俺は、報告書を提出せず店に歯ブラシを買いに店を探す。
「前の店つぶれてやがる…」
買うことができないじゃないかとつぶやいた俺は記憶を頼りに以前店があった場所を重点的に探す。
「確かこの路地にもあったよな…」
過去の記憶を頼りに人通りの少ない路地に入る。
しばらく歩いていると人の声が聞こえてきた。
「店か…?」
声のする方へ進んでいると何やら複数人の人だかりができていた。その中心には女がいる。
ふとその女と目が合ったかと思えば
「助けて下さい!」
と大声をあげられてしまった。
よく見ると女の服はぼろぼろであざもある。
「え?やだ」
「へ…?」
即答で拒否するに女も、女を囲んでいた3人の男も素っ頓狂な声を上げた。
「おい…!治安維持局に通報されたら面倒だ!そいつを帰すな!」
男の一人が声を上げる。
いや…そもそも俺が治安局の人間なのだが…説明する前に能力が使われる。
男が何やら俺の目の前に一瞬にして移動してきて顔面目掛けてこぶしを飛ばしてくる。
が、俺はそれを手で受け止めて男たちに問う。
「そんなことよりもこの近くに店ないか?歯ブラシ買いたいんだよ」
「なんなんだよ…こいつ…」
「俺のテレポートを見切れる時点でAランク以上の能力者しかねえだろ!」
「俺にランクはないな。測れないし」
そういって俺はこぶしから手を放す。
話の流れ的に男たちはBランク程度の能力者だろう。
優秀なことだ。
「お前らが何もしないなら俺は何もしないぞ」
「信じられるか!こうなりゃ…殺せ!」
男の号令と同時、先ほど瞬間移動してきた男がナイフを取り出す。
「面倒だ…」
俺がそう目をそらすといつの間にか男が握っていたナイフが俺の腹部に刺さっていた。
自身ではなく物体もテレポートできるのか…
「ま…俺には関係ないけどな」
俺の服日に刺さったはずのナイフ。その周辺に本来にじむはずの血が一切出てこない。
それどころか、ナイフ持っていた能力者の腹部が突然避けて血液が流れだし、男が倒れる。
「あーあ…だから言ったのに…いったんお前ら殺して拘束だな」
俺の言葉に男たちは理解したのか背を向け、逃亡を図る。
そんな3人の男を刈り取り本部へ持って帰って拘束、のちに蘇生していまは報告書を書いている。
事情徴収という名目で女を治安維持局へ呼び出し、レナが話を聞いて(楽しそうに遊んでもらって)いる。
ちなみにボロボロだった服はミューアが修復していた。
ほんと、何でもできる幹部様だ。
「で…結局何があった?何もなければ俺の正当防衛として処理できると思うが」
俺はレナと遊んでいた女に声をかける。
「えっと…妹を探していて…」
「妹?」
「はい…数日前から家に帰ってこなくて…」
なるほど…だがあの男たちが誘拐犯とは考えにくいが…
「お前もしかして妹をボロボロになりながら探した結果変な男たちに絡まれたってことか?」
「おそらく…」
頭を押さえため息をはく俺。それと同時進行でレナはこの女の記憶を除き状況を読み取っていた。
「俺は仕事したくないんだよ…レビアに丸投げでいいな」
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「お前は本当に俺の仕事を増やすな…」
提出した報告書を読み終わったレビアが、怒気をはらんだ声で俺をにらむ。
これに関しては不可抗力だと言い訳をしたかったがどうやらそんな雰囲気ではない。
「んじゃ、後は頼んだ」
「まて」
「?」
呼び止められてしまった。
「お前…連続少女誘拐事件のことを知っているか?」
「知らないな」
「今知ったな。では捜査してくれるよな?」
はめられてしまった。
本当に、この男には一生勝てる気がしない。
「はぁ…被害者は何人だ?」
「ざっと13人…今回の女の妹とやらがもしその誘拐犯に誘拐されているならば14人になる」
この都市では未成年の誘拐事件が最も多い犯罪となっている。
誘拐した後どうするか…なんて犯人にしかわからないが少なくともろくな死に方はしないだろう。
それはこの都市で、弱者を守るルールはいとも簡単に強者によって破られるからだ。
「少女限定って時点でいやな気持になるな…十中八九男だろう…?」
レビアは無言でうなずき「さっさと調査に書かれ」と言わんばかりにハンドサインをしてくる。
希望通り退室した俺は管理室の前で今回の事件の犯人像を思い浮かべる。
「下衆が…」
俺は考えかけた思考を放棄し、移動する。
なんやかんや仕事する時間が増えてきたなと感じながらため息をつく。
そんな見たことのある過去の風景を俺はしっかりと脳裏に焼き付ける。
幾度となく繰り返したこの記憶たちを脳裏に焼き付くしシャーウィットを死なせないような戦い方をすればいい。
「簡単なことじゃねぇか」
俺は自信満々にそう宣言するのだった。