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第15話 突然の訪問者


期待と不安を抱え協会で俺のタレントを鑑定してもらい、俺のタレントは未知の新タレントだと言われ(これが転生者特有のチート能力か?)と期待をして実験という名の検査をしてみたが、結果はこの世界では全く使えない『無能者』という烙印を得ただけだった


俺の為に時間を割いて協力してくれた、五月や雫、真理恵さんや協会の職員の人たちの期待に満ちた表情が落胆と諦めの表情に変わってく様子は居たたまれなかった・・・


(所詮、この世界でも俺はコンビニバイトも満足に出来ない、落ちこぼれオッサンって事か・・)


自分の不甲斐なさに、重い足を引きずる様に酒とツマミを大量に買い込み、人生初の自棄酒で現実逃避をしてそのまま眠りに付いた




【ピンポン・ピンポン・ピンポン】


(ん?誰だ・・・て、俺あのままねちまったか・・・)目を擦りながら辺りを見渡すと空になった酒の空き缶がテーブルの上に散乱していてどうやらおれは昨日自棄酒してそのまま寝ていたようだ


【ピンポン・ピンポン・ピンポン・ピンポン】


「あぁぁ、はいはい・・・今で出ます・・・出ますから・・・」


ヨロヨロと二日酔いで若干痛む頭を押さえて玄関のカギを開けると


「こんにちはぁ~すすむん来ちゃったよぉ♪」


「どうも・・お邪魔します・・」


そこには制服姿の雫と五月が立っていた


「え、二人ともどうしたの?なんで俺の家に・・・」


「まぁそんな事は良いからお邪魔しますぅ~♪」


「お、お邪魔します・・あ、これ入院してた時に預かった荷物ね」


俺の質問に答える間もなく俺に荷物を押し付け玄関で靴を脱ぐとサッサと部屋に上がっていく二人を呆気にとられて見てると


「えええ~何これ・・・酒臭いじゃない!!」


「全く・・・ちゃんと片付けておいてよね!」


二人の声にハッとして慌てて二人の後を追いリビングに戻ると


「ねぇ進も片付け手伝ってよ!」


五月はごみ袋に空き缶とつまみの空いた袋を集めて捨てていた


「え、あ、は、はい・・」


俺も一緒に片付けをして、部屋に掃除機をかける、五月はテーブルを拭いてくれてる、ふとキッチンを見ると雫がエプロンを付けて何やらゴソゴソとしていた


「雫は何してるの?」そう俺が声を掛けると、くるっと振り返りスカートをひらっとさせて(黒か・・・)妖艶な笑みで両手に玉ねぎとジャガイモを握って俺に見せる


「ええ?玉ねぎとジャガイモときたら・・・カレーに決まってるじゃない♪」


そう答える雫のエプロンは胸の大きさに耐え切れずカエルかカメか区別が付かない位程にペイントされたキャラが変形していた


「い、いや・・カレーは分かるけど・・・二人とも学校は?サボりか!?」


「はぁぁ?何言ってんの?もう夕方よ進」


そう言いながらテーブルの隅を拭く為に必死で腕を伸ばしている五月は後ろ脚をあげた拍子にスカートが捲れる(こっちはピンクか・・)


「あ、ああ夕方かぁ―――って、本当だ!!夕方だ!」


「たくっ・・って!アンタ見たわね!!」


自分のスカートが捲れて見えそうな事に気づいた五月は慌てて起き上がると後ろでスカートを押さえて顔を赤くして俺を上目遣いで睨む


「い、いや・・見てない、見てない」両手を前にして必死に否定する俺に白い眼を向ける五月をみてキッチンの雫がクスクスと笑う


「ふふふ、意外と元気そうで安心した、五月ったら学校でも貴方の事すごく心配してて・・」


「ちょっ、ちょっと!!何言ってんのよ、そんな訳無いでしょ!!」


(ああ、なんかこういうの・・良いな・・ラブコメのお話の中の主人公になった気分だ・・・・だが・・・)


