「それじゃ本題のすすむんがウエアウルフに立ち向かった時の話をしましょう」
雫がそういうと、俺に手を握られて頬を赤らめていた五月が真剣な表情にかわる
「ええ、そうね・・・まずウエアウルフって言うのはどんなモンスターか分かる?」
おれは軽く首をふる
「そうね・・・私らも初めて見たから、すすむんが知らなくても無理はないわね・・」
「ウエアウルフっていうのは中級の人狼型の魔物なの、本当ならギルドがパーティを組んで討伐するクラスの魔物」
「中級ってどのくらい強いんだ?」
「そうね・・討伐するならAランク一人とBランク一人とCランク二人の四人パーティか、Bランク四人のパーティで何とか勝てる位の魔物ね」
「ちなみにスライムは下級の魔物で、ランク外のタレント持ちでも一人で討伐できるからそのウエアウルフがいかに強い魔物か分かるわよね」
実際にスライムに手も足も出なかった自分にとっては想像もできないレベルの話だ
「でもそんな魔物が居るのに何でこの町では皆、普通に生活しているの?」
おれは素直に疑問に思ったことを訪ねた
「それはこの町というか各町には、結界と呼ばれる魔物を寄せ付けない強力な呪術装置があって町の中には強力な魔物が侵入出来ない様になってるの」
「え?でもスライムはあちこちに居るんだよね?結界があるのに何でなの?」
「そうねぇ~結界っていうのは言うならザルの様な物で、大きな物は隙間を通れないけど小さな物には効果が無いの」
「ということは、強力な魔物を防ぐ代わりに弱い魔物には効果が無いって事?」
二人は俺の答えに頷き話を続ける
「その本来は入って来ないはずの中級の魔物のウエアウルフが私たちが学校から帰る途中で休んでいた公園に現れたの」
「そ、それは・・・何でなんだ?」
五月は辛そうに首を振る
「それは私達にも分からない・・どこかから侵入したと言うより急に現れたって感じだった・・・魔族の新しいスキルなのか・・・新魔法なのか・・」
「ごめん、話の腰を折ったね・・続けて」
「え、ええ、公園は騒然となったの当然よね公園に居たのはお年寄りと子供が多くて・・・そんな中で小さな子供が逃げ遅れてしまって、庇ったお婆さんがダメージを受けてしまって・・・」
「五月と雫が助けに入ったんだね・・・」
俺は二人の勇気ある行動を賞賛したつもりが、二人の表情はどこか暗く苦い顔をしていて俺と目を合わせない
「そうね・・今思えば軽率だったと思う・・でもあの時はそうしなきゃと・・・雫はすぐにお婆さんの治療を始めて私はウエアウルフに呪文で応戦したの」
「でも・・全く通用しなくて、でも何とか子供とお婆さんが逃げる時間を稼がないと思って必死に戦っていたらMPが枯渇してしまって・・私を助けようと傍にきてくれた雫と一緒にウエアウルフの爪に引き裂かれる寸前に」
「すすむん、貴方が駆け付けてくれてウエアウルフを突き飛ばして私たちに「ここから逃げろ!」って突っ込んで行ったの」
「進は素手で果敢にウエアウルフを抑え込んで何度も爪で引っかかれて・・・沢山傷ついて・・・それでも私たちの逃げる時間を稼ごうと・・・必死に・・」
「そしたら・・・そしたら・・・うっっ・・ごめん・・」
「五月・・必死に抵抗していたけど、最終的にあなたはウエアウルフにお腹を貫かれて瀕死のダメージを負ったの・・・その光景に私も五月も怖くて動けなくて・・・」
「でも・・あなたを見て何かに気づいて怯えるようにウエアウルフはどこかに逃げて行ったの・・・後から聞いたら町から外に逃げるウエアウルフを見たっていう守衛者の人がいたから元の自分の縄張りに戻ったんじゃないかって」
急に二人は俺に頭を下げる
「ごめんなさい!私たちの軽率な行動で貴方は重症を負って、その上記憶まで無くして・・・・私たちの責任です・・」
「すすむん、私たちが貴方の事を好きになったのは一目惚れだったけど、あの時助けてもらって命を救われて・・・この命は貴方の為に使いたいの!」
「私も同じ気持ち!私達で進を支えたいの!だから・・・・だから・・・・」
俺は二人の優しい心に触れて自分の胸に刺さるわだかまりがチクチクと痛みを増す
「二人は優しいね・・・謝る事なんか無いよ・・だけど俺は・・・・・」
「進・・・・」「すすむん・・・」
真っ直ぐ自分の気持ちに向き合ってる彼女たちにこれ以上、俺を偽ったまま一緒に居ることは出来ない
何故なら彼女たちの愛する龍道 進と俺は別の人間なのだから・・・・