわね・・』


何やら運転してる由利さんと内緒話をしてる星奈さん・・ふと窓から外を眺めると時たま対向車が通り抜ける


この世界の車か・・・たしかこの世界の龍道 進の記憶から思い起こすと


この世界の車には簡易結界発生装置が組み込まれてる、タイヤを動かす動力元の魔力と連動して車体周りに簡易結界を形成する仕組みだ、年々新モデルが登場し、組み込まれる魔術術式が進化して小型化しており、複数個搭載する事でその走行距離は数年前から飛躍的に伸びてる、今では動力魔力チャージ1回で400~500キロは走行できるようだ、ただ現実世界の可燃燃料による動力と違い充填には最低でも2時間かかるので、その点は不便と言えば不便である


「ところで星奈さと由利さんは東京出身では無かったんですね?」


「ええ、私と由利は地元の親友同士だったの、まぁ地元から華やかな都会に憧れてハンターとして一旗揚げようと上京したんだけどね」


「現実は甘くないってね・・結局色んなパーティーを転々として最終的に角のパーティーに入ってから直ぐ角に熱烈にアプロ―チされて星奈と私の二人で結婚したの」


「まぁ今となったら黒歴史だけどね、あんな屑だったとは思ってなかったよ・・・2年に満たない結婚生活だったけど今となったら、ほんと後悔しかないわ」


「私の実家、旅館経営してるから進は遠慮なく何時までも泊まってくれていいから!なんならそのまま住んじゃう?」


「はぁ?待ちなさいよ、進君は私の実家のホテルに泊まるんだよ?もう私とツインの部屋確保してるんだから」


「「ぐぬぬぬぬぬ」」


「ふふふ・・・二人とも・・有難う・・・本当に・・・有難う・・・」


「「進」君・・・・」」


【ピコッン】その時スマホに通知が来る


『電話に出ろ!!』


【ピロロン・ピロロン・ガチャ】


『もしも・・『進ぅ!!どういう事なの!?街を出ていくとか!!私聞いてないしぃ許さないんだから!』・・五月・・・』


『すすむん?私に黙って居なくなるとか・・・鎖で繋いで監禁して欲しいのかしら?』


『雫も!?・・・二人ともすまない・・何も言わずに出てきてしまって・・・』


すると横で由利さんが俺からスマホを奪ってスピーカーモードにする


『お久しぶりね、二人とも』


『なっ!?ちょっと!!まさか女狐達と一緒にいるの!?ねぇ進!!』


『へぇぇぇ私からすすむんを奪うとか・・命が惜しくないのかしら?』


『ハイハイ、進を責めないでね♪進は寝てる間に私らの車に乗せてもらって今私らの故郷に向かってるの』


『ちょい待ちなさいよ!!誰の差し金なの!!』


『そうねぇ強いて言うなら貴方の達の両親と協会の意向って事かしら・・』


『あんのぉクソオヤジぃぃ許さないぃぃ』『これは・・・お母さまに話を聞く必要が有りそうね・・ふふふ』


俺は・・スマホのスピーカーに向って涙を流しながら五月と雫に告げる


『俺・・必ず二人に逢いに行くから・・・俺・・二人に大事な事・・・伝えなきゃ大切な・・』【プープープー】


スマホは突然圏外になった・・どうやらトンネルに入った様だ


「あらあら、折角の熱い告白が・・進君らしいわね♪」


「さぁ進、由利このトンネルを抜けたら静岡だよ―――!」


通話の途切れたスマホを握り車のフロントガラスを見上げるとトンネルの奥に光る丸い出口が見えていた

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