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第8話 この世界の事


「すすむん、やはりどこか調子が悪いんじゃない?」


「そうだよ・・・ウエアウルフに勇敢に立ち向かっていった進がスライム程度に遅れを取るはずないもん!」


・・・・・え?おれが何に向かって行ったって?



どうやら俺は夢の世界に居るのでは無く、現実世界と酷似した別の世界に居る様だ・・・・


「あ、あの・・この世界・・いや・・今日って何年何月何日なんだ?」


顔を青くして小刻みに震える俺を心配そうに見つめる二人がそっと肩に手をおいて答える


「今日は龍壮暦りゅうそうれき1224年6月2日だよ、昏睡してて少し記憶が混乱してるのかもね」


「そうだね、この町の結界を超えれるはずのない中級以上のモンスターのウエアウルフに向かっていって生きてるだけでも奇跡だから、進の体のどこかに後遺症があってもおかしくないよ・・」


「ごめん・・二人とも俺何も覚えてなくて・・・も少し詳しく教えてくれないか・・」


すると二人は少し話が長くなるからと、バイト終わりに食事をしながらゆっくり話そうと言ってくれた


その日のバイト中にさっきのスライムらしき化け物は2回も現れた、それぞれ五月の魔法と雫の破邪の呪文で追い払ってもらった


「すすむん、ナイフが装備出来ないとか聞いたことないから・・・日を改めて【協会】にも行ってみよう?」


「私、お父さんに頼んで営業時間外でも【タレント】を鑑定してもらえるようにするから・・きっと大丈夫だよ」


元の世界の二人と違い、この世界の二人は俺に優しい・・・夢だと思ってたが異世界だとわかり不安な気持ちと混乱から


「うっっう、っう・・・・二人とも・・ごめん・・ありがと・・きっとこの恩は返すから・・・本当にありがと・・うっ」


すると優しく二人は微笑み頷いてくれた





それから俺たちはバイトを終えて、近くのファミレスに集まっていた


「どこから話そうか・・・」


「五月すまない、この世界の事から教えてくれ・・」


五月と雫は何も聞かずに静かに頷いて話だした


「この世界には、私たち人間属と魔物を使役する魔族、そして滅多に姿を見せないけど竜族の3種族が存在してるの」


「さっきのスライムも魔族なのか?」


五月は首をふる


「あれは、魔物と呼ばれる魔族の使役するモンスターだよ、スライムはその中でも最下層の魔物で世界の至る所に居るの、分裂して増殖するから倒しても倒しても増えてくの・・・人間にはそんなに脅威ではないけど食べ物とか家畜なんかに害を及ぼすから厄介だよ」


「店長と五月は魔法を使っていたけど・・・雫は魔法で倒すというより浄化してるみたいだった、あれは何?」


こんどは雫が俺に腕を絡めて上目使いで答える


「五月と店長さんはマジシャンの【タレント】で私は【ヒーラー】のタレントなの、店長さんはCランクのマジシャンで初級魔法しか使えないけど五月はBランクで中級魔法までつかえるの♡、ちなみに私もBランクで中級の治療魔法まで使えるのよwいつでもすすむんを癒しちゃう♡」


「コホンッ!雫今は大事な話をしてるんだから、あまり進にベタベタしないで!」


すると雫はス――っと俺の手に視線を移すと


「へぇ~じゃその手は何なの?五月・・・」


言おうか言うまいか迷っていたが俺のてを五月がそっと握っていた


「い、いいじゃない!進の隣にどうしても座りたいって雫が駄々こねるから譲ったのに!このくらい大目に見てよ!」


「ふ、ふたりとも・・・そのお店で騒いじゃ・・それより話の続きを・・」


二人は俺の言葉に少し肩を落として苦笑いすると、咳払いして話を続けた


「マジシャンは火水土風の4属性の攻撃魔法が使える【タレント】でヒーラーは傷の治療や状態異常の回復がメインの【タレント】なのだけど中級の治療魔法には浄化と魔除けの魔法があって雫の使ったのは浄化の魔法なのよ」


「その・・・さっきから言ってる【タレント】って何なの?職業みたいな物なのかな」


すると五月はどう答えたら良いのか分からず顎に手をおいて悩んでる


「そうねぇ【タレント】っていうのは持って生まれた資質みたいなもので、すすむんの言う職業っていうのは私らみたいなコンビニ店員とか警備員とかみたいな定職の事を言うから少し違うかな?」


「なるほど・・・でも転職とかクラスチェンジとかで簡単に【タレント】って変更できるんだよね?」


俺の言葉に五月や雫だけでなくたまたま通りかかったウエイトレスのお姉さん(可愛い)も驚く、五月は慌てて振り返りウエイトレスのお姉さんに「冗談です(笑)」と誤魔化してその場は収まった


『ちょっと!大きな声でそんな事言ったら変に思われるじゃない』と顔を寄せて口元を手で隠し小声で俺に告げる


「す、すまない・・・」


「まぁいいじゃない、すすむん【タレント】っていうのは生まれ持った資質で一生変わる事はないの」


「じゃクラスチェンジとかは無いの?」


「あるにはあるけど、上級のクラスにチェンジするには類稀な資質を持つ者が数えきれない程の練度をこなして初めて出来るの」


俺の知ってるドラゴンロードでは条件を満たせばクラスチェンジも出来たし、一度覚えた職業は何時でも教会で転職できたからな・・・


「それじゃ俺の【タレント】って何なんだろ・・」


「それは私たちが聞きたい位だわ、普通は小学校の体育の時間で【タレント】を判別して中学卒業の時にランクが確定するんだけど・・・」


「ランクは才能もあるけど熟練度によっても上昇するからあてにならないけどね♡」


俺の腕に自分の爆乳を押し付けて、俺の腕に頬ずりする雫を冷たい目で見る五月が答える


「でも、初期武器のナイフが装備出来ない【タレント】とか聞いたことないけど・・」


「それは今度五月のお父さんの知り合いの協会で鑑定してもらえば分かる事だし今気にして仕方ないわよwね~すすむん♡」


目の前の五月の顔色が見る見る変わってくので俺は握った手に少し力を込めると


「ひゃっっ」驚きならがらも顔を赤らめ握り返してくる五月、こんどは雫が少し不機嫌そうにしてる




「それじゃ本題のすすむんがウエアウルフに立ち向かった時の話をしましょう」



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