(はぁ~ぁ、平和だねぇ~そういえば昨日買ったサンドイッチ賞味期限今日までだったなぁ~あ、もうじき14時かぁ~)
「龍道君・・・君、困るよ・・・うちの店で一番長いのに、君が一番棚入れ替え遅いんじゃ、後輩の子に示し付かないよ・・て、聞いてるの?」
「はぃ・・・申訳ありません・・店長・・・」
全国チェーン店の駅前に有るコンビニの奥にあるスタッフブースで、頭が少し薄くなった小太りの中年のオジサンに、これまたパーマの掛かった髪が野暮ったく伸び、目元も隠れ無精髭が不潔な印象の20代後半のオジサンが、無駄に大きな体を覇気なく丸め小さくなって今怒られている
(今おこられ中now!って感じかな)
と、オッサンには似合わないワードを思いついたのにも理由がある、
目元まで伸びた前髪で目線が分からないのを良い事に、そっと自分の後ろの入り口を見ると最近入ってきた、やたら偏差値の高い聖堂女学園に通う女子高生二人がニヤニヤしながら此方の様子をみてヒソヒソと俺の事を馬鹿にしてる
(はぁ・・・そんな所でサボってても俺の様に怒られないのって不公平・・これが社会の縮図か~」
目線を戻すとチラッと入口で覗いてる女子高生を見て口元を緩めたが直ぐに俺の方に視線を戻し真顔で威厳のある所を見せようと虚勢を見せる店長
(お生憎様~女子高生からしたらアンタはただの頭の薄いオッサンだよぉ~、まぁ俺も冴えないオッサンの属性だけどね・・・)
「龍道君さぁこの店に来る前にも他のコンビニでバイトしてたんでしょ?何年このバイトしてるの?」
目の前で腕を組み、溜息交じりに目を細めて呆れた表情で俺をみる店長
「はぃ・・その・・前の店と併せて・・・5年程・・」
【プッっっっ】【マジ答えてるのwウケるんですけどぉw】
(こっちは耳だけは良いから、君たちの話聞こえてるんですけどぉ~)
入口で口元に手を充てて笑う女子高生・・・・俺君らの倍近く生きてるんだけど・・・まぁ花も実も無い人生だけどもね・・・
「とにかく!龍道君には先輩として後輩の見本となる様にしてもらわないと!!分かった?」
「はぃ・・・頑張ります・・・その・・申し訳御座いませんでした・・・」
店長の女子高生に対しドヤッてる顔を見たくないので、エプロンに付いてる【店長】のバッジに頭を下げる
【チロリン♪(店の自動ドアの開く音)】「いらっしゃいませ~~」
【チロリン♪】「いらっしゃいませ~~」
【チロリン♪】「いらっしゃいませ~~」
俺はレジの前に立ち、店内の奥に吊ってる時計に念力を送っていた
(針よ!もっと早く進むのだぁぁぁ)
早くバイト時間が終わらないかと罪の無い時計に全力の殺気を纏う念力を送り凝視する俺は、
折角の天然パーマも野暮ったく、無精ヒゲも不潔、折角の190㎝近い高身長も何もしてないのに無駄に筋肉質な身体も自信の無さから常に猫背で生活してるため陰気な印象しか醸し出してない
学生時代も、他人と上手く話せないので、彼女どこか友達すら居ない、理由があり帰宅部だったので、学校でもいつも孤立していた
遠足、修学旅行、郊外学習の時はいつもグループ代表のお荷物ジャンケンの景品扱いだったが、何もしてないのにやたらガタイが良かったのでイジメに遭うような事が無かったのは、亡くなった両親に感謝だ
でもまぁ性格だけはどうしようも無く、親が残してくれた貯金と有価証券、それに生命保険金で一人で生活するのには困らないが、孤独な老後が年々現実味を帯びてきており、いざという時に貯金もないと困るので働かない訳にもいかず三流大学を出た後、唯一採用された小さな商社に勤めては見たが
今と同じ様に上司の若い女課長に毎日小言を言われる日々が待っていた、なんとか耐えて1年程は努めてみたものの、結局精神的に疲れてしまい退職してしまった
以降はこうして、コンビバイトを転々とする生活を送っている。
【チロリン♪】「いらっしゃいませ~~」
「プッッいやいや、いらっいませじゃねぇ―し」
「オッサンwうち等外の掃除から戻ってきたんだしぃwここは、お疲れさま~ぁでしょ?w」
さっき店長に怒られているのを馬鹿にしながら見ていた二人の女子高生
「なぁなにジロジロみてんだぁ?おっさん!エロい目で見んなよ、この童貞オヤジが!」
この口の聞き方が悪いのが、鳥宮さんだ金髪のショートヘアで俺の時代ならスケ番とか言ってしまいそうたが、今言うと古代人扱いされてしまうのでやめとこう
顔も整っていて、少し目元がキツイ印象が有るが十分美人なレベルだ実際に来店するチャラそうな客から何度もナンパされているのを目撃しているがその都度、冷たく上手に、完膚なきまで心を折り撃退していた、しかし意外と子供が好きなのか、泣いてる子供を見かけると聖母の様な優しい笑顔であやしているのを見た男性客のハートを打ち抜いて、次々ファンを増やしている。
「オッサンw彼女が居なくて寂しいのは判るけどw女子高生に欲情して相手してもらおうとか10年早いじゃなくw10年遅いよw」
こっちのやたら語尾に草生やしているのが蜂須賀さんだ、彼女は黒く長い髪を後ろで束ねており、少し垂れ目気味だが大きな瞳に長いまつ毛、なにより潤んだ肉厚の唇が妖艶だ、スレンダーな鳥宮さんと対称的に抜群のプロポーションで、とても高校生とは思えない胸の発育ぶりに店の制服は悲鳴をあげてる、来店する男性客の98%(当社調べ)は一度はチラ見している、彼女に相手をしてもらおうと、
「・・・・・・・・」
この二人との最初のエンカウントは今でも覚えてる、あれは数ヶ月前に二人が客として店に来店してからだ、その際も俺の事をイジッてきた
「ちょっとぉ店員さぁん、ウチ等客なんでぇあんまヤラシい目で見ないでもらえますぅ?」
「ちっとw五月ぃこの店員さん前髪で目が見えないのに目線分かるとか、プっっwwウケるww」
「と、ところで、ね、ねぇ、店員さんって結婚とかしてるの?」
「い、いえ・・・独身です・・・」
「彼女とか・・・・居ないよね?」
「はい・・・いませんが・・・」
「そ、そんなの見たら分かるじゃん澪!」
「そ、そうだよねぇwうん、見たらわかるよねぇw」
「・・・・お買い上げ有難うございました、お釣りをお忘れなく・・またのご来店を・・・・お待ちしてます・・」
それからも度々俺がシフトの時を狙って来店しては、彼女が居ない事や容姿を馬鹿にしてイジッてきた、そんなある日
「龍道君、今日から入る新しいアルバイトの子達だから、一通り君から教えてあげてね」
「「よろしくお願いしま~ぁ~す」w」
二人同時にバイトとして入って来て・・・・・そして今に至る・・
俺は二人を無視しさらに念を強め、店内の時計の針が早く進むよう両拳を強く握り祈った
「ちょっと!こっち見て何か言いなさいよ!無視とか有り得ないんですけど!」
「もしかして、オジサンwウチ等みて興奮して身体の一部が反応したから、カウンターから出られないとかぁ?w」
「うっわ~、それマジならキモすぎ・・・」
(5、4、3、2、1、0)
「お疲れ様でした・・」
そう二人に告げると裏のスタッフルームに足早に駆け込んだ
「あ、ちょっ!私は興奮してくれても・・」「あ、無視したままで逃げんなぁぁぁ」なにか二人が言ってたが耳を塞いで無視すると、手早く自分のタイムカードを押して男子更衣室でエプロンと上着を脱ぎロッカーに入れると、裏の勝手口から急ぎ飛び出し、停めてた自転車に跨ると全力で自宅に帰る
「ふぅぅぅ」
自宅に戻ると気分が楽になる、手を洗いコンビニの期限ギリギリで廃棄前の貰ってきた弁当をレンジで温める
「父さん、母さんただいま・・」両親の写真と遺影を前に手を合わせると、レンジから温まった弁当を取り出し取り合えず腹を満たす
シャワーだけ軽く済ますと、ボサボサの髪の毛を上で束ね、レトロゲーム機の電源を入れる
≪ドラゴン ロード≫
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コントローラーのボタンを操作し画面を見ないで、飲み物やお菓子を用意する
もう慣れた物で目を瞑っていても何処が村の出口で、宿屋が何処か教会がどこか判る
「さぁ今日こそカンストさせるぞ!!」