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お熱い夫婦のイチャラブは世界を救う
よんただ
異世界恋愛ロマファン
2024年08月26日
公開日
139,279文字
連載中
最初は一夜限りの夢だったはずなのに…。
とても仲がよすぎる夫婦は、ある日、同じ夢を見た。

俺達夫婦はファンタジーの異世界に飛ばされ、勇者トリスタンのパーティーと一緒に冒険をしている夢だった。
俺こと、キョウスケは型破りで超強力な魔法戦士、そして妻のヒマリは超優秀な聖女。

まだ、神と人間が近い存在だった頃のお話。

ある日、ギルドから依頼されたメリッサ周辺の森に蔓延っていたゴブリン討伐を終えて宿屋に着くと、俺達は勇者トリスタンの部屋に呼び出された。

俺と陽葵が部屋に入ると、気まずそうにしているトリスタンが話を切り出した。

「キョウスケ、それにヒマリ…。お前達はとても優秀だけど夫婦愛が強すぎて、私たちは、そのイチャラブに耐えられない…。」

俺達はその言葉に顔を見合わせるとトリスタンは話を続けた。

「貴殿達は夫婦愛がまぶしすぎてお前達から後光すら出ているから、それでモンスターも寄ってこないし、挙げ句の果てには愛の聖なる波動で強敵まで倒してしまうから強すぎる!」

そして勇者トリスタンは言葉を続ける。

「仲間になった当日にクビだなんて絶対に言わない。ただ、俺たち勇者の別働隊として働いてくれないか?。」

俺達夫婦は勇者の別働隊として冒険をするが、その強すぎる愛が故に、剣などを振るわずに、キングゴブリンやオーガキング、メドゥーサやドラゴンも倒してしまう。

そして…、ついには…。

これは、お互いが好きすぎる夫婦が見た一夜限りの夢物語だったのだが…。


第1話:それは、おとぎ話でしょ?。

恭介きょうすけさん、なにを読んでいるの?」


 土曜日の夜更け過ぎ、俺はリビングにあるパソコンでネット小説を読んでいた。


「ああ、暇つぶしにSNSのフォロワーさんが書いた小説を読んでいたんだ。」


 俺は妻の陽葵ひまりから声をかけられて、読んでる小説を見せてみる。

 陽葵はダイニングから椅子を持ってきて俺の隣に座った。


「ごめんね、学生時代からの癖で恭介さんと呼んでしまったわ。久しぶりに癖が出ちゃった…。そうそう…、あなた。フォロワーさんの書いた作品だけど、ファンタジー系の小説を読むなんて凄く珍しいじゃない?」


 本来なら、中国の春秋戦国時代などの小難しい歴史小説を中心に読む俺が、ファンタジーの異世界転生の小説を読むこと自体が陽葵にとって珍しく見えたらしい。


「そんなコトは気にしなくていいよ。陽葵からどう呼ばれたとしても、俺は陽葵が大好きだよ。話を戻すと、このフォロワーさんの作品、なかなか面白いよ。ただ、今の流行りで、この系統のファンタジーは、死んで転生して前世の記憶がありつつ異次元の異能があって無双とか、優秀すぎる主人公が勇者パーティーから首になってギャフンと言わせる作品も多いよね…。」


 陽葵は俺の言葉を聞いて、コクリとうなずいた。


「わたしは暇つぶしで、その系統の漫画をよく読むけど、たしかに多種多様だし、ネタが多いわよね。」


 俺は大好きな妻の陽葵の頭をなでながら、その会話を続ける。


 陽葵とは学生時代から付き合って結婚に至ったのだが、若いときから陽葵の頭をなでるのが俺の癖になっていて、自然と彼女の頭をなでてしまう。


「まぁ、これを真剣に書いているフォロワーさんも、この系統が多くの人から読まれるから、市場もそれを求めているのだろうけど…。」


 陽葵は頭をなでられながら、しばらく考え込んでいた様子だったが、目をパッと見開いて、俺の右腕を抱き寄せながら何かを思いついたように口を開いた。


「ねぇ、あなたもラブコメ系みたいな変則の恋愛小説を投稿してるでしょ?。これを、あなたがやってみたら、どうなるの?」


 俺は大好きすぎる妻の問いに、1分近く考え込んで、おぼろげなプロットが頭の中に浮かぶと、陽葵の顔をのぞき込んで答えた。


「うーん、たぶん、真面目には書かないぞ。人を笑い飛ばすような…、もしくは読んでる人をもだえさせるような、とても奇妙な小説になると思うけど…。」


 それを聞いた陽葵はクスクスと笑った。

「ふふっ、それがあなたらしいわ。やっぱり面白そうだから書いて欲しいわっ♡。」


 俺は陽葵が語尾にハートマークまで付けた言葉に、首を静かに横に振って、書くことを暗に否定した。


「いやぁ、陽葵。餅屋は餅屋だから基本は無理。俺は真面目に小説を書いている人間から、小石をウンザリするほどぶつけられる覚悟で書くしかないよ?。だから、ギャクとかネタモノで攻めないと、笑って許されなくなる。」


 陽葵は俺の言葉を聞いて、なぜか少し笑顔になっている。


「わたしは、あなたの書いた、へそ曲がりの小説を読んでみたいわ。あの奇妙な長編小説だって、なぜか数十人の固定読者がいるっぽいし、誰にも読まれなくて構わないと言ったくせに、独特な味があるところが、あなたらしくて油断ならないのよ。」


 なんだか書くことが決定しているような陽葵の口ぶりに、慌てて俺は書くことを否定した。


「まっ、待ってくれ。絶対に無理だよ。ファンタジーの設定は、とても緻密にやらないとダメだし、今のファンタジーは、意外とマンネリ化しているから、世界設定やプロットも相当に練らないとマジにダメだ。」


 俺は陽葵の言葉に頭を抱えつつ、とりあえずSNSのフォロワーの小説を夫婦で読むことにした。


『参ったなぁ。これは毎日のように強請ねだられるぞ。たぶん、書くまで、あの手この手で強請ってくるぞ…。』


 俺はそんなことを考えながらフォロワーの小説を読んでいた。


 ちなみに、妻の陽葵は、学生時代から相変わらず、可憐で可愛い容姿をしている。


 学生時代は陽葵に言い寄ってきた学生が何人かいたが、彼女は下心がある男性は嫌いらしく、言い寄ってきた男性を全く相手にしなかった。


 しかし、ある日、大学構内で陽葵が暴漢に襲われそうになったところを、俺が助けたことから付き合うようになって、お互いがベタ状態で結婚に至ったのだ。


 陽葵は、これだと思ったら真っ直ぐすぎる綺麗な性格をしているから、俺も陽葵が好きになった途端に、結婚まで一直線だった。


 そんな可憐で可愛い妻からの頼みだし、まして大好きすぎる妻からの懇願なら、聞きざるを得ないだろう…。


 俺が小説を書かなければ、陽葵は、一緒にお風呂に入ろうなんて執拗に迫るだろう。


 そして、お風呂に一緒に入っているときに、陽葵がお風呂の中で恥じらいながら、「ねぇ♡。あなた書いて♡」なんて、色っぽく迫られたら、俺は二つ返事で承諾せざるを得ない。


 それに、夕食になれば、大きいハートマークがついたオムライスが出てくる可能性だってある。


 挙げ句の果てには、いきなり陽葵から抱きしめられて、「あなたが書くと言うまでズッと抱きついているわ♡」などと、真剣なまなざしで俺を誘惑してくるだろう。


 陽葵がとても可愛すぎるから、最後にはウンと言わざるを得ないのだ。


『どうしようかなぁ…』


 とりあえず、頭の中で小説を書くネタや構成を考えながら、俺は陽葵を少し抱き寄せるようにして眠りについた…。

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