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自宅

「少女を拾った?」


シャーウィットが首を傾げ疑問をこぼす。


「死体まみれの家で死体に抱えられて眠ってる少女を拾った」


改めて羅列すると異常なことがわかる。シャーウィットもなにやら変な顔をしている。


「いつも面倒ごとを持ってくるわねあなたは…」


「いつもって何だいつもって…たまにしか仕事しないからたまにだろ」


殴られてしまった。

まぁ殺されるよりましである。


「で…?その少女はどこにいるの?」


「うん?俺の家だが?」


「誘拐じゃない」


「保護と言え」


こうやって事件担当になったシャーウィットに少女を合わせようとしてる時点で誘拐ではない…はずだ。


その後もコントみたいな会話しつつシャーウィットを家に連れていく。

「保護」と言っているのだがそれを認めないシャーウィットへ現状を確認させるためだ。

ただ別の面でいろいろと心配なところがあるのだが…そのまま伝えてしまってもいいのだろうか?


そんなことを考えていると俺の家につく。

俺の家は、ボロボロのアパートの一室である。

俺の住んでいるボロアパートは治安維持局が管理する寮であり、俺のような下っ端が押し込められている場所だ。


具体的には能力者をSからDに分けた時、C以下の能力者がここに押し込まれるのだが、俺のように測定していないものもここに送られてしまう。


「いつ見てもボロボロね…」


隣でアパートを見つめるシャーウィットもあまりのぼろさに絶句している。

肝試しが自宅でできそうな外観を持ち、見て取れる印象そのままに内部もかなり傷や穴がある。

だがこの都市において、ボロボロだろうが崩れていなければ家なのだ。

1日に数十件の家が吹っ飛びかねないこの都市で建っているだけありがたい。


俺は折れている手すりに気を付けながらぎしぎしと音を立てる階段を上り自宅に入る。

清掃はしっかりしている自覚はあるので目に見えるごみはないがあたりの壁の塗装ははがれていたり傷が入っていたりとキレイという印象は受けない部屋だ。


そんな部屋に似つかない少女が一人ぽつんと座っている。

その少女はこちらを見ると表情を変えずに歩いてきた。


「どうした?」


俺が声をかけるが少女は何も言わずに俺のほうへ歩きつ続け、俺のおなかに顔をうずめた。


「?」


困惑していると小さな声で少女がつぶやいた言葉が耳に入ってきた。


「おかえりなさい」


「ああ。ただいま」


その会話を聞いたシャーウィットが言う。


「なんか…妙になつかれてない?」


「保護してからずっとこんな調子なんだ。まるで俺を親のように接してくる。無理もないと思うがな」


この少女は親を惨殺される光景を目の当たりにし、死体となった肉親を見ていた。

幼い娘には耐えがたいものだろう。


「まぁ、相当ながかかったんだろう。事件当時の記憶がないらしいしな」


「あっそ…で?いつまでその子をここに住まわせるの?本部のほうがきれいでしょ?」


「当分はここだ。本部に行ったら取り調べとかで忙しくなるだろ?少なくとも記憶が戻るまではここだな」


俺は少女の頭を見下ろしながらそう答えるのだった。

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