-さて、世界は現代社会に戻る。-
俺と陽葵は随分と長い夢を見ていたようだ。
目が覚めて、ベッドから起き上がると時計を見て、お昼頃だったので相当に俺は焦ってしまった。
「あれ?寝坊しすぎて遅刻か!!」
俺が思わず叫ぶと、陽葵はクスッと笑っている。
「あなた、今日は日曜日よ。たぶん、あなたが見ていたファンタジー世界の夢は、わたしも同じように見ていたはずよ。不思議よね、死んだ人が神の力によって生き返るなんて、普通ではあり得ないもの。」
俺はそっちよりも、今日が日曜日だったことに胸をなで下ろしつつ、夢のことについて陽葵を現実に戻すべく言葉をかけた。
このさい、夢なんて、しょせんは夢だから、どうでもいい。
「陽葵さぁ、たしかに死んだ人が一斉に生き返るなんてあり得ないよ。あのファンタジー小説を寝る前に一緒に読んでいたから、頭の中がそうなっちゃったと思うよ。それに、同じ小説を一緒に読んでいたから、その世界が夢に現れただけだよ…。」
ただ、陽葵の反応が、俺とは大きく違ったので、内心は頭がクラッとしたが、そこは気にしないことにした。
「あなた♡。夢の中ではカッコよかったのよ♡。もう、我慢がで・き・な・い・の♡。このまま激しく抱いて♡」
陽葵は俺をギュッと抱きしめると、そのまま激しいキスを求めてきたのだ。
…こうなってしまったら、男としてはたまらない。
その後に起こったことは、皆さんの想像に任せるが、それが一通り終わると、陽葵は、そのまま俺におねだりをしてきた。
激しく抱き合った余韻を残しながら、陽葵は抱きついて、お色気を全開にしながら俺に迫ってくる。
「ねぇ…、あなた♡。あの夢のお話を書いて♡」
「だめ。この手の話は得意じゃないから、書けないよ。」
その時は、陽葵は少し残念そうにしていたが、やっぱり簡単には引き下がらない。
俺と陽葵が、遅く起きた後の食事はオムライスだった。
ケチャップで『かいて♡』と書かれてあったで、俺はジッと陽葵を見つめると静かに首を横にふる。
-その夜。-
陽葵と一緒にお風呂に入っていると、お色気を全開にして、俺に抱きついてきた。
「あ・な・た♡。書いて♡」
こんな場所でお色気を全開にされて迫ってきたら、それは男として拷問に近い。
でも、このときは陽葵を軽く抱き寄せて、唇にキスをしながらも断った。
「陽葵のお願いでも、書けないものはあるし、苦手なものを書くのは、とても辛いのさ…。」
無論、陽葵は残念そうな顔をしていたが、そんな簡単に諦める陽葵ではない。
お風呂に入って寝るときに、陽葵は、突然に裸になって、色仕掛けで俺に書くように迫ってくる。
「あ・な・た♡。か・い・て♡」
もう、こうなってしまったら、ウンと言わざるを得ないが、陽葵と、裸でこんな話をするわけにいかず、とりあえず下着をつけさせることにした。
しかし、陽葵の下着姿が色っぽすぎて、男としては、理性を保つのが大変だったので、パジャマまで着させれば良かったことを後悔していたが、それは別問題として…。
「陽葵さぁ、俺に書くようにお願いするのに、全部、服を脱がなくてもいいだろ?」
「だって、なかなか、あなたがウンと言ってくれないからよ。あなたは、わたしにベタ惚れなのは分かっているし、わたしも、あなたを愛しているから、これは一石二鳥なのよ♡」
もう、陽葵の言っていることが無茶苦茶だが、そこは軽くスルーしながら、ベッドの上で陽葵とお互いに正座をしながら、俺は少し真剣に小説のことを説明をした。
「もう、分かったから。仕事の合間に少しずつ書くけどさ、数ヶ月単位でゆっくり書くよ。だって今の作品と平行して書いているから、マジに時間がかかってしまうぞ。それで、こっちは置いてきぼりになる事が多い。」
「それでもいいの♡。あなたの書いた文が読みたいのよ♡」
陽葵は両目がハートークになっているが、俺はそれを無視して、全く手応えがないことを陽葵に伝える。
「あんな夢の中で起こった変な展開の物語を書いて、Web小説サイトにアップしたところでさ、誰にも読まれない自信しかないよ。それでも、いいのか?。たぶん、反応が薄すぎて、評価をされても☆1を平気で叩き付けてくるヤツもいるだろうし、無反応で終わる可能性が高いぞ?」
「それでも、いいのよ。わたしが、その小説の唯一の読者であれば、それでいいの。誰にも読まれなくても、それでいいの♡」
俺は陽葵が色仕掛けを含めたお願いに根負けして、渋々と仕事の合間や休みの日に向かいながら、数ヶ月も時間をかけて、これを書いたが、所詮、こんな駄作をWeb小説サイトにアップしても、反応がとても薄いのは当然である。
それに、毎日のように更新ができないから、読者も少なくて、ファンタジー層は作品数も多いから、こんな駄文なんて埋もれるだけだった。
陽葵はそれでも良かったのだ。
この話は、俺と陽葵の愛の物語だったのだから。
そして、この小説を書き終えた後に、俺たち夫婦は再び不思議な夢を見たのだが、それは次に語るとしよう。