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魔術が苦手な魔術学校の新入生は、実は世界を救える勇者です
井の中に居過ぎた蛙
異世界ファンタジー冒険・バトル
2024年08月26日
公開日
0文字
連載中
今から10年前、人に害を成す魔人たち及びその王との戦いで、世界を救った勇者と呼ばれた男が姿を消した……と思ったら、何故か今年になって世界最大の魔術学校に入学していた。若返った姿で偽名まで使い、しかも常に最下位の成績を叩き出す学園きっての最弱と呼ばれる程に弱くもなって。

そんな彼の目的は魔術学校に眠る至宝――魔術創成期から存在するという全ての魔術が記されているという伝説の書物だ。

でも、成績が振るわないので閲覧権が手に入らない!
しかも魔人の王の言葉を魔人たちは聞いちゃいないので、今も好き勝手暴れる始末!

そうして、世界を平和にするという魔人の王と交わした約束を守るため、今日も勇者は誰かのために戦うことに。

本作は小説家になろう様、カクヨム様、アルファポリス様でも配信させていただいております。

伝説の始まり(すっとぼけ)



 ――本当、君ってば僕たちの力なんか必要としてくれないんだから。



 それは俺が親友からよく言われていた言葉であった。


 しかし、そう言われても正直困る。


 魔人を倒すことも、魔獣を狩ることも、それ以外の諸々を討ち果たすことも、俺にとっては大した苦じゃ無いんだから。


 なら、自分でできることは自分でやった方が手っ取り早くていいだろう?



 ――それはまぁ、そうだけどさ。でもいつか誰かを頼りにしなくちゃならない時が来たらどうするのさ? 使が、使う必要に迫られた時とか。



 そんなの決まっている。

 そうならないようにもっと鍛えればいいだけだ。


 この体を、技を。


 そんな時なんてこなくて済むように。



 ――脳筋。



 そいつはどうも。




 そうして、彼は実際に多くの者を救ってきた。


 悪しき心から。

 理不尽な強さから。

 不条理な常識から。


 彼は全てを救ってきた――否、全てを救ってきてしまったのだ。



 だからこそ……彼は後悔している。



「……あ~、ルーザーの反則行為により……勝者、メゴボル」

「……」



 ――魔術が全く使えない君が、使う必要に迫られた時とか。



 なにせ、その時が今まさに来てしまっていると。


 魔術。それは大気や自然は勿論のこと、万物の源にして、世界の根幹を成す物質である"マナ"を、自分の思い描く形へと変質させる奇跡の御業。


 そんな魔術を学ぶべく多くの人が集まるここアールスウェルデ魔術学校が誇る巨大な室内グラウンドで、今も多くの者たちがその魔術を用いた模擬戦という名の実技の授業を行っている中、ルーザーと対戦相手の授業は、先程の審判と思しき男性の言葉通り、魔術を用いない攻撃――即ち反則行為を行ったルーザーの敗北ですぐさま終わっていたと。


 古代に使われていたというエミテミル語で『負け犬』を意味する言葉を自身の名に定めたこの物語の主人公であり、元は勇者として名立たる活躍をしてきた少年"ルーザー"が、魔術を使えないが故に魔術を用いないグーパンで対戦相手を殴り飛ばし、名前通りの敗北を喫していたと、今の彼はあの時の言葉を深く深く理解してしまっていたのであった。


「……なるほど。親友あいつの話、ちゃんと聞いておきゃ良かったな~」


 遠い目で空も何も見えない天井を1人見上げながら。


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