「え、
「だから、さっき、きょーへー兄ちゃんがやってきて、『かず兄ちゃんとなつや兄ちゃんが来たら、すぐに学校に帰ってきてくれ』って」
「すぐに学校に戻れ、って何かあったな」みどりんは呟いた。
「でしょうね。そうでもなかったら、伝令部隊が投入されるはずないですし」チキンも言った。
「一応復旧は完了してる。急いで戻ろう」そう言って流は段ボールを抱えた。
「臨ちゃん、ありがとう。君のパパに、ガムテープを少し分けてくれてありがとうございました、ってなつや兄ちゃんが言ってた、って伝えておいてね」みどりんはそう言づけた。
「みどりん、行きましょう」チキンが呼んだ。
「うん」
3人はバタバタ駆け出した。
「それにしても兄さんの先見の明は凄いですね」
「違う。それはたぶんユッスーだと思う」
「え、どうして?」みどりんが訊く。
「
「あぁ。ジャンルは兄さんに聞け、小問は
走る速度を限界まで上げるかのような勢いで、3人はアーケードの下を駆け抜けた。
商店街を爆走した3人組は、学校のすぐ近くまで戻ってきていた。
「あれ? ルンコちゃん?」
突然みどりんが道の向こうの人影を指差して言った。
「どこ?」流とチキンは訊き返した。
「あっち。お~い! ルンコちゃ~ん!」みどりんは手を振った。
「
駆けてきたのは、紛れもなく部の後ハイ・
「ルンコちゃん、こんなでところでどうした?」
「どうしたもこうしたもないですよ、先パイ方。大変なんです。非常事態なんです。
「はぁっ! 五東ヤンキーの出入り⁉」流は叫んだ。
「フラグ的中じゃないですか」チキンが指摘する。
「相田、情勢は?」流は尋ねた。
「今、部長率いる有志部隊が準備中です」
「戻ろう!」みどりんは言った。「どうすればいい?」
「先パイ方、ついてきて下さい。今、非常ルートが開いてるはずです」ルンコは駆け出した。
「真王のヤツ、非常事態宣言したようだな」流は呟いた。
「あれ? ルートが開いたってことは?」
「有事実働要員認定されてる部員が全員召集されたってことだろ」流は言った。
一行は道路を渡り、学校の西門_教職員駐車場に続いている_から校内に入った。
平素は閉じられている西階段1階部分の扉の前に
「……姐さん!」息を切らせながらチキンが言った。「何やってんすか?」
「しっ!」爽は言った。「何って、見張りだよ。上に何人出入りに向かない人間がいると思ってんの? 心配御無用。扉の内には“みっちゃん劇団”の男子メンがいるから」
「それより、五東中ヤンキーが襲来するって、何事っすか?」と、みどりんが尋ねる。
「ペンキ部隊が絡まれて、ちょっとした太刀回りになったらしい。その場はクロシーと
「加勢した方がいいっすか?」
「今、上はあたしと“劇団”の男子メン、伝令部隊、
「分かった。相田、プロ
「え……先パイ方、どこへ?」
「真王たちに加勢してくる。あとは任せた!」
「あ、ちょっと! えぇっ……」
「姐さん、場所は?」
「体育館前の渡り廊下!」
「分かった!」言うなり3人組は猛ダッシュをかけた。
その頃、体育館前の渡り廊下では、慌ただしく迎撃準備が整えられようとしていた。
「兄さん!」駆け戻ってくるなり恭平は言った。「奴ら、交番の前の信号のとこまで来てます……。……あとちょっとでここに……」
「真王!」バケツを両手にバタバタと
「ボロ雑巾爆弾用意完了だよ!」
「ボロ付けるな、ボロ!」
「だってボロじゃんこれ!」
「うるせっ! それそこに置いてユッスーとバカ殿、それに
「ここです、兄さん!」クロシーは返事をした。
「クロシー、
「あ、はい」
その時、「うおー」という地鳴りのような雄叫びが聞こえてきた。
「来やがったか……」真王は呟いた。
「おおいっ! アカネザキコーキって奴いんだろっ⁉ 出せや‼」
「一緒にいたキツネ顔とウサギ顔も出せや!」
五東中ヤンキーどもは口々に騒いでいる。
「奴らか?」真王は囁いた。
クロシーは、その問いに頷く形で答えた。
「顔出すな、しゃがんでろ」そう言って真王は振り返った。
その時、彼は目を疑った。こちらへ向かって走ってくる流、
「聖! どこだ?」
「呼んだ? 真王」
ユッスーたちを連れて、聖が姿を現した。
「ユッスー、こっちに来てくれ。ただし、しゃがんでてくれよ。それから、華琉、魁ちゃん、投擲要員としてここに立て。聖、キョーちゃん、お前らもだ。バカ殿、お前は下に行って残りの面子と待機だ。不測の事態に備えろ!」
真王が指示を飛ばし終えるのとほぼ同時に、五東ヤンキーが通用門から雪崩れ込んできた。