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第22話 犠牲の上に立つ街への帰還

「・・・人狼に腹を貫かれて視界が暗くなった所で記憶が止まってるがな・・・急にこの世界の龍道 進の記憶が蘇るとか・・どういう事だ?」


俺は星空を見上げながら一人呟く・・・頭の中で色んな可能性を頭に巡らす・・・


(可能性として一番高いのは、この世界の龍道 進は死んでしまって、別世界で瀕死になった俺が憑依したって線かな・・しかし人狼の奴は向こうで俺を殺したと確かに言った・・)


「奴とは、近い内に出会う事になるかもしれない・・実際に奴も去り際にそう言っていた・・その時にはっきりとするかもしれない・・」


俺の悩み等関係ないと言わんばかりに美しく輝く星々にため息を吐くと、急に星空に五月の顔が出て「うわぁぁ」驚き二人の肩を抱いてた腕に力が入る


「ちょっと!私の顔を見て驚くとかひどくない!?」


「いや、すこし考え事をしてて、ゴメン悪気があった訳じゃないんだ・・」


「まぁいいわ!それより・・・ほらっ翼!・・は――や――く――!!」


五月に背中を押され俺の前に立つ翼さん・・暗くてよく分からないが何やら申し訳なさそうに指をモジモジしてる


「パシッ」「五月先輩っ今、今から言う所ですからぁ!・・・その・・龍道さん・・この度は私の事を助けて頂いて有難う御座います・・」


そうお礼を俺に言うと後ろから五月に頭を押えられて俺にお辞儀をする(させられる)


「あ、あはは・・いや、翼さんが無事で何よりです、海さんや心音ちゃんにも心配かけた事を謝ってあげて下さいね」


そう微笑むと、「キャウッ」目の前の方から何やら声が聞こえたが月明りを背にしているので翼さんの表情が読み取れない・・・


「あ、あの・・もし嫌じゃ無かったら・・その私も・・進さんと呼んで良いですか?・・私の事も翼と呼び捨てで構いませんので・・それと私の方が年下なので敬語は無しでお願いします」


「アハハ、そんな事なら全然構わないよ、翼も敬語は要らないよ」


月明かりが差し込み翼の姿を映し出すと、これまで良く見てなかったが成程お母さんの海さんにそっくりだった


赤みがかった長い髪を後ろでポニーテールにしており、まだ幼さの残る大きな目元、笑った時に見えた八重歯が活発なスポーツ少女という印象を受ける、身体の方は細身で胸は主張してないが海さんを見てるとこれから成長するのかも知れない


身長も五月や雫と比べても小さく俺が胸の前で抱きかかえられた位なので学校でもそんな大きい方では無いと思う


「では、改めまして、聖堂女学園 1年 羽生 翼です!15歳です、家族は両親と妹が1人居ます、タレントはシーフでCランクです!」


元気良く挨拶してもう一度頭を下げる翼に、俺は今日の息が詰まる様な出来事から解放された様な安心感を覚える


「彼氏は居ません!ですので今フリーです、12歳年上でも全然大丈夫です、来月には16歳になるので結婚出来ます!お父さんは、手ごわいですがお母さんを味方に付ければ大丈夫です!」


微笑ましくも頷いていると何やら話が見えなくなった、後ろで黙って聞いていた五月が不機嫌そうに翼の肩を掴むと


「はぁ~い、お礼はしゅ~りょ~う~翼はあっちに行って荷物を分担して持つ準備をしよう―――ねぇ――」


「あ、ちょっと五月先輩!!危ないですってぇ!!」


五月に後ろか引きずられてバタバタと暴れる翼


「ああ、それとそこで寝たふりしてる二人もそろそろ進むから離れて貰える?魔除けの呪文もそろそろタイムリミットでしょ?」


「え?」俺は胸元の二人に視線を移すと


「はぁ~もう少し堪能したかったのに・・進さん続きはまた町に戻ってからで♡」「五月にしては鋭いねぇ♪しゃーないw」


そう言うと二人はスクっと立ち上がり二人とも俺にウインクをして荷物の元に集まっていった・・・




「えええぇぇぇぇヤダヤダ!!私まだ歩くの無理ぃぃ!進さんに抱っこしてもらうぅぅ!!」


駄々をこねて俺の首に抱き着き二人にアカンベ―と舌を出す翼に、寒気を覚えるようなオーラを放つ五月と雫・・・


「ほうぅ・・翼ぁ・・覚悟はできてるよねぇ?」【ゴギッ】果物を握りつぶす様に血管の浮き上がった手で固く拳を握る五月


「へぇ―――命がけで助けてくれた、すすむんにこれ以上甘えると言うなら、これは海さんに全部隠さず報告しなきゃだねぇ♪」


二人の様子に頬を引きつらせながら、俺の首から降りて苦笑いする翼


「い、いやだなぁ―――二人とも冗談ですってぇアハハハ、私の荷物はこれかなぁ~、さ、さぁ行きましょう!!」


真理恵さんと俺、そして星奈さん達もあまりの緊張感の無さに呆れてると


「本当はすごく怖い目にあったと思うけど、ああやって私らに余計な心配かけない様に無理に明るく振舞ってるんでしょ・・・優しい子じゃない・・」


そっと俺の横に立った由衣さんは俺にそう呟くと黙って頷き目の前の女の子達だけでも守れて良かったと思うのだった



時刻は深夜になってしまったがようやく町の入り口に戻ってこれた・・・真理恵さんがガーディアンの人と話をしている


「クエスト契約の書を確認します・・・パーティーリーダーの角様は・・・「死亡」・・シーフの方も「死亡」・・・そしてクエスト対象の救出者である羽生 翼さんが追加・・と・・」


ガーディアンは俺達の姿を見てひとりずつ指差して確認する・・角さんやシーフの方への対応に若干冷たさを感じ不快に思ったが真理恵さんを見ても業務報告程度にしか聞いてない様子なので俺も事を荒立てない様に大人しくしていた


「では、羽生 翼さん本人を確認出来るものは?」そう尋ねられると翼は首からかけてた一枚のカードをガーディアンに見せる


ガーディアンは何やら小さな魔法陣の浮かぶ台にそのカードを置くと・・「はい、確認できました・・ゲートが開きます!この時間の外からの侵入は解放時間が1分なのでお早めにお入り下さい」


入って来た時の様に3ポール回転式のゲートから街の中に入る


最後に俺がゲートを潜ると、【ガゴンッ】と金属音と共にゲートの明かりが消えた



ようやく・・・ようやく・・・戻ってこれた!!






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