協会の前に到着すると、玄関前で待っている人達が居た海さんと旦那さんらしき人と抱きかかえられ眠ってしまった心音ちゃんだった
その姿を目にして俺たちの元から駆け出していく翼さん
「お母さん!!お父さん!!心音ぇぇ!」海さんに抱き付く翼さん、その様子を優しい笑顔で見ている五月がこっちに気づいて
「なによ・・・なんか言いたげね・・」
そんな目で見ていた訳ではないのだが、この世界の龍道 進の記憶が蘇った事で五月と雫との出会いやこれまでのやり取りが鮮明になっていてなんか複雑だった
「いや、お店で泣いてた子供にもそんな目をしてたなって」
「えっ!?」俺の言葉に驚く五月 (しまった!俺にこの世界の龍道 進の記憶が蘇った事は伏せとかないと!)
「あ、ああいや俺の世界の五月も子供にそんな風に優しく接していたし、なんか懐かしくて・・キモかったよねゴメン」
「別にキモイとか言ってないでしょ!でも・・まぁ無事に連れて帰れてよかった・・」
それ以上何も言う事もなく無事を喜んでる羽生家の温かい空気を遠目に見ながら、その場をそっと離れ真理恵さんの元に行く
真理恵さんの元に居た角さんの奥さん達は俺と入れ替わる様に協会のビルの中に入って行った
「真理恵さんお二人は・・・」
少し複雑な表情をして俺に言う
「お二人は角パーティーの欠員の報告とパーティーの解散手続きをされに行きました」
二人の入って行った玄関を暫く見つめ、真理恵さんに向き直ると頭を下げる
「真理恵さん、この度は皆さんを危険な目に合わせてしまって申し訳御座いません、それに角さん達の事は本当に残念です俺に力があれば・・・」
悲しい顔をする真理恵さんは俺の手を取り下から覗き込むように見上げて
「進様は精一杯私達の事を助けてきれました、進様が来てくれなかったら私達もこの場には居なかったでしょう、この度の進様の活躍に報いる様に協会で取り計らいますので後日また協会にお立ち寄りください」
「いえ・・俺は何も・・角さんの奥様方にも合わせる顔が有りません・・・きっとお二人とも俺の事を本当は責めたいけど我慢してくれてるのだと思います、このままお二人の前から消えてしまうのが良いと思います」
そう言うと呆れた様に深いため息をつく真理恵さんは
「進様は優しくて誠実で素晴らしい方とは存じてましたが、女心に対して鈍感なのは欠点ですね」
「女心ですが・・・俺には縁の無い話かもしれませんね・・・真理恵さん俺少し疲れたので此処で失礼しますね、後日協会には顔を出します・・・クエストの報告も必要でしょうし・・責任も・・」
真理恵さんに深々と頭を下げて、翼さん達家族と無事をよろこんでいる五月と雫を遠目に見ながら場違いな俺は家路に着くことにした。
家に帰りスマホを確認すると、五月と雫からメッセージが着信していた
『どうしたの?すすむん、黙って帰ってしまうなんて・・・』
『ちょっと、挨拶も無しで帰るなんて水臭くない?』
『すすむん、もしかして調子が悪いの?』
『ちょっと!!雫から聞いたけど調子悪いの?なんで言わないのよ!』
俺は二人に少し疲れたから先に帰らせてもらった事と勝手に帰った事を謝罪しておいた
(今日は食欲も無いな・・・)
ふとリビングにある両親の遺影の前に立つと
「この世界の進の両親は物心つく前に亡くなっている、しかしこの写真は間違いなく俺の両親だ・・・二つの世界は何か繋がりがあるのか?」
自分の部屋に入りレトロゲームが有った場所を眺める
「この世界の進はゲームをしていた記憶がない・・・そしてこの世界の進の記憶が戻る前にこの部屋からゲーム機が消えた・・・いったい何がどうなってる・・」
月夜の窓に映る自分の顔に語り掛けるが、その表情は不安に満ちていた
【ピロロッピロロッ】(う~ん、なんだよぉ~朝から~)いつの間に寝てしまったのか眠りを呼び覚ますスマホの着信に恨み言を言いながら渋々出ると
「こんにちは、進様体調の方はいかがですか?」
電話は真理恵さんからだった様だ、こんにちは?俺は時計を確認するともう昼過ぎだった・・・
「あ、ああいや・・はい大丈夫です・・特に異常はありません、本日は何か御用ですか?」
「そうですか、昨日なんだか元気が無いご様子でしたので心配してました・・・お疲れの所申し訳御座いませんが2時間後に協会支社にお越し頂きたいのですが・・・」
(今が2時か・・・4時って事だよな・・・)
「分かりました、4時にお伺いします」
「ご足労いただいて申し訳御座いませんが、支社にてお待ちしてます、それでは失礼します」
そういうと電話は切れた・・・おれはスマホを下ろすと身支度を整え協会に向かう事にした