「しかし、それにしてもすごいですよね、兄さん」
「そうそう。あれだけの集団を易々とまとめちゃうなんて」
「まぁ、
ただし、彼らの持っている物は、ここを回って集めたものではなかった。駅前通りのスーパーへ行ってもらってきたものだった。
「え、兄さんの母親って、あんな感じなんですか?」みどりんが尋ねた。
「うん。もうちょっと……というか、かなりすごい感じ。部下はまとめるは、上司に意見するのも臆さないは、で。女傑って言ったら正確かな? 真王の性別を女に書き換えたら、まさにそのものっていうか」
「意外。兄さん、母親似なんですか」チキンが言った。
「目と性格だけだ、って本人は。外見の大部分は父親譲りだ、って」
「へぇ。兄さんは誰に似てあんななんだろうって思ってましたけど、これを聞いたら納得しました」みどりんは言った。
それは15分ほど前のことだった。
「おう、流、チキン、みどりん」3班の班長・
「悪ぃ。お前ら3人で、駅前通りのスーパーに行ってきてくれねぇか?」
「え……何で?」
「商店街の人たちが店の奥まで探し回ったとしても、集まる量は知れてる。買い出しに遣った連中にも段ボールをもらってこいと指示してあるが、任務遂行される可能性は低い。そこで、だ。お前ら3人に保険として、段ボールの確保先の偵察をしてきてもらいたい訳だ」
「でも、どうして?」みどりんは訊いた。
「でも、も、どうして、もないだろうよ。また去年みたく
「あ、そうか。それで偵察」流は納得した。
「そうだ。もし、そんなことになってたら、迷わず店員に言いつけてやれ。段ボールドロがいるって」
そうやって送り出されはしたものの、運良く想定していた厄介な事態にはなっておらず、彼らは持てるだけの段ボールを頂戴することに成功したのだった。
「これだけ持ってけば、兄さんもきっとご機嫌でしょうね」チキンが言った。
「たぶんね。早く戻ろう」みどりんも言った。
「あ~っ‼」
ドサドサドサドサ。流の抱えていた段ボールが、派手な音を立てて歩道に散らかった。固定するのに使っていた紙製のガムテープが切れたのが原因らしい。
「ちょっ……流、大丈夫? まさか、フラグ、じゃないよな」
「そうであることを願いたい。けど、ムリ」
どういうわけだか流は、
「また前回みたいに何かの前兆……まさか、
「止めろチキン! お前まで! 本当にフラグ化したらどうする」みどりんがツッコんだ。
「お前ら拾うの手伝ってくれよ!」そう言いながらも、流は自力で散らばった段ボールを回収した。
「賢木原さん家に寄ってガムテもらってもいい? このままで学校へ戻るの、ムリ」