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第10話 別世界の龍道 進と今の俺


俺は、優しく抱きしめてくれる二人からそっと離れて深々と頭を下げる


「俺は・・二人に言わなければならない事がある・・・たとえ二人から嫌われたとしても・・・」


俺の悲壮感漂う気配にふたりは息を飲む


「話して・・進・・私たち進の事を知りたいの・・」


「どんな事でも受け入れる・・・貴方を支えたいの」


そんな二人の俺に向ける信頼と親愛の気持ちは、元々この世界に居た今の俺とは別の龍道 進のものだ・・二人に俺の目の前に座ってもらい仕切りなおして俺は自分の事を話し出した


「俺は・・この世界の人間では無い・・俺の世界には魔族や竜族なんかは存在してないし、当然魔物も魔法も存在してない・・そんな世界が俺の住んでた世界だ」


「そ、そんな!?確かにあの時瀕死のダメージを負ったけど、間違いなく雫のお父さんとお母さんの治癒を受けて助かったの!!」


「そうよ!きっと今は怪我の後遺症で記憶が混乱してるだけだから・・・ね、私達と一緒にゆっくり思い出そ」


俺は二人の必死の主張にも黙って首を振る


「じぁ・・俺のこの20年近い記憶は?おれは確かに27年間生きてきた・・・両親の死にも向き合った、孤独な学生生活も送った、ゲームに人生をささげた・・それも全部間違いなく俺が生きてきた人生だよ・・・」


「「・・・・・・」」


「だけど俺は元の世界でも君たち二人に出会ってる・・・今と同じ様にコンビニで一緒にバイトしてる後輩で仲間だったんだ・・・」


この話に二人はたまらず言葉を挟んでくる


「え?元の世界で私ら進と出会ってたの?」


「だから、すすむんは違和感なく私らに接してたのね・・」


「ああ、でも元の世界ではどちらかと言うと・・・その・・言いにくいけど・・俺は君らに馬鹿にされててどっちかと言うと嫌われていたと思う・・」


俺は申し訳無い気持ちで俯きながら二人に説明する


「あぁ~ねぇ~」「まぁ・・・ねぇ・・」


不機嫌になるかと思ってた二人は逆にバツが悪そうに目線を泳がせながら頬をポリポリと掻いていた


「そ、そのね・・実は・・私らも同じで・・事件の前までは進の事を揶揄ったりしてて・・」


「ま、まぁその・・本当は私も五月も初めてコンビニで貴方を見て・・その・・在り来たりだけどビビッて来て一目惚れってなったの・・」


二人の意外な告白に「へぇ?」と間の抜けた返事で呆気に取られてると


「そ、その、好きな子の気を引きたくて意地悪しちゃうみたいな?」


「あ、アハハ、子供じみてるよねぇ―――w」


二人は顔を赤く染めて苦笑いしながら恥ずかしそうに話してくれた


「そ、そうなんだ・・でも、俺のいた世界での二人がそうだったかは今となったら分からないしね・・本当に俺の事を嫌ってたかも知れないしね」


「そうよねぇ・・それよりもっとすすむんの事を教えてほしいの」


俺は元の世界での自分の事を二人に話した、昔から人との接し方が分からず友達も彼女も居なかった事、両親が小学生の時に行方不明になり天涯孤独になった事、二人から贈られた最後のプレゼントのゲームにハマって27歳のオッサンになってもずっと続けてる事、ある日ゲームを進めてると急にそのゲームが出来なくなって絶望していた事、そして・・・


「そして、その翌日にコンビニに出勤すると彼方の世界の君たち二人に言い寄る不審者が居て、無意識に止めに入ったらその不審者に腹をナイフで刺されて、そのまま意識を失ったんだ」


「そして目覚めたら、傷は無くなってるし今まで俺の事を嫌っていたと思っていた君たちから急に好意を持たれるし・・・これは現実じゃなくて夢の世界だって思ったんだよ」


「だから私らに殴れとか言ったのね・・・」


二人は納得した様な混乱してるようなそんな複雑な表情をしていた


「だから・・すまない!ここに居る俺は君らが好意を寄せていて、君らのピンチを助けた龍道 進とは別の龍道 進なんだ!」


二人は俯きながら何かを考えてる様子だったが


「わかった・・・本当なら信じられない様なお伽話だけど・・今の進を見ると話しのつじつまが合ってると思う・・」


「そうね・・確かに私らの知ってるすすむんとよく似ているけど、この世界の知識も無いし別人と言われるとそうなのかもしれないわね・・・」


暫くの沈黙の後で雫が口を開く


「あなたが此処に居るって事は、私等のすすむんは貴方の居た世界に転生したのかしら?」


その質問には俺は答えを持ち合わせてないので首を振る


「そう・・・そうよね・・・で、あなたは此れからどうするの?」


「おれは・・・元の世界に戻る方法を探そうと思う・・そうする事で君らの龍道 進がこの世界に戻って来れるかも知れないし・・」




「たしかに・・・たしかにそうね・・分かった私も協力する!!」


「五月それでいいの?ここに居る彼は別のすすむんだけど・・・」


五月は首を振り


「わかってる・・でも私、進の為に出来ることは何でもしたいの!そしてもう一度彼に逢って素直な気持ちを伝えたいの!」


「そうねぇ・・・じゃ別の世界のすすむん!今日からは私らも協力者ということで、貴方を元の世界に戻す方法を一緒に探すわ」


そういうと雫は俺に手を差し出した


「ああ、宜しく頼む・・・蜂須賀さん」


その手を取り握手すると、そっとその上に五月が手をのせる


「もう今更苗字で呼ぶのおかしいから、名前呼びでいいよ・・」


「ああ、分かった改めて宜しく頼む、雫、五月」


二人は笑顔で俺に微笑み返して


「ふふ、お手柔らかにw」「ええ、任せておきなさい」


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