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第19話 人狼の魔物 ウエアウルフ

ダンジョンの中は意外にも明が灯っていて、足元は確認出来てある意味助かったが・・・・


(電気は何処から来てるんだ?まぁそもそも魔法の世界だしそんな設備も必要ないのかもな・・)


俺は手に持った火炎瓶を溜息交じりに眺める


「そんな事はどうでもいい!早く翼さんを助けなきゃ!」


おれは階段と入り組んだ通路の壁面を背にして慎重にカニの様に横歩きで前進する・・・すると分岐してる道の片方に薄汚い布の掛かった場所を見つけた


「入ってみるか・・・」俺は極力布が揺れないように注意して中に侵入する・・・小さい空間は薄暗いが目が慣れたのか奥まで何とか確認する事が出来た


「誰か居るな・・・」


慎重に物陰に隠れながら人影に近づくと・・・・天井から吊るされた状態で衣類がボロボロの女子だった


俺は入ってきた入り口を警戒しながら女の子に近づく・・・この子が翼さんかな・・


女子は暗くてはっきしないが所々擦り傷は多少あるものの目立った外傷は無く単に気を失っているだけの様だ・・おれは吊られてる腕の結び目を解くとゆっくり慎重に女の子を床に下ろす・・・・


破れた衣服から下着がみえる(・・・暗くて色はわからんな・・はっ!それどこじゃない!)


俺は自分の着ていたシャツを脱ぐと翼さんに着せた、こういう時に自分が人より身体が大きい事が助かるな・・・こんな特殊なシチュエーション滅多と無いけどな・・


俺は翼さんを背負うと(軽いな・・・全然重さを感じない・・)ゆっくりと部屋を出て周囲を伺う、背負ったまま壁に翼さんを隠す様に音を立てない様に気を付けて・・・ゆっくり・・ゆっくり・・・


おれは意外と魔物に遭遇することなく出口にさしかかる・・・・


(よかった・・・絶対に何かあると思っていたが・・・)薄暗い地下鉄ダンジョンから外にでたが周囲はすでに日が暮れていた・・・


『みんさ~ん・・・翼さんを無事救出しましたよ・・・』小声で周囲を警戒しながら仲間を探して歩いていると【ゴロッ】何かが足元に転がってきた・・


(なんだ?石か?)おれが足で軽く蹴り足元から退けると・・雲が割れて月明かりが周囲を照らす・・


「!?」


足元に転がっていたのは、角パーティーのシーフの男の生首だった、その表情は恐怖と絶望のままで首を引きちぎられた様だった


「うっっ・・・うげぇぇ」初めて見る本物の生首におれは胃の中の物をその場ですべて吐き出した


なんとか背中の翼さんを落とさない様に手を後ろに回して支えるが吐き気と混乱と恐怖でおれは地面に手をつき依然として収まらない吐き気に胃液だけとなった異臭の汚物の水たまりを作る・・・涙と鼻水が止まらない・・・


「な、なんだぁなんだこれ・・・嘘だろ・・・なんでこれで夢じゃないんだ・・・」


絶望と恐怖の中で混乱していると市街地の奥から声が聞こえる・・・


「そうだ!・・・五月と雫・・真理恵さん・・・」俺は涙と鼻水と涎を拭い翼さんの位置を直すと声のする方向へ駆け出す


そこは少し開けた場所で中央には女性陣が固り集まってる


足元の様子を伺うとツノのある狼の死骸が数匹転がっていた・・建物の陰から様子を伺う・・・・


「ま、まて!!俺だけは見逃してくれ!その代りこいつ等全員お前等にくれてやる、頼む!!」


声のする方を見ると角が大きな人の姿をした狼に片腕を掴まれて宙吊りの状態で叫んでる・・・見てみると右手は肩から無くなって血が滴っている


【ゲヘへへ、お前の言う事を聞かなきゃならない、理由はないグルルル】


「ヒィィィまてまて!ぎゃぁぁぁぁぁ!」角の肩口に狼男は噛みつくとそのまま肉を食いちぎった


【ゲハハハ、男は硬くて嚙みにくい】


「ヒッヒッ・・誰か・・・治癒・・ち」その言葉の後、角はぐったりして動かなくなった・・・


人狼は興味なくなったのか角を無造作に放り投げると、何処からか狼の群れが角の身体に集り捕食しだした・・・


【ゲヘへへ、お前ら二人覚えてる・・人間の町にいた・・あの時食い損ねた・・ゲヘへへ、あの時の化け物は今居ない・・】


「雫・・・雫ぅぅ!」「ここは私が!」そういうと落ちていた角の片手剣を両手に握った真理恵さんが人狼と向かい合う


「職員のアンタが敵うわけないでしょ!!」「そうよ旦那・・・あの屑でも勝てないのに!」


剣を構えた真理恵さんはの剣先はガタガタと震えてる・・「ここは私が囮になります!皆さんこの隙にぃ」


【ゲハハハ、ワオォ――――――オ】人狼が雄たけびを上げると広場の周囲に狼の魔物の群れが隙間なく集まってきた


【こいつら・・お腹空いてる・・・お前ら・・・逃がさない・・ゲハハハ】


俺は翼さんを背負ったまま飛び出した


「!?進様!?」「進!」「無能のオヤジじゃない!?」「何しに来たのよ!あんたなんか役に立たないんだから早く助けを呼んで来なさいよ!!」


俺は人狼を人睨みすると少しだけ怯んだのでその隙に背中の翼さんを真理恵さん達に預ける


「五月・・雫は・・」「ええ薬で昏睡してるけど生きてる・・・」


穏やかな表情の雫の頬をそっと撫でると・・・


「角さんの奥さんと五月・・・二人で魔法を使って突破口を切り開けるか・・・」


二人は首を振る・・・「あんな屑もう旦那じゃないけど・・・私のお嬢ちゃんもMPを使い切って・・こっちのヒーラーもMP切れて・・」


「頼みは雫なんだけど・・・あの屑に変な薬を盛られて・・・この通り・・・」


「進様・・・ここは私が!」「いえ・・真理恵さんはなんとかこの包囲を突破する方法を見つけて皆さんを無事に町まで送り届けて下さい」


「進様は・・・まさか!!」


俺は立ち上がり女性達に微笑むと・・「俺には皆さんを守る盾くらいしか出来ませんから・・・皆さんどうかご無事で・・・」


俺は人狼に向き直ると


【また、お前・・・お前は何者だ・・魔物か・・・魔族か・・・】


「しらねぇよ!!」俺は人狼に殴りかかる、俺の全力のパンチを片手で受け止める・・・・はずが


【バギィィィ】俺の拳は打ち抜かれ人狼の右腕は肩から引きちぎれ吹き飛んだ右手は森の中に消えてった


【ワギャァァァァ、うで、おれの、うでぇぇぇ】


人狼の様子をみていた狼の魔物が一斉に俺に襲い掛かる、そのうちの一匹が鋭い歯をむき出しにして俺に噛みつく


「クッ!」咄嗟に腕をクロスして防御するが俺の腕に狼の魔物は食らいついた・・・・・が


狼の牙は俺の肉どころか皮膚すら傷つけられない・・・俺は食らいついてる狼の首筋に手刀を打ち込むとあっさり首と胴体が切断された、さっきの状態なら気持ち悪くて吐きまくる所だが今の俺は女性達を助ける事しか頭にない


「うぉぉぉぉぉぉ」雄たけびを上げて腕に噛みついたままの狼をぶら下げたまま纏わりつく狼を駆逐していく、数十匹が一瞬で吹き飛び肉の塊と化す


仲間の後に続いて襲い掛かるつもりだった狼も俺の異常なまでの強さに恐れ後ずさる・・・


【ワオォォォォォ!】後ずさる狼を捕まえ食いちぎる人狼・・・仲間を犠牲にするのか・・


人狼に恐怖する狼の魔物は後がなくなり半分やけくそで俺に襲い掛かるがその数も徐々に減って行き・・・最後の一匹は俺の裏拳で頭部が吹き飛ぶ


【ま、まて、俺をみのがせ こいつらはお前に返す おれはエリアから出ていく 俺をたすけろ】


俺は周囲の様子と返り血で染まる自分の姿を見て、血の溢れる右肩を押さえる人狼に言う




「お前の言う事きく理由は俺には無いな・・」


















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