「あっけなく捕まったわね…あの男」
「お兄ちゃんがさらわれちゃった…」
2人そろってため息をつく。
あの瞬間、確保に踏み込んだ私よりも早くあの犯人はその場を後にした。
その点からあの犯人は、高度能力者である可能性が高いと推理し、本部に帰還したのちに上に報告をしたところだ。
「もし高度能力者ならレナがさらわれなくてよかったわ…能力を封じてくる奴もいるでしょうし」
「え!?じゃぁお兄ちゃんピンチじゃん!」
「ああ…あの男は大丈夫。きっとしばらくすれば…」
言いかけていた時、突如倦怠感が体を襲う。
「あいつ…本っ当にムカつく!」
地面に倒れながら私は
「まぁ…生きていることは確認できたわ…レナ、ミューアを呼んできて!」
私のお願いにレナはうなずくとミューアのいる幹部室に走っていった。
初めて会ったときはあんな対応してくれなかったのに。案外私はレナに気に入られているのかもしれない。
そんなことを思っていると突然空間に亀裂が入る。
「来たわね…」
そこから出てきたのは両手両足から血を大量に流している大量の少女たちだった。
「呼んできたよ!」
レナがミューアを連れ、走ってくるのが見える。
ミューアは状況を理解しようとはせず、目の前の急患を助けることに全力を注いでいた。
「大丈夫…?…おねえちゃん」
お姉ちゃんと言われたことに少々驚かれつつも私は「なに?」と返す。
「おねえちゃんも家族になれるね!」
満面の笑みでそういうレナ。
ああ…そうだ。この少女は記憶を見れるんだった。
「ええ。そうね」
私は少女の言葉を肯定する。
「ほら…あなたも治療しますよ」
一通りの処置をこの一瞬で終わらせたのか、額にほんの少し汗をにじませたミューアが私のほうにやってきていた。
一見RPGに出てきそうなその女は私の手に触れる。すると体を襲っていた倦怠感が一気に軽くなる。
相変わらずこの組織の幹部クラス…ランクSの能力者に常識は通用しないらしい。
「これで少しはましになったはずです。どこへ行こうと、止めはしませんよ」
聖女のようなほほえみを浮かべるその女。
心の内が見透かされているみたいで癪ではあるが、選択肢はもとより一つしかない。
あいつからもらったサーベルを装備しなおし、服装を整え私は能力を発動する。
あいつの変声機型
アイツがやったように私は自分の居場所を今回の事件の犯人が拠点にしているであろう建物の中へワープすることができた。
そして目の前には犯人の男と…その男を拷問する幼い少女の見た目をしたソイツが立っているのだった。