「アハッハ、俺は大丈夫だよ、落ち込んでばかりも居てられないからね、早く君たちんの龍道 進を見つけないとイケないのにクヨクヨしてる時間はないよ」


俺のカラ元気に二人は顔を見合わせて複雑な表情をする


「あ、あの・・進・・いや・・何でもない・・」


五月は俺に何か言いかけ手を伸ばしかけたが、言い淀んでその手を引っ込め、後ろを振り返ると雫の手伝いに行ってしまった


「すすむん、もう少しで出来るからねぇ♪」


そういうと背伸びして棚の上のお皿を取ろうとしてる雫をみて、俺は背後から手を伸ばし皿をとって雫に渡す


「あ、ありがとう・・・」


「いや、作ってもらってるのは俺の方だしお礼を言うのは俺の方だよ、ありがとう雫、五月」


「う、うん・・・その・・いや・・うん♪沢山作ったから一杯食べてね♪」


そういうと俺から受け取ったお皿に大盛のごはんとカレーをよそって笑顔で渡してくれた


「ああ!とても美味しそうだ!ありがと!!」


俺は3人分のカレーを運ぶと3人で食卓を囲む


「「「いただきます」」♪」


俺は大きめのジャガイモと人参を一緒にご飯とカレーをすくい口に運ぶ


「!!なんだこれ!?メチャクチャ旨いぃぃぃ!!ジャガイモも人参もちょうどいい大きさだぁぁぁ!」


俺の賛辞にニヤニヤと笑いながら五月を見る雫


「あら、野菜は五月が切ってくれたのよ♪ねぇ~」「も、もぅ!いいから私達も食べるわよ!」


五月は照れ隠しにスプーン山盛りにカレーをすくい口に運んでモグモグと口を動かす


「ふふふ、五月って可愛いわねぇ♪」「五月もありがとう」


俺は3杯もお代わりをしてカレーをお腹いっぱいに堪能した


「二人は砂糖とミルク入りだったよね?」


俺は食後のコーヒーを淹れると二人にミルクと砂糖入りのコーヒーを出して自分用にブラックコーヒーを持って二人の前の席に腰を掛ける


「ねぇあの写真って・・・」


五月は俺の後ろの写真に気づいたみたいで恐る恐る俺に尋ねる


「ああ、両親だよ、元の世界では俺が小学生の頃に行方不明になってそのまま死亡と言う事になったんだ、まぁ実際に15年も音沙汰もないから俺もそうだと納得してるし、気持ちの整理もできてるよ、ここに遺影が有るって事はこの世界の進の両親も同じなのかもね」


「そうなのね・・・小学生のすすむんには過酷だったんでしょうね・・・」


雫も俺の両親の写真を少し悲しい顔で見上げる


「ねぇ私たちも手を合わさせて貰っていい?」


「ああ、両親も喜ぶよお願いできるかな」


両親の写真と遺影に手を合わせている二人の後ろ姿を見てると胸がズキッと痛んだ・・・これは嫉妬なのか妬みなのか・・?


(可笑しなもんだ・・別世界の自分に嫉妬するなんてな・・こんな素敵な女の子に心配かけるとか・・・こっちの世界の俺も本当にダメな奴だな・・)


それから二人と他愛もない話をして時間も時間なので


「送ってくよ・・時間も時間だし」


「大丈夫よ・・あ、でも途中までお願いしようかな♪」


3人で薄暗くなってきた街並みを歩いている


「ねぇ進は明日からどうするの?バイトも当分ないでしょうし・・」


「そうだな・・・少しこの町を回ってみようと思う・・もしかしたらこの世界の進につながる手がかりが見つかるかもしれないし」


「そう・・私達は学校があるから昼間は一緒に行動出来ないけどバイトするために部活もハンター活動もしてないから夕方からは合流できるよ」


「ハンター活動?」


「ええ、高校生になると協会に所属してハンターに交じって魔物討伐に参加する事も出来るの」


「それって危なくないか?」


「そうね、絶対に安全って事はないけど同伴には必ずAランクのタレントのハンターが付くから、どっちかと言うと卒業後の就職活動を有利にする為の意味合いが強いわね」


(そんな学生の部活の延長のような魔物の最下級のスライムにも俺は・・・なんて情けないんだ・・)


「そうしたの?急に黙って・・あ、私ら此処でいいわ、進また明日ね、ゆっくり休んでね」


そう手を振りながら曲がり角で二人と分かれる、俺は手を振って返して元来た道を戻る・・


「進!!その・・・きっと何とかなるから!私達も一緒に探すから!!それだけ!」


五月はそう俺に向かって大声で言うと走って行き、曲がり角から見えなくなった


(本当に優しくて良い子だな、元の世界の二人も本当はこういう優しい女の子だったのかも知れないな・・・)


ふと立ち止まり空を見上げ輝く星を見つめる


「なぁこの世界の龍道 進・・二人は本当にいい子でお前の事を一途に想ってくれてるぞ・・・どこに居るんだ・・お前と違って俺はこの世界での居場所が・・・」


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