「う、う――――ん・・・良く寝たな・・」
起き上がり辺りを見渡すと・・・・リビングの棚の上に飾ってる父と母の写真が目に入ってきた・・・・
「おかしいな・・・寝て起きたら夢から覚めてると思ったのに・・・」
部屋の隅に置いてあるレトロゲームも昨日のまま放置してある・・・
「もしかして俺って重症で今昏睡状態とか?・・・目が覚めたら10年後とか勘弁してほしいな・・・」
27歳彼女無し、今のまま37歳になったら絶望しかない・・・30歳まで童貞なら魔法使いになるとか言うけど37歳まで童貞なら勇者にならんかな?
そんなつまらない事を考えながらもバイトの時間が迫ってるので支度をする
「はぁ・・夢なのにバイトしにコンビニに向かおうとする俺って・・・」
身支度を整えバイト先に向かう・・・(早く夢から覚めて現実に戻り体を治して、ドラゴンロードの続きをしないと・・・・)
バイト先のコンビニ向かう道中の様子も昨日と同じで少し違って見える
『求む!Cランク以上のファイターサザンクロスギルド』
『スカウトの技術を向上しませんか?Aランクシーフ育成実績No1マウスキッド』
『優秀なマジシャン派遣しますA~Dランク在籍、鳥居スタッフサービス』
至る所の看板や映像掲示板に時々見たことも聞いたこともない会社の広告が映っている、まぁ中にはイ〇オンとかヤ〇ダ電気とかもあるから妙にリアルだけどな・・・
コンビの裏手に回ると昨日そのままにしていた俺の自転車が停めてあった
(こういう時はご都合主義で自宅に転送しておいてくれたら良いのにな)
裏手からスタッフルームに入り自分のロッカーからシャツとエプロンを身に着けると、タイムカードを押そうとしたが
「ん?なんだこれ?『スライム注意月間、商品被害0宣言』あの二人の悪戯かな?」
俺は気にせずに店内に入ると「おはようございます」と剥げてる店長に頭を下げ挨拶する
「ああ、龍道君おはよう今日はしっかり頼むね」
(今日は、は余計だろ・・・)「はい、頑張ります・・」
店にはまだ客が来る時間では無いので店内の清掃をする、スタッフルームからモップとバケツを持ち出し床を磨く、俺は接客するよりこうして店内の清掃をする方が性にあってる
黙々と清掃作業をしていると・・・・・
「ん?あれは・・・・なんだろ?」
見てみると店の入り口の自動ドアの下の隙間から透明な液体の様なものがウニウニと入って来た(なんか・・動いてるぞ?水たまりじゃないのか?)
おれはモップで店の外に出そうと水たまりにモップを当てた瞬間
【ジュゥゥゥ】モップの先の部分が焼け焦げた様に黒く変色していく!
「な!?て、店長!!!なんか変なのがぁぁぁ」
俺の叫び声に奥で棚入れをしていた店長が駆け付けるが俺の指さ物体を見ると呆れた様に
「・・・・龍道君・・そんなんでいちいち呼ばないでくれる?」
つまらなそうに溜息をつきながら飲み物の棚入れに戻ろうする
「い、いやちょっと!!何なんですかこれ!!モップが、モップの先が焦げちゃいましたよ!!」
俺の持ちあげた先のモップを見て再び溜息をつき
「龍道君・・君ね・・それはアイテムでしょ?ちゃんと武器で攻撃しなよ・・・」
店長の言葉が理解できずにポカーンとしてると店長はカウンターを指さして「カウンターの下にナイフがあるからそれ使って、てか面接の時に説明したじゃない」
俺は理解できないが恐怖から慌ててカウンターに乗り上げ上から覗くとレジの下には確かにナイフが置いてあった、俺は急いでナイフを取り出すとカバーを取り外して手に掴み替える
が・・・・
ポロッ・・・・手にナイフが馴染まない、も一度拾って手に握ろうとすると、ポロッなんだこれ・・・家では普通に包丁でも握れるのに・・・おかしい!!
「不味い不味い不味い!」慌てるおれは何度もナイフを拾っては落とすを繰り返していた、そんな俺の姿をみて3度目の溜息を吐きながら
「何してんの・・・龍道君・・ふざけるのもいい加減にしないとスライムに商品ダメにされるでしょ・・・はぁ・・全く・・」
そういうと目を瞑り手のひらを水の物体に向けると
「我求めるは赤き炎・・ファイアー」店長が呪文の様な物を唱えると手のひらから小さな炎の玉が飛び出しゼリー状の化け物に当たると一瞬で消える
「えっ・・・・うっそ・・・」焼け焦げた匂いと共に水たまりの物体は煙となり消えた
状況に驚き無様に床に腰を抜かして座りこける俺に店長は冷ややかな目で告げる
「龍道君さぁ、今の何?あんなスライムなんか中学生でも倒せるし、いまじゃ小学生でも討伐できるように習ってるって聞くよ?君さぁ大丈夫?」
「ス、スライム?あれがスライムって事ですか!?」
「何言ってんの?スライムなんか珍しくないでしょ・・・今日の君おかしいよ?ほらそんな所に座ってないで、そろそろ五月君と澪君のくる時間だし棚出しの準備して!」
焼け焦げたモップを手に持ち立ち上がると「ああ、モップの弁償は君の給料から引いとくから」・・・このドケチ親父が!
モップが無いので雑巾でスライムの焼け跡を綺麗に掃除してから棚出しの為に奥から商品の入った段ボールを用意してると
「ヤッホ~すすむん♡来たよ~」
「き、昨日ぶり・・・体はもう平気?」
二人の様子が俺の知ってる鳥居さんと蜂須賀さんとは違ってる
「あ、あの昨日はお世話になりました・・・鳥居さんも蜂須賀さんもありがとうございます」
二人に頭を下げると、二人とも不機嫌になる
「すすむん!私の事は澪って呼んでくれるんじゃないの!もう私ら恋人でしょ」
「そ、そうだ!私も五月ってよんでくれなきゃだめじゃん、昨日そ、そのキスもしたのに・・・」
どうやら昨日の一件は夢では無かったらしい、いや今も夢の中なのか・・・そんな俺らの様子に不機嫌になる店長
「君らいつの間にか仲良くなったみたいだけど、五月君も澪君も龍道君はやめといた方がいいよ、さっきもスライム程度に腰を抜かして全く役に立たなかったんだから」
そう鼻で笑いながら俺を一瞥すると二人にヤラシイ目を向ける
「そんな役に立たない男より僕はどう?今の妻とも暫くご無沙汰だし、君たちなら喜んで妻に迎えるよぉ――――」
「「結構です!」」虫けらでも見るような目で店長を睨むと、店長はバツが悪そうにスゴスゴとスタッフルームに引き上げて行った
店長が居なくなったのを確認して二人は俺の方を振り向き心配そうにすり寄る
「すすむん、やはりどこか調子が悪いんじゃない?」
「そうだよ・・・ウエアウルフに向かっていった進がスライム程度に遅れを取るはずないもん!」
・・・・・え?おれが何に向かって行ったって?
どうやら俺は夢の世界に居るのでは無く、現実世界と酷似した別の世界に居る様だ・・・・