●ハンター協会支部地下の一室
「龍道様、お食事の用意が出来ました」
その声にベッドから起き上がると、入口のドアの下にある小さな窓からトレーが押し込まれてて出て来る
「食べ終わりましたら同様に下の窓から外に出しておいてください、ではごゆっくり」
ドアの前で屈んでトレーからこぼさない様に持ち上げるとベッドの横の机に持っていく
「パンとサラダとスープか・・・・」
俺は手を合わせてからサラダを食べる、ドレッシングもマヨネーズもかかってない生野菜を切っただけのサラダだった、パンをかじるが見た目以上に固いパンだ、サラダもパンも水気がないのでスープを口に含むがほのかにコンソメの味がしたがこちらには具材が入ってない・・
「贅沢は言えないか・・」
静かな室内には俺が食べる際に食器とスプーンが接触する音と俺がパンを食べ噛んでる音しか聞こえない
「これは流石に精神的に堪えるな・・早く慣れないとな」
量も少ないのであっという間に食べ終わり係りの人に言われた通りにドアのしたからトレーを返却する
流石に暇なので龍道の記憶に残ってるトレーニングをする、スクワットに逆立ちの腕立て伏せ・・・
途中で汗が服に付くと嫌なのでパンツ一枚でトレーニングを続ける
一日に一枚清潔とは縁遠いタオルが支給されるので洗面所で濡らしてから汗をかいた体を拭きとる、それから3日経っただろうか・・・
外の景色は見えないので今が昼間か夜か判断できないが、食事の回数から本日でここに来て3日目だと判断しているだけだ
今日もいつも通りトレーニングをしていると、何時もは来るはずの飯の係りの人が来ない・・・
【グゥゥゥゥ】
置かれた状況が最悪でもお腹はいつも通り減るみたいだ、俺は俺の意思に反してクレームを主張する自分のお腹を摩りながら入口のドアの格子から外を伺うと何時居る見張りの職員の姿が見当たらない・・
(なんだ?・・・この感覚・・背中を刺す様な悪寒・・何か上で起ってるのか?)
「すいませぇぇぇん!誰か居ますかぁぁぁ」
左右に大声で叫び誰か居ないか確認するが返事は返って来ない・・・
「誰かァァ居ませんかァァァァ!?」
その際、必要以上に聞こえる耳に、誰かが叫んでる様な声がかすかに聞こえた
「仕方ない・・・か・・・後で謝罪します・・」誰も居ないのに入口のドアにそう語り掛けると、腰を落として右手を腰の位置で構え左手を前に突きだす・・・正拳突きの構えだ
「せぃ!」【ガシャァァン】金属音と共に入口のドアは吹き飛び通路の壁にくの字に曲がった状態で打ち付けられた
「急ごう・・」俺は見張りの職員がいつも座ってる格子のドアを両手で引っ張ると、俺の握った所から歪に変形してなんとか通れる隙間が出来る
跨ぐように格子を抜け、冷たい階段を駆け上がる
出口に近づくに連れて、声が大きくなっていたどうやら複数人が言い争ってる様だ
ようやく協会の1階に到着して様子を伺うと
背後からで顔は分からないが高価そうな魔法使いのローブを身に着けた男性と、同じく女性が大きな宝石の付いた杖を構えて立っていた、周囲を伺うと多少派手さは抑えめな魔法使いのローブを身に着けた数名が同じく杖を構えていた
「君たち、無駄な事はもうやめろ!高崎は君たちを騙していたんだ!」
「このまま大人しく投降しなさい!」
「私らが用事があるのは、この先に捕まった娘と犯人の高崎だけだ!そこをどけぇぇ」
魔法使いたちの視線の先には以前、高崎主任たちに同席していたハンター達だった
「へへへ、アンタらを倒す事は出来なくてもここへの足止めなら出来るぜぇ~なんせ俺達全員Aランクハンターだからなぁ、わりぃが娘の所へは通さないぜぇ~」
(あいつらの奥・・・あの階段の先か!?)
俺は物陰から飛び出すとハンター達の中に突入して行った、俺に気付いた一人のハンターが俺に向かって両手持ちの斧を振り下ろす
「お、お前は、だ、だれだぁ!ここは通さないっていっただろぉぉぉ!!」
【ガキィィン】
俺は振り返りもせずに裏拳で斧を弾くと乾いた金属音と共に斧が柄の部分と分離する
「な!?素手で斧を弾きやがった!?」
俺に向かって魔法使いの男性が何か叫んでいたが、無視してそのまま俺は階段を駆け上がる
2Fの廊下に到着した俺が目にしたのは、あの時に出会った人狼と高崎主任だった
その手前の部屋の前で壁になるように、ナイフを構える真理恵さんと同じく杖を構えて詠唱の準備に入ってる星奈さんが居た
「真理恵さん!星奈さん!!」
俺は一目散に駆けだし二人の元に向かう・・・すると二人が守ってた部屋の中には全身を切り割かれ血まみれで折り重なる様に倒れてる五月と雫、そして必死に治癒魔法を詠唱する由利さんの姿だった
その光景に今まで感じたことの無い怒りに首筋がザワつく、激しい血圧の上昇に目の血管が切れ赤く充血するコメカミの血管も裂け周囲に鮮血が飛び散る・・
「す、進様!?」「進!!」
そんな俺らを嘲笑う高崎と人狼
「無能がぁ大人しく閉じこもって居たら少しは長生きできたのになぁ!」
完全に高崎の言動は悪人のそれである
「しゅ、主任!?どうしてこんな事を・・我々協会職員が街に魔物を呼び込むなんて・・・」
「うるさいうるさい!腐れハンター共は全員死ねばいい!腐った町の住人も死ねばいいぃぃぃ!!」
「真理恵、こいつは常軌を逸してるわ・・何を言っても無駄よ・・」
そんな様子を見ていた人狼が自分の爪に付いた血をペロペロと長い舌で舐めながらニヤニヤして俺を見ている
「頭の悪そうなお前らに教えておいてやるよwあのチビの女子高生を拉致って、お前等とAランクハンターをあの場所に呼びだしたのは俺達の作戦だぁw」
「!?ま、まさか、ハンター協会の主任という立場の人間が裏で魔物と繋がって居たなんて!?」
「高崎ぃぃ、あんた恥を知りなさい!!」
星奈さんの言葉に高崎は髪の毛を逆立てて怒り出した
「うるせぇぇぇぇ!お前等ハンターにそんな事言えたことかぁぁぁぁ!!」