俺と陽葵は眠りについたときに、天の声が聞こえてきた。
「まずは、おバカな作者よ。物書きをしていれば、そんな雑音なんて必ず出てくるから、そういう面倒くさいことは極力、見ないで突き進むが宜しい。身バレが起こったり、家族や己の身に危険が及ぶような事案があれば、編集さんに相談するのも良いだろう…。」
その天の声を聞いて、おバカな作者は、前話の件で小説界隈の闇について、とてもリアルに書きすぎたことを反省していた。
そして次に、恭介と陽葵の頭に神の言葉が響く。
「恭介と陽葵よ。しばらくの間、お主たちは、この世界で活躍してもらうぞ。そのイチャイチャっぷりを存分に発揮するとよい。」
そんな声が聞こえてきたのと同時に、俺と陽葵は目が覚めると、メリッサの宿屋で裸同然で抱き合いながら寝ていたのである…。
隣で寝ている陽葵は、ねぼけているようで、俺の身体をしっかりと抱きしめているが、豊満な胸がしっかりと俺に当たっているから、男としてはたまらない。
「あなた…大好き♡」
陽葵は寝ぼけていても、俺への愛を口にするから、こっちは尚更に抱きしめたくなってしまう。
しかし、周りや読者が見ていて逃げ出したくなってしまうぐらい、とても愛の籠もった陽葵とのイチャイチャは、誰かが部屋のドアを叩くノックによって中断されてしまった。
魔力不足の俺が、フラフラになりながらドアを開けると、騎士団長のネッキーさんが立っていたので、俺の気持ちは完全に仕事モードに切り替わっている状況だ。
「これは、ネッキーさん、朝早くから申し訳ないです…。」
その隙に陽葵は慌てて部屋の物陰で着替えをしていのが見えたが、ここは陽葵と視線を合わせることなく、さりげなくスルーをする。
「キョウスケ殿、ヒマリ殿、お疲れでかつ、魔力不足も深刻なところ本当に申し訳ないのですが、メリッサの街道などの復旧に関わる軍議と、諸国のメリッサ会同に関して、ケビン導師長より参加するようにお達しがありまして。」
そこに突然、アフロディーテ様がフワッと現れて、それを見たネッキーさんは、慌てて、震えながらその場にひざまずいてしまった。
「騎士よ。諸国の王との会同については、わらわが出て話すから問題あるまい。国同士の惨めなイザコザを知らぬ恭介も陽葵を矢面に立たせるのは辛いだろう。この国の王に、そう伝えよ。」
ネッキーさんは、アフロディーテ様のお言葉に為すがままだろうし、それは諸国の王たちも同じであることは安易に予測できる。
所詮は、その国の王であっても神の言葉には逆らいようがない。
いま、魔族に支配されているヴァルカン帝国を除いてではあるが…。
「はっ、は、はっ。はい、アフロディーテ様、そこに、いらっしゃるとはいざ知らず、恐れおおくて申し訳ありません!!」
もう、ネッキーさんは声がうわずって震えているし、女神が突然に目の前にいるから、何も答えられなくなってしまっている。
それでも、女神に言葉を返したのは、流石は騎士団長たる所以であろう。
そこに師匠も俺の部屋に入ろうとして、目の前にアフロディーテ様がいたから、俺と陽葵の会議出席の件は、完全に女神に封じられた格好だ。
「これ!!。そこの魔術師!!。恭介も陽葵も魔力や神気不足で倒れそうなのに、まだ使い倒す気か!!。とくに恭介は各国の王同士の細かい言い争いなど知る由も無いぞ。せめて数日ぐらいは、ゆっくり休ませよ!!」
師匠は、アフロディーテ様を見て目を丸くすると、その場にひざまずいて即座に謝罪する。
「めっ、女神様、それは申し訳なく…。我が弟子を、さっそく使い倒そうとしました。そこまで弟子の魔力不足は深刻でして?」
「当たり前だ!!。コイツは所詮、人の子だぞ?。他人から魔力や神気を融通されたとしても、こやつの魔力は、尽き果てているから、立っているのが精一杯ぞよ。人間は神に及ばぬ。それに、あれほどの魔力を融通されながら一つ身でそれを受けているのだ。魔力の器に色々な干渉があって、恭介の体に流れている魔力の流れはボロボロなのだ。」
「女神様、申し訳なく…。私の目が節穴でありました。そすうると、これ以上、他の魔術師からの魔力融通は弟子の身が危険であるから、自然に回復させなければ命に及ぶ状態でありますか?。」
「その通りだ。わらわの力を使って、恭介の魔力を回復させることは容易だが、そうすると、また魔力のバランスを欠いて、倒れてしまうこともある。だからこそ、恭介と陽葵も含めて、ゆっくりとした休養が必要なのだ。」
その女神アフロディーテの言葉に、ネッキーさんが加わった。
「ケビン導師長殿。貴殿も人並み以上に魔力があるから、感覚がおかしくなっているかも知れませんが、魔術において素人の私から見ても、複数の魔術師が魔力を融通したとはいえ、神が使うべき術を3つも同時に放って、草原とその周辺の街道がローラン城の周辺までメチャメチャになるほどの大魔術を繰り出しているのですよ?。それは無理ですよ。わたしはキョウスケ殿が、この場に立っているだけで奇跡だと思います。」
そのうちに陽葵の着替えが終わって俺の目の前に立ったのだが、陽葵が師匠に何か話しかけようと口を開いた瞬間に、立ちくらみがして俺にもたれかかってきたから、アフロディーテ様も含めて慌ててしまっている。
陽葵も、そばにアフロディーテ様がいるとは言えども、自らの神力や魔力を相当に使ってしまっていたので、俺たちには、しばらくの休養が必要だったのだ。
あの邪神殺しの殲滅弾を同時に3つを放つのは、人間にとって無茶ぶりが過ぎたのは明らかである。
そして宿の外から、こんどは賢者シエラさまとローラン王の声が聞こえた。
「ローラン王、キョウスケ殿やヒマリ殿の魔力や神気は完全に底を尽きている状態です。あれだけの大魔術でしたから、夫婦共に、まともに立てないぐらいの魔力や神気を消費をしています。私も同様のことをしたら、4~5日は動けません。どうか、彼らには充分な休息をお与え下さい。」
「そうは言うが、救国の英雄夫婦を、国として丁重に扱わなければならぬ。そのまま放置していては、私の顔が立たぬぞ…」
「王よ!!。そういう問題ではありません!!。無闇に動かせば、2人に身の危険が及んで…」
そんな声が聞こえてくると、アフロディーテ様が、この部屋から瞬間移動して、すぐさま王の目の前に立ったのが、すぐに分かるぐらいの神気を感じた。
「たわけ!!!。そこにいる賢者の言うとおりだ。もう、陽葵は立ちくらみがして満足に動けぬ!!。お主は、あれが人間にとって、どれだけの大魔術であったのか分かっているか!!。このまま無闇に2人を動かせば、二度と戦場には戻れぬぞ!!」
こうして恭介と陽葵は、女神アフロディーテによって、その身を救われたのであった…。