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第46話: 恭介夫婦の休養。~後編~ -EX4-

 魔道通話が切れて、しばらく後にサラさんと、シエラさまが部屋に入ってきた。

 真っ先に俺たちに声をかけたのは、シエラさまのほうだ。


「やっほ~☆、キョウスケ殿、ご飯を持ってきたわ。私たちはギルドと勇者様への伝達係の名目で宿屋に入ってきたのよ。」


 そうすると、サラさんは、収納魔法から胃に優しそうなスープや、柔らかそうなパン、それにサラダや、例の川で獲れた魚のムニエルなどを出してテーブルに並べていく。


 俺は2人にお礼を言いつつも、少しだけサラさんに、シエラさまが一緒についているコトに疑問を呈すことにした。


「シエラさまとサラさん、ありがとう。命の恩人だよ。ところで、サラさんは何故、シエラさまと?」


「いやね、あの広場にある食堂の店主に声をかけていたら、ちょうどシエラさまが食事をしていてね。彼女も私と同じで魔力不足だから、トリスタンさま達と一緒に行動をせずに、ゆっくりと休養をとっている感じなのよ。そこで、私が不自然に2人分の食事を店主に注文していたから、女の勘でバレてしまったのよ。」


 そこで俺は苦笑いをしていると、シエラさまが俺にツッコミを入れる。


「キョウスケ殿はあまり分からないかも知れないけど、宮廷魔術師の中には、あなた以上に術式マニアな人とか、微量な魔力をすぐさま探知するような、犬のように微量な魔力の鼻が利く魔術師もいるから、無闇にこんなところで術式を展開するのは危ないわ。」


 シエラさまの話を聞いて、俺や陽葵は溜息をつくばかりだった。


 ほんとは、その食事転送装置を使って、誰にも邪魔されることなく、2人っきりで、あーん♡をやりまくって、ラブラブな食事ができる日々を過ごしたかったのだ。


 これでは計画が台無しだし、今はフラフラで宿屋の調理場などを借りてお弁当や料理などもできないから、しばらくの間は「アーン♡」は封印だろう…。


 俺のそんな想いは置いといて、俺は陽葵の頭を無意識のうちになでつつ、シエラさまに言葉をかえす。


「シエラさま、それは気づかずに申し訳ありませんでした。微妙なところでツメが甘いのは、うちの師匠から常日頃から怒られていたので、そんなわたしが迂闊でした。」


 陽葵は俺に頭をなでられて、少し恥ずかしそうにしていたのを見て、俺が無意識で陽葵の頭をなでているのが、人前であったことにハッと気づく。


 そんな姿を見たサラさんが冷静にツッコミを入れた。


「キョウスケさん、もう、私は慣れているけど、やっぱり2人はとてもラブラブよね…。もぉ、私だって、そろそろ、信頼がおける恋人が欲しいところよ。あなたたち夫婦を見ていると、太陽のように眩しすぎるぐらい、愛情がいっぱいなのが分かるから、アフロディーテ様がお気に召したのが、よく分かるもの。」


 その横で顔を紅くしながら俺と陽葵を見ていたのはシエラさまのほうだ。


「ヒマリ殿、やっぱりキョウスケ殿は無意識のうちに、頭をなでてしまうぐらい、ヒマリ殿のことを愛しているのね。やっぱり、そういう仲は羨ましいわ。私なんて、お相手が勇者様だから、人前では、できることが限られるのは当然だから、ちょっと、もどかしい時があるのよ。」


 俺は困ったように、頭をかくばかりだった…。


 その後、食事をしながら、シエラさまとサラさんを交えて、あの時の戦いについて、少しふりかえっていた。


 サラさんが俺に魔力を融通している間に、槍を持ったガーゴイルが襲ってきたのだが、それをセシルさんが懸命に守ったことで、命を落としたことや、シエラさまもサラさんも、全魔力を融通していたので、休みながら魔力を回復していかないと、体がもたないことなども明かされた。


「しかし、キョウスケさんは、その融通された魔力を自分の魔力に変えて、私たちよりも、立てないぐらいの全魔力を術式構築と魔法制御に費やしたから、普通に考えたら、とんでもないことだわ。攻撃に使う魔力をケビン導師長やシエラ様に頼って、アフロディーテ様の神気をヒマリさんが全力を尽くして、入れていたのよね…。」


 サラさんがそう言うと、陽葵が少し冷めたスープを飲みながら、うなずいている。


「サラさん、その通りよ。今は地上に降りたアフロディーテ様がいるけど、あれでも自らの身を分けた分身なのよ。本体は天上界にいて、そこから神気を融通してもらっている事には変わらないの。神様は偉大すぎるのよ。そのまま全力でアフロディーテ様が地上に降りてしまったら、手加減ができなくて、一発でローランの国が終わると言っていたわ…。」


 それを聞いた俺や、シエラさま、それにサラさんがポカンと口を開けていたが、しばらく間があって、ようやく、シエラさまの口が開いた。


「かっ、神様って偉大よね…。絶対に人間なんて及びもしないわ。あれで力が抑えられた分身なのかと思うと、天上界にいる神様って凄すぎるのよね…。」


「うーん、アフロディーテ様は天上界からの神気だけで、魔物の谷の魔物を一気に5万も消滅させるほどですからね。あれでも全力じゃないから、本当に凄すぎるのですが…。」


 陽葵が思い当たる節がありすぎてクスッと笑ったが、それ以上、具体的なことは言えないので、コレが限界だ。


 そのうち、話ながら食事を終えると、サラさんが、食べ終えた食器を収納魔法にしまいながら、俺たちに声をかける。


「大丈夫よ、このまま夜になったら、また私たちが食事を持って来るわ。宿の前にいるネッキー騎士団長には、ギルドと勇者様への定期連絡と言っているし、普通に捉えて、怪しんでいる様子はないわ。」


 俺はサラさんの言葉にうなずきながら、懐からお金の入った袋を取り出して、金貨を3枚渡した。

 サラさん、4日分の食費と駄賃だと思ってください。余った分はシエラ様と分けて夜に飲みにでも行って下さいよ。


 陽葵もそれを見て激しくうなずいている。


 流石に断れないと思ったサラさんは、苦笑いしながら受け取った。


「キョウスケさんと、ヒマリさんからお金なんて受け取れないわよ。でもね、2人の気持ちを買ったわ。大丈夫、あとで、これは何かのお礼にして返すからね。」


 2人は少々の魔力不足でも、まだ、お酒は飲めるだけの体力は残しているらしい。


「受け取ってくれて助かります。しかし、サラさんも、シエラさまも、なかなか、魔力不足で辛いと思うのに、よく動けますね?。」


 そんな俺のツッコミに、シエラさまが小瓶を取り出した。


「偶然に所用でギルドに寄ったときに、フラフラになっていたサラさんがいたから、古代遺跡で見つけた魔力回復のポーションを少しだけ飲ませたのよ。本音はこの瓶にあるポーションを全部、飲みたいところだけど、ギリギリで立てるところで妥協したの。たくさん飲んじゃうと、魔力の器を破壊しかねないわ。」


 そんな彼女の言葉にうなずいて、それが女神の涙であることを確信した俺は、サラリと、とぼけた。


「うーん、そのポーションは、古代から伝わるような貴重品で、相当に高魔力だから、少しで良いかも知れませんね。私は要りませんからね。女神様から、これ以上、何らかの手段で魔力を融通されたら、私の体がおかしくなると言われていますから。」


 その俺の話にシエラさまがしっかりとうなずいている。


「その通りよ。やっぱりキョウスケ殿はその辺の知識も一流だわ。このポーションを巡って過去に戦争がおきたぐらい、凄い代物よ。私も大切に使っているの。」


 そんなことを少し話した後に、シエラさまとサラさんが椅子から立って、部屋を後にした…。


 話が終わって、部屋から出てしばらくした後に、俺と陽葵は溜息をついた…。


「まだ、サラさんとシエラさんが話相手だから、国王や王妃よりはマシよ。退屈しのぎには良いかも知れないけど、2人ともホントは全力を尽くして、魔力切れだったのね。」


「あの水を出してくるとは思わなかったけどね。勇者パーティーだから、古代遺跡でも探索した時に宝物庫の中から出てきたのかも。」


「そうよね、あれは貴重すぎるわよ。」


俺と陽葵はハーブティーを飲みながら、食後のひとときを夫婦の会話で楽しんでいたのである。


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