誘拐ではないとシャーウィットに証明したのちに俺は家を出た。シャーウィット曰く幹部たちには報告をしろとのことだったのだが俺は報告をするつもりはない。
ただでさえランク測定をしていない俺に本来Aランク以上が割り当てられる任務が与えられたのだ。始末書の提出期限を遅らせるぐらいの嫌がらせをしても罰は当たらないだろう。
そんなことを考えつつ本部をぶらぶらと歩く。
俺の家とは違い清潔感あふれる本部は結界と呼ばれるバリアを張っているらしい。
その結界はあらゆる攻撃からこの建物を守る役目と同時に物の時を止めることができると聞いたことがある。
事実かどうかはわからないが幹部の一人が無機物限定で時を止められるといううわさもある。
「Sランクならなあり得るのが怖いよなぁ」
そう。あり得てしまうのだ。この都市の能力者なら時間停止だのワープだのが実際にできてしまうのだ。そしてその能力を、善悪の区別のつかない子供が使えてしまうのも事実だ。
しかも子供のほうが能力の才能にあふれているゆえに大人が負けることが多い。
そんな事実があるからこそ実は難易度の高い任務の主犯は子供といった場合が多いのだ。
そこまで考えて俺は立ち止まる。
「シャーウィットなら大丈夫か」
そんな言葉を吐き捨てながら俺は別の目的に切り替える。
本部の最深部。8つの席が円卓を囲んでいるだけの空間。その椅子の一つに一人の女が座っていた。
「空席を、埋める気はないか?」
女に俺はそう問いかけるのだった。
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ボロボロの部屋の一室。そこに座る少女が一人。
私はその少女から事件当時の情報を聞き出すためにここにいる。
《アイツ》はこの少女の記憶がないといった。
負荷ゆえに記憶がないと…
「あなたは何の負荷を受けたの?」
少女に問うが少女は答えない。
この少女を
交渉が何よりも苦手な私を置いて本部に戻った。
(なぜ?)
素直に幹部たちに報告をしに行く男ではないことは知っている。
ではなぜ?
心当たりは一つしかない。そしてその心当たりを信じるとしたら私をここにおいてった理由がわかる。
なら、私がすることは一つ。
この娘が使い切った魔力を注ぎ込むだけ。
「ほんとに止めれるのでしょうね」
私のそんな声はボロボロの部屋をすり抜けていったのだった。