協会で騒ぎを起こしてしまい、俺は宛も無く走って逃げていた
「きゃぁ」「うわぁ」
慌てて前を見て無かった俺は曲がり角で誰かにぶつかってしまった
「す、すいません、前を見て無くて」
俺は尻もちを付いた女の子に手を貸そうと腰を屈めて伸ばすと
「いたたたた、って進?」
「え?五月?」
お互いの顔を見て驚いてる後ろから、息を切らしその大きすぎる胸を激しく揺らしながら雫も追いかけてきた
「はっはっ・・ちょっと!、さ、五月待ちなさいって・・すすむん?」
俺に気づいた雫も状況が呑み込めず驚いてる、俺の差し出した手を取り立ち上がる五月はスカートを手で払いながら俺の顔を指さし怒ってる
「進!危ないじゃない、こんな狭い道を前も見ずに走るとか!!」
「ご、ごめん・・・(て、それ五月もじゃないのか?)」
「たく・・・何を慌てて・・!?て、それどころじゃないの!私急ぐから!!」
そういうと五月は走り去ってしまった
「ああん、もう五月ってば!はぁ全く・・・」
呆れて五月を追いかけるのを諦めた雫に俺は五月の事を尋ねる
「実は協会から学校に連絡が来てね、五月の後輩の友人が課外活動の最中に魔物に捕まったって・・・それを偶々耳にした五月が学校を飛び出して行って・・・」
(絶対に安全とは言ってなかったけど確かAランクのハンターが複数人付くって言ってたのに・・・)
「それで、一緒に同伴したAランクのハンター達は?一緒に魔物に捕まったの?」
すると雫の表情が怒りに染まる
「それが・・どうやら自分達だけ逃げ出してこの町に戻って来たらしいの・・・守るべき学生を見殺しにして逃げ帰るとか・・・最悪だわ・・」
「そ、そんな事が許されるのか!?あまりに無責任じゃ・・・」
俺の言葉に悔しそうに唇を噛み苦しそうに答える
「それが・・・自分の命に係わる危機的状況の場合は自分の身を守る事を優先にしても不問にされる事が常なの・・・高ランクのハンターを守る為の暗黙のルールね・・」
「そ、そんな・・・そ、それで五月はどこに・・」
「協会に向かったわ・・・帰還したPT・・確かリーダーはファイターの角とか言ったかしら・・・メンバーを増強して再救出する為のクエストが発令するって聞いて・・・」
(角って・・・あのナンパな嫌味イケメンか・・・)
「五月ってああ見えて面倒見が良いから後輩や友達からも結構懐かれてて・・・面倒見てた子を放て置けないからって、おそらく自分も一緒に参加するつもりじゃないかしら・・」
(いくら友達の為とはいえ・・・Aランクが逃げ出すうような魔物・・危険なんじゃ・・)
「雫・・・おれも協会に向かうよ・・」
そう言うと今逃げてきた道を全力で逆走する・・後ろで雫が何か叫んでいたが聞き取れなかった
協会の入り口に手を掛け息を切らしていると中から怒鳴り声が聞こえる
「はぁ?どういうこと!救出作戦は延期とか!そんな悠長な事いってる場合じゃないでしょ!!」
五月が噛みついてる相手は・・・・あの嫌味イケメンの角だ・・鎧は俺にダメにされたので安っぽい鉄の鎧に着替えている様だ・・・
「はぁ~分からないお嬢さんだなぁ~今、協会でクエスト発令してもらってメンバー集めてるっていってんだろ?」
角は五月に顔を近づけると・・・
「なぁそんな事より、メンバー揃うまで俺に付き合わない?wここで待つよりフカフカのベッドの上で一緒に楽しく待ってようぜぇw」
角は制服姿の五月を上から下までジロジロ見て下品な表情で涎を垂らしている
「はぁ?アンタなんか、おびじゃないのよ!良いからサッさと準備しなさいよ!!」
気の強い五月の態度に不機嫌になる角は、壁際に五月を追いやると手をつき所謂【壁ドン】の体制になると更に下卑た顔になり
「ああ、別にいいんんだけどねぇw俺らも少し、ほ~んの少しだけ責任があるかなぁ?ってクエスト受けたけどそんな義務ないしぃ?君が相手してくれないなら家に帰って嫁に相手してもらおうかなぁ~w」
五月は悔しそうに角を睨み上げ怒り薄っすら涙を滲ましてる
「この下衆!最っ低っ」
「おい、俺の連れに何してる?イケメン・・・」
そう角の肩に手をおいて少しだけ力を込めると
「いでででぇって!?てめぇぇぇ、ニートのタレント持ちの無能オヤジぃぃぃ」
角は怒りの矛先を俺に向けると、胸倉を掴みあげる・・・
「てめぇ俺にあんな恥かかせてくれて覚悟は出来てるんだろうなぁぁあぁぁん!!今ここでぶっ殺してやるよ!!」
おれは胸倉を掴む角の両手首を軽く握ると
「ぎゃぁぁぁぁ折れる、折れるぅぅ!!」
あっさり俺を離すと床をのたうち周り痛みに悶えてる
「五月、平気か・・・」そう手を差し伸べると
「え、ええ・・・その・・・・ありがと・・・ってさっきと同じだね」
安心したのか優しく微笑む五月を俺の背中に隠し角の方を見ると、奥の部屋からパーティのメンバーが姿を現しヒーラーが角を回復する
一緒に真理恵さんも現れ俺と床に座りこける角を交互に見てオロオロしてる
「真理恵さん、救出のクエストは延期なんですか?」
真理恵は言いにくそうに眼をそらして軽く頷く
「そ、そんな・・・私の友達なんです!!真理恵さん何とかまりませんか?私も参加しますので!!」
真理恵に縋りつき懇願する五月の後ろから雫と一緒に綺麗な女性が小さな女の子を連れて現れる
「雫!!雫からも何とか言って!!」「落ち着きなさい五月・・」
女の子を連れた綺麗な女性は角たちパーティ―と真理恵に対し深々と頭を下げ
「どうか!!娘の救出を宜しくお願いします!!どうか!!」
「おねえちゃんをたちゅけてください」
小さな女の子も一緒になって頭を下げる、頭を下げる女性の肩が小刻みに震えてる・・・
「あ、あの・・・今回の救出クエストの対象者である
真理恵さんの言葉に顔を上げた女性の瞳は涙で溢れてる
「は、はい・・母の羽生
慌てて手を振りながら否定する真理恵さん
「い、いえこれは協会の責任ですので、こちらこそ心配をおかけして申し訳御座いません!!」
そういうと真理恵さんが頭を下げる
「それで!娘の救出のクエストを発令して頂けたとか!」
「そ、その・・・」言いにくそうに目線を角たちに向ける真理恵さん
海さんは角達ハンターの方に向き直り再び頭を下げる、そんな海さんを例の如くイヤらしい目で見る角・・・こいつは本当に最低だな・・
「そ、その旦那の会社からも協会を通してそれなりに報酬は用意させていただきますので!どうか娘の事を宜しくお願いします!」
「おねがいしましゅ」女の子の母親にならって頭を下げる
「お礼ねぇw・・・人妻も久しく食ってないからなぁ・・・いいじゃねぇかぁ~」
角の独り言が聞こえてないのか、それほどまでに今必死なのか頭を下げ続ける海さんと心音ちゃん
「なぁ真理恵ちゃん、海さんもこう言ってるしさぁwそこに居る聖堂女学園のお嬢様二人に同行してもらって・・・・あ、あとそこのニートオヤジにもw」
「そ、そんな!学生の同伴は1名のみが原則です!2名になる場合はAランクハンターを4名揃える必要が・・・・」
「そんな事言ってメンバーが集まるのを待ってる間に捕まってる女の子が魔物に食い散らかされるかもねぇww」
角の言葉を聞いて絶望で床に倒れ込む海さんとそれを心配して背中を摩ってる心音ちゃんを見ると俺の胸にチクチクと何かが刺さる、心音ちゃんと昔の自分の姿が重なる・・・俺は知らない間に拳を強く握りすぎて爪が食い込み血が滴る・・この痛みは・・やはりこれは夢じゃないんだよな・・
「真理恵さん、私と雫は参加します!!なのでどうか!!」
「私からもお願いします・・」
二人共頭を下げ真理恵さんにお願する・・・・おれは真理恵さんの前に立ち深々と頭を下げ
「俺も参加します、何もできないですが海さんの娘さんとこの二人の盾になって逃げる時間位は稼ぎます・・・だから」
俺の言葉に諦めた様に頷き
「わかりました・・・私の責任で許可します・・・ただし!私も同伴します!」
真理恵さんは角達のパーティーの方を振り返ると
「協会の名において緊急の救出クエストを発令し、ここにパーティーを結成します!!」
そういうと真理恵さんの手に持ってるレポート用紙に何やら文字が浮き出る・・・それを掲げ全員に見えるように確認すると
「ここにクエストは受注されました、パーティーリーダーはAランク ファイター 角様、そして角パーティーのメンバーと学生サポートの2名と・・・民間サポーターの1名、それと緊急時対応の協会職員である私 犬飼が努めます!」
「基本リーダーでる角様の指示を第一とし、状況によっては私が協会特権でクエスト介入をします、それで宜しいでしょうか?」
角達はヤレヤレといった感じで半笑いで「ああ、それでいいぜw」と答えると俺たちの方に確認を促す
「承知しました」「それでいいわ」「まぁ妥当ね・・今は・・ね」
「では!今から5分後に出発致します!、学生サポーターと民間サポーターの方は協会の用意した支給用装備をご使用ください!では各自準備を!!」
こうして俺はこの世界で初めての討伐クエストに参加する事になった・・・