――本当、君ってば僕たちの力なんか必要としてくれないんだから。
それは俺が親友からよく言われていた言葉であった。
しかし、そう言われても正直困る。
魔人を倒すことも、魔獣を狩ることも、それ以外の諸々を討ち果たすことも、俺にとっては大した苦じゃ無いんだから。
なら、自分でできることは自分でやった方が手っ取り早くていいだろう?
――それはまぁ、そうだけどさ。でもいつか誰かを頼りにしなくちゃならない時が来たらどうするのさ?
そんなの決まっている。
そうならないようにもっと鍛えればいいだけだ。
この体を、技を。
そんな時なんてこなくて済むように。
――脳筋。
そいつはどうも。
そうして、彼は実際に多くの者を救ってきた。
悪しき心から。
理不尽な強さから。
不条理な常識から。
彼は全てを救ってきた――否、全てを救ってきてしまったのだ。
だからこそ……彼は後悔している。
「……あ~、ルーザーの反則行為により……勝者、メゴボル」
「……」
――魔術が全く使えない君が、使う必要に迫られた時とか。
なにせ、その時が今まさに来てしまっていると。
魔術。それは大気や自然は勿論のこと、万物の源にして、世界の根幹を成す物質である"マナ"を、自分の思い描く形へと変質させる奇跡の御業。
そんな魔術を学ぶべく多くの人が集まるここアールスウェルデ魔術学校が誇る巨大な室内グラウンドで、今も多くの者たちがその魔術を用いた模擬戦という名の実技の授業を行っている中、ルーザーと対戦相手の授業は、先程の審判と思しき男性の言葉通り、魔術を用いない攻撃――即ち反則行為を行ったルーザーの敗北ですぐさま終わっていたと。
古代に使われていたというエミテミル語で『負け犬』を意味する言葉を自身の名に定めたこの物語の主人公であり、元は勇者として名立たる活躍をしてきた
「……なるほど。
遠い目で空も何も見えない天井を1人見上げながら